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連載小説「憂鬱」-9 ユリアの家で二人きりになれた玲実

お互いが好きとわかってうれしかった。しかし、ここから先、どう進めていくべきなのかは女子高校生の二人にはわからなかった。

「今度、バレエのクラスの後に、家に遊びに来ない?」ユリアは、急に強気で誘ってしまったことに自身も驚いていた。

「もちろん!一緒にクッキー焼いたりしましょうよ。私、クッキーの型をたくさん持ってるから、持っていくね。」

その誘いに玲実は大喜びでうなずき、彼女の顔には明るい笑顔が広がった。ユリアもまた、彼女の笑顔に安堵の息をついた。

そして、待ち合わせの日が訪れた。バレエのレッスンを終えた後、二人はユリアの家へと向かった。ユリアの家は小さな一軒家で、可愛らしい庭があり、温かみのある雰囲気が漂っていた。

中に入ると、家は明るくて広々としていた。白い壁とナチュラルな木目の床。「こっちが私の部屋なの。」ピンク色のシーツの上には、ユリアの愛用の巨大な茶色いベアーのお人形が置かれており、そのかわいらしい姿に玲実は声をあげた。

「キャーかわいい!ユリアちゃん、毎日この子を抱いて寝てるの?」「そうなの。パパが私が幼稚園の頃に買ってくれたんだ。サーヤちゃんって呼んでるの。」

「サーヤちゃん、はじめまして。私は玲実です。」

しばらくは二人で、ユリアの幼い頃の写真を見たり、卒業写真を見て、笑いあった。

「さて、そろそろクッキーを焼く準備をしましょうか!」ユリアが元気よく言うと、玲実も持ってきていたエプロンをつけた。

「かわいいエプロンだね。スヌーピーがついてる。」「そうなの。コレお気に入りなの。」

二人はキッチンに入り、玲実が持ってきたクッキーの型を取り出した。彼女たちは協力して生地をこね、型抜きをしてクッキーを焼き始めた。

「これできれいに焼けたら、アイシングで飾りましょう!」ユリアが楽しそうに言うと、玲実も嬉しそうに笑った。

クッキーが焼きあがり、彼女たちはアイシングで可愛らしい模様を描き始めた。彼女たちは互いに笑い合いながら、楽しい時間を過ごした。

なんて甘い時間なのだろう。学校でのいじめなんて、どうでもいいって思える。ユリアは、一瞬でも学校のことを忘れることができることに感謝していた。

やがて、クッキーを飾り終えた彼女たちは、テーブルに座ってお茶を飲みながらおしゃべりを楽しんだ。話題はバレエや学校のことから、お互いの趣味や家族のことまで、幅広く広がった。

「本当に楽しい時間をありがとう、ユリアちゃん。」玲実が言うと、彼女の目にハートの形がうきあがってくるんじゃないかってくらいに、顔を紅潮させていた。

「こちらこそ、ありがとう。また遊びに来てね。」ユリアが笑顔で言うと、二人は抱き合って笑い合った。

彼女たちはその日を思い出深いものとして、心に刻んだ。これからもお互いの支えとなり、大切な存在として共に歩んでいくことを決意したのであった。

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