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連載小説「憂鬱」-8 ユリアは玲実に告白できるのか?

玲実に告白したいけど、レズと知られるのが怖くて、できないユリアであった。

沙知絵は、相変わらず学校でいじめをしかけてくる。そんなことが気にならなくなったのは、玲実のことを考えているからだ。どんないじめにあっても、玲実に対する愛情があれば、ふわふわと温かい気持ちになれた。

しかし、ユリアは自分の気持ちに正直になれないでいた。友情と愛情の狭間で揺れ動く心が、彼女を苦しめていた。彼女は何度も玲実にバレエのクラスへ行くたびに告白しようと思ったが、口にする勇気が持てなかった。

そんな中、再び玲美が声をかけてくれた。
「ユリアちゃん、今度、映画でも観に行かない?」彼女の優しい声に、ユリアの心はざわめいた。

「あ、うん……いいよ、行こう。」ユリアは照れくさそうに微笑んだ。彼女は自分の気持ちを押し殺しながらも、玲実との時間を楽しみにしていた。

映画館で座席に座り、映画が始まる。しかし、ユリアの頭の中には映画の内容よりも、玲実とのことがぐるぐると回っていた。ユリアは玲実の横顔を見つめ、彼女の笑顔に心が躍るのを感じた。

映画が終わり、二人は劇中の感動を分かち合いながら外に出た。夜の街並みが彼女たちを迎え入れる中、ユリアは勇気を振り絞って口を開いた。

「玲実ちゃん、実はね……」しかし、その言葉が口から出る前に、彼女は言葉を飲み込んでしまった。怖れと躊躇が、彼女の口を封じた。

玲実はユリアの目を見つめて微笑んだ。「ユリアちゃん、どうしちゃったの?マジな顔して。」彼女の優しい声が、ユリアの心を包んだ。

玲実の黒い瞳がユリアを真っ直ぐに見つめている。ユリアは目を合わすことができず、下を向いた。そして自分の両手にぐっと力を入れ、勇気を振り絞って言葉を口にした。「私、玲実ちゃんのことが好きなんだ。」

彼女の告白は静かに、しかし確かに彼女の口から漏れた。そして、玲実の目には驚きの光が宿り、彼女もまた微笑んで言葉を返した。「私も、ユリアちゃんのことが好きだよ。」

「えっ?」顔をあげて玲実を見ると、玲実は黒い瞳を輝かせて、微笑んでいた。「ユリアちゃんのこと私も好きだから。」そこから、二人はしばらく言葉もなく見つめ合ったままだった。

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