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障がい児の親は、子どもの成長を予測しない
今の子どもとの生活は、時折波風が立つことがあるものの、昔からは想像できなかったようなそれなりの穏やかさを保っています。
子どもがまだ幼かった頃、この子はこのまま成長しないままに大人になってしまうのではないかという大きな不安を抱えていました。
知的障がいを伴うASDである僕の子どもは、小学校に進学したあとも2語分以上の話をすることができず、外を歩けば注意散漫で車に気づかず道路の真ん中を歩いてしまう。
読み書きにも上達の兆しがないこの子は、ずっとこのままなのかもしれない。
健常な子どもとの格差にただただ愕然としてしまい、将来への希望を見出せませんでした。
しかし、いざ蓋をあければ僕の大きすぎる不安をよそに、子どもはそれなりに成長してきました。
もちろん、今でも全くできないことは多いです。
それでも数少ない「できる能力」を駆使して「できないこと」をカバーしながら生活しています。
買い物を例にあげると、子どもは実用的な計算はからっきしで、スーパーのカゴに入れた商品の合計金額がさっぱりわかっていません。
しかし、金額の大小はわかるため、レジでの支払いはなんとかできるといった具合です。
そういったやり方でも繰り返していけば、それなりに記憶が蓄積され、なんとなく金額の見当がつくようになります。
このような健常な人とは少し違ったやり方を、誰かに教られたわけでもなく、自身の経験を通じて体得しているのです。
幼い子どもの将来を考えたとき、不安は異なる時間軸の中で確固たる存在感を発揮します。
子どもに障がいがあることが判明し、気分が落ち込むなかで子どもの世話に追われた過去。
ほかの子どもよりも明らか発達が遅れているということを直視せざる得ない現在。
そして、この先子どもは成長するのだろうかという不安感から思いを巡らす未来。
過去と現在は記憶でつながり、そのまま未来まで続くように錯覚してしまう。
過去、現在、未来をひと繋がりの塊のように錯覚してしまうが故に、過去の僕は子どもの将来に希望が感じられませんでした。
しかし、本当は将来のことなんて誰にもわかりません。
過去を振り返って思うのは、希望が持てないくらいなら、子どもの将来なんて考えなくてない方がいい。
安易な予測もしない方がいい。
どうなるかわからない将来よりも、目の前の子どもにしてあげられることや自分の生きがいについて考えた方が確実に前進できるのです。
将来のことは考えず、目の前の育児に集中する方が確実だと言える理由。
それは、障がいがある子どもも必ず成長するからです。
少し話が飛躍しますが、人の体を構成する細胞は常に生産と消滅を繰り返すことで生命を維持しています。
高齢になると細胞の生産量は減り古い細胞が蓄積し、脳は萎縮して小さくなり筋肉は痩せ細っていきます。
逆に子どもは細胞の生産量が多く循環が活発なために、脳も身体もアップデートされて大きくなっていきます。
このような体の仕組みは障がいがある子どもでも例外ではありません。
故に、障がいがある子どもも必ず成長すると言えるのです。
また脳梗塞など脳の機能が部分的に働かなく病気では、たとえ部分的な欠損があっても脳の他の部位で欠損した機能を補うような働きがあることが報告されています。
自分の子どもができないことをできる能力で補いながら生活しているのを間近に見ていると、そんな脳機能の逸話がリンクしているような気がします。
健常者である私たちも、苦手なことを工夫したり得意なことでカバーしようとしますよね。
それと同じようなことが、新しい状況に置かれた子どもの頭の中で活発に起こっているのではないかと思うのです。
障がいがある子どもにはできないことがある反面、少しずつできるようになったことを活かして生活の幅を広げることができます。
でもその内容や方向性は時間が経たないとわかりません。
そういうことを踏まえると、障がいがある子どもの育児における正しいスタンスは
『子どもの将来は予想できないけど、成長は必ずする。だからいま目の前のことに意識を集中する』
ということではないでしょうか。
実際、僕の育児は大きな不安を抱えたあとは目の前の子どもの環境を整えることに忙殺された日々が続き、気がついたら今の状態になっていたという感覚です。
育児の期間、子どもの将来に希望を感じることはありませんでしたが、今までの育児に後悔はなく、現状にもそれなりに満足しています。
育児に後悔がないことは、子どもの自立度とは関係ありません。
その都度目の前のことに意識を集中して、できることを最大限に行ってきたと思えるからです。
子どもがどう成長するかなんて、誰にもわかりません。
だから目の前のことに意識を向けることが、育児にも自分自身に対しても後悔を残さないための秘訣になるのです。
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