見出し画像

就学前の障がいを持つ子どもと良い関係を築く方法

まだ子どもが保育園に通っていた頃、僕の子どもはなかなか言うことを聞いてくれませんでした。

知的障がいのために危ないことの認識がなく、親が引き留めてもやめてくれないのです。


目が離せず、自分の時間が持てないばかりか、ゆっくり休むこともままならなず、僕のメンタルは危機的な状態でした。

そのような状況が続く中でも、いくつかのことを行うことで、子どもとの信頼関係を築き、その後の就学や進路について穏やかに話し合える関係になることができました。




ポイントは、
障がいを持つ子どもの育児のデフォルトは「余裕がない」
ということです。


子どもとのコミュニケーション方法は育児書を開けば色々なことが書かれています。

心に余裕があれば、そこに書かれている色々な工夫ができるかもしれません。

しかし、障がいを持つ子どもの親には余裕はありません。

多くの場合は健常な子どもよりも手がかかり、精神的な余力は削られるからです。


余裕がない状況では、できることが限られます。

その中で、子どもと信頼関係を築くために僕が行えたことは、たった2つのことでした。




子どもを抱きしめる。


僕は以前、「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」の著者である、東田直樹さんの講演会に参加したことがあります。

この本は、自閉症の理解に全くの新しい知見をもたらした書籍として世界的にベストセラーとなり、イギリスでは映画化もされています。

東田さんは重度の自閉症でありながら高い知能を持たれています。

しかし、じっとしていることが難しく、講演中も舞台の上を行き来したり体を動かしたりと落ち着かない様子でした。

そのとき、東田さんのお母さんが、育児中は「抱っこ法」がとても効果があったということをお話しされていました。


「抱っこ法」とは、子どもが落ち着かないときに、抱きしめて安心させる方法です。

実は僕も、その効果を実感した1人です。


幼少の頃から、子どもが落ち着かないときや怒りや悲しみで感情が昂っているとき、背中に手を回して優しく抱きしめ、落ち着きを取り戻すまでそのままジッとするようにしていました。

すると子どもの体からスッと力が抜けていき、少し落ち着くのです。


コツとしては、回した腕と体を使って接触面を広く取り、子どもの体を包み込んで周囲から軽く圧迫してあげるイメージです。


子どもの力が抜ける理由としては、抱きしめることで身体感覚に意識が向き、感情から少し意識が逸れることで、落ち着きを取り戻すことが考えられます。


お互いに情緒不安定なときでも、こういった身体接触を重ねてきました。

そうすると少し落ち着いて会話ができるようになり、その場の解決だけでなく、親子の安心感や信頼感を培うこともできたのです。

抱きしめるという行為は、子どもが中学生を過ぎても行っていました。

子どもがイライラしているとき、背中に手を回して軽く叩き、「甘いものでも食べて少し落ち着こう」と声をかけると、落ち着くことができたのです。

子どもの感情をリセットできる方法があると、親自身の心の平静を保つのにも効果があったと実感しています。




「大切にしている」と言葉にする。


僕は医療機関で働いている関係で、人があっけなく亡くなる場面に何度も遭遇しています。

自分がもしそうなったとき、障がいがある僕の子どもは親からの愛情を理解しないまま育っていくことになるのかもしれない、ということが気がかりでした。


だから、子どもに対して、幼少から常日頃「君は僕の宝物だ」ということを、何度も伝えていました。

もし、自分が急に亡くなっても、「自分は誰かにとっての大切な存在だった」という記憶を残して欲しかったのです。


結果、自分はまだ元気なのですが、子どもにはその気持ちが伝わっているようで、困ったことが起きたら相談してくれたり、悩みを話してくれるようになっています。


子どもは、大人の行動の意味を察することはできません。

そのため、どれだけ大切にしていても、その行動だけでは気持ちが伝わらないのです。


子どもに対しては「言葉にする」ということがとても大切です。

「言わなくてもわかるだろう」と思っていることでも、それが子どもにとって愛情だと感じられることであれば、どんどん口にする方が良いです。

子どもは、はっきりとした言葉で伝えないとわからないからです。

たとえ、口にしたその時には反応が薄くても、心には響いているはずです。




幼少の頃から、繰り返し子どもを抱きしめて「大切にしている」と伝えることは、余裕が持てない日々の中で心を繋ぐことができる、数少ない方法なのかもしれません。


関連する記事はコチラ


目次はコチラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?