『障害児の育児』と『親の生活』の関係性を整理する
ぼくの子どもには知的障がいがあります。
いまは社会人として働いているのですが、ここに至るまでに多くの手がかかりました。
そのような状況のなかでも、育児期間には仕事面では役職がつく程度には結果を出し、家のローンを終え、キャンプや旅行、趣味のカメラなどを楽しんできました。
育児に手を抜かず自分のことにも取り組めたのは、子どもに障がいがあることがわかった時からずっと、ライフデザインを意識して生活していたからです。
デザインの語源は「設計」だそうです。現在はヒトに必要なものを、目的に応じて設計するという意味合いで使われることが多いです。
UNIQLOやセブンイレブンなどのグローバルデザインを担当されている佐藤可士和さんは、デザインを「整理」という意味で使われています。
ごちゃごちゃしたものを整理して、本質に迫るという理由らしく、僕はこの考え方が好きです。
自分の子どもに障がいがあるとわかったとき、2つの相反する感情が湧き上がりました。
ひとつは「障がいがあっても幸福な人生を送ることができるようになるために、なんでもしたあげたい」という愛情。
そしてもうひとつは「子どもがもし自立できないかったら一生お世話をしてあげないといけない。もう自分のやりたいことはできなくなってしまうのだろうか」という不安でした。
この複雑な気持ちをわかりやすく整理して、子どものことも自分のことも、納得できる形で過ごす人生を送りたいと考えたことが、ライフデザインを考えるきっかけになりました。
人生の時間はゼロサムです。
育児に時間をかければ自分の時間は削られ、自分のために時間を使えば、育児にかける時間は減ってしまいます。
障がいを持つ子どもの育児は、健常な子どもの育児に比べて時間が必要になります。
なぜなら、成長の過程で獲得されない能力があり、その分サポートが必要になるからです。
そして、もっとも気になる課題は、子どもが生涯にわたって自立しない可能性があるということです。
つまり、障がいを持つ子の育児には「もし育児に終わりがなかったら、自分のための人生をどう構築するのか」という問題が内在しているのです。
この問題に対して僕が出した答えが「ライフデザインを考える」ということでした。
日々の生活やこれからの時間を、自分と子どものために、どのようなアクティビティをどのように割り振るのかという視点で生活を設計するのです。
特に、自分と育児との関係性や時間のバランスについて、定期的に整理するということを常日頃から心がけていました。
具体的には、自分自身のやりたいことと、子どもに必要なサポートの両方について、プライオリティ(優先順位)を書き出し、重要なことだけに取り組むという方法です。
実際に行ってみると、優先することの判断がつかないこともあり、その都度書籍で調べたり人に相談したりしました。
そうしているうちに、なんとなく子どもの成長の過程で親のサポートの内容や性質が変化していることに気がつきました。
「愛情形成」がメインになる時期もあれば「成長のしくみ作り」や「環境調整」がメインになる時期もあるということです。(こちらはまた別の機会に書こうと思います)
子どもの成長の過程で、親としての自分の役割が予測しやすくなったことは大きなメリットでした。
とりわけ実生活の中でラクになったと感じたことは「自分を優先すべきとき」の判断がつきやすくなったことでした。
育児には親自身のコンディションが予想以上に大きく影響します。
精神的に参っているときは、子どもに優しくなれなくなり、療育方法の判断も間違ってしまうからです。
先が見えない育児に取り組むとき、「育児よりも自分を優先すべき」判断がラクになるということは、子どもとの良好な関係性を維持していくための重要なファクターなのです。
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