見出し画像

英単語を効率的に覚えたい:語源は役立つか?

増え続ける英単語

 英単語の学習は、多くの人を悩ませる。世界最大の辞書であるOEDは、年間に4回の更新を行い、語彙をアップデートし続けている。(参考までに、2022年7月に追加された語句には、ankle-biterや、東アフリカで用いられているbitingといった語句である。)つまり、英単語の学習は終わりなき旅なのである。
 したがって、誰もが、英単語の学習を効率的に行いたいと思うだろう。英単語の学習には様々なストラテジーがある(cf. 中田,2019)。このうちの一つに、語源を用いた英語学習がある。例えば、subwayの語を挙げる。subは「下に」という意味があり、wayは「道」の意味なので、「下の道=地下道」となる。subが「下に」という意味と分かれば、submarineが「潜水艦」の意味になることも、容易に想像できよう。

語源推しの書籍と辞書

 刊行された書籍を見ても、2018年には『英単語の語源図鑑』(かんき出版)が刊行され、2019年には続編が、2020年には熟語編が刊行されるなど、支持を得ているようだ。加えて、2022年に改訂された『ジーニアス英和辞典 第6版』(大修館書店)において、新たに語源コーナーが設けられている。『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)が第5版に改訂(2012年)され、語源欄がなくなったことを踏まえれば、中級の辞書というジャンルにおいて、待望の復活ともいえる。

語源は役に立つか?

 語源を用いることで、英単語の意味を覚えやすくなる。中田(2022: 207)の引用している村田(2004)は、「一語一訳でも覚えるが勝ち」と述べているが、語源を用いて和訳を覚えやすくすることは、この主張を支えるものである。
 さらに、意味を覚えることが困難な形式に、イディオムがある。現代英語の特徴の一つに、イディオムの使用が多いことが挙げられるため、少なくとも意味が分かることは不可欠である。イディオムを覚える際は、理屈をつけて覚えたほうが覚えやすいことが指摘されており(中田,2022: 73)、ここでも語源は威力を発揮する。
 一見、有用に思える語源の学習であるが、デメリットも少なくない。語源を用いた学習は、すべてのレベルの学習者に適さない。倉林(2022: 48)は、次のように述べている:

語源で学習ができる方はある程度の語彙力(英検2級以上を想定しています)がある人に向いています。今まで覚えた単語を語源により整理しながら確認することで定着させ、新たな関連語彙を習得することができるからです。

倉林(2022: 48)

したがって、英語学習の初期には向いておらず、英検2級程度、つまり、おおよそ学年で対応させれば、高校3年生から大学生以上には適した方法の一つである。
 中立的に、語源を用いた学習では、語の語法が覚えにくいという欠点がある。しかし、語源が生きてくるのは、いわゆる受信語彙が多いことから、先に挙げた村田の主張の通り、訳をとにかく覚えておくことが重要になる。

おわりに

 英単語の学習は、冒頭に示したように終わりのない学習である。したがって、様々なストラテジーを組み合わせて覚えることが重要であり、その一つとして語源があるに過ぎない。間違っても、語源を覚えることを目的としてはならない。世間に英語の試験は数あれど、語源を説明することを求める英語の試験は存在しないためである。

主要参考文献

倉林 秀男『バッチリ身につく 英語の学び方』ちくまプリマ―新書,2021年.
中田 達也『英単語学習の科学』研究社,2019年.
中田 達也『英語は決まり文句が8割:今日から役立つ「定型表現」学習法』講談社現代新書,2022年.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?