妄想百人一首(27)
『キリギリスとアリ』
橋の食べ物に困らない側の一人の男が、食べ物に困る側の酒屋で飲んだくれて言った。
あんなの死んで当然なんだよ、え?だ、当然だろ、何言ってるか分かんねえしさ声ガラガラで、ギターの音の方がでけえから何言ってっか分っかんねえんだよ、ギターだっていっつも調子っぱずれでうまくねえし、それで声ガッラガラで、音楽で食える訳がねえのにさ、食える訳がねえんだよ、んで俺が働けっつったら意味分かんねえことブツブツブツブツいうんだぜ、働かねえと食えねえっつってんのに働かねえんだよ、意っ味分かんねえマぁジでさあ、それで路上で、あんなくっらいとこで歌って、路上で、だあれも、で、死んだんだろ、え?だ、当たりめあだよなあ、意味分かんねえんだよ、俺働けっつったのに、つった、働けっつったのにさ、あいつ意味分かんねえんだよ、食えんなら良いんだよ、あんなん食える訳ねえんだよ、だろ?なあ、だろ?あんなん声ガラガラでさ、食える訳ねえって俺は何回も何回も言った、んで意味分かんねえこと言ってさ、(ゴク)うっ(ゴクゴク)うあ、
夜も深まった頃、男は店を追い出され橋を渡って帰っていった。
今回の一首
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む
この歌について
後京極摂政前太政大臣が詠んだ歌で、
「こおろぎが鳴いていて霜の降る寒い夜に、むしろの上に自分の片袖を敷いて独り寂しく寝るのだろうか」
という意味。
以下の二つの本歌があるらしい。
「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」(古今集)
「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂)
あとがき
酔い潰れたこともなければ、飲んだくれを見たこともないに気が付きました。
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