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企業価値評価(類似会社比較法について)

こんにちは。公認会計士としてM&A業界に約10年携わってきました。今回は、企業価値評価の中でM&Aにおいて広く一般的に用いられている類似会社比較法について、ざっくりとした評価イメージを把握するための考え方・実際に活用できる計算方法を(独断と偏見を交えて)お伝えします。
詳細な計算方法には触れず、経営者や売手目線でざっくりとした評価イメージを掴むためのものという点はご了承ください。

1. 類似会社比較法とは

簡単に言うと、自社と事業内容などが類似する上場会社の株価と比較する(言い換えれば、仮に自社が上場していた場合にいくらの株価がついているか)という評価手法です。上場類似会社について、ある特定の指標に対して何倍の株価がついているか(倍率のことをマルチプルと呼びます)を確認し、それを自社の同じ指標に当てはめて計算するというものです。

ある特定の指標は何かという点ですが、経営者や売手目線でざっくりとした評価額を把握しておくという趣旨であれば、M&A業界において最も一般的に使われているEBITDAだけを押さえておけば十分でしょう。

※EBITDAとは、Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略であり、利払前・税引前・減価償却前の利益をいいます。

2. 類似会社比較法の計算式

具体的な計算式は以下のとおりです。
類似会社比較法による株式価値=事業価値+非事業用資産-純有利子負債

それぞれ計算に使う数値は以下のように計算します。
・事業価値=EBITDA×マルチプル(倍率)
・非事業用資産:有価証券や遊休不動産など、本業に関係のない資産の時価
・純有利子負債=借入金-現預金

仮に非事業用資産がほぼないとすると、「事業価値(EBITDA×マルチプル)-借入金+現預金」となります。

EBITDAの計算方法はいくつかありますが、ある程度決めの問題であるため、簡便的に以下のように覚えておけばいいと思います。
・EBITDA=修正後の営業利益+減価償却費
※営業利益については、非上場企業の場合、オーナーに対して高額の役員報酬を支払っていたり、節税対策の保険料を支払っている場合があるため、これらの影響を排除した修正後の営業利益を用います。

EBITDAに乗じるマルチプルについては、詳細な計算は専門家に任せるとして、簡便的でも試算してみることは大事です。私の感覚的な数値になりますが、まずは以下の数値を使ってみて計算してもいいでしょう。
製造業:6倍
その他:8倍

上記はあくまで目安です。最近ではコロナ禍で金余りが発生していることもあり、10倍以上の評価がつくことも珍しくありません。特にPEファンドは資金が集まる一方で投資先に不足していて困っているという声をよく聞きます。

3. 類似会社比較法の活用

類似会社比較法はM&A業界において一般的に用いられており、特にPEファンドは非常に重視しています。年買法に比べるとやや計算が面倒ですが、まずは簡便的でも類似会社比較法による自社の価値を計算してみることは重要です。もし、年買法に比べて高い価値が計算された場合、FAに相談してより詳細な評価についてアドバイスをもらうことをお勧めします。

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