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企業価値評価(DCF法による評価の概算額を知る方法)

こんにちは。公認会計士としてM&A業界に約10年携わってきました。今回は、企業価値評価の中で最も理論的かつ計算が複雑と言われるDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)について、ざっくりとした評価イメージを把握するための考え方・実際に活用できる計算方法を(独断と偏見を交えて)お伝えします。
専門的な内容や詳細な計算方法には触れず、経営者や売手目線でざっくりとした評価イメージを掴むためのものという点はご了承ください。

1. DCF法とは?

DCF法とは、会社が将来生み出すキャッシュフローを、リスクや時間価値を考慮した一定の割引率で現在価値に割り引いて評価額を計算する評価手法です。
「事業計画期間中のキャッシュフローの現在価値」と「事業計画期間以降のキャッシュフロー(継続価値)」の現在価値の合計で計算されます。

2. DCF法の計算に必要な情報

DCF法の定義や概念的な考え方について理解できたとしても、実際に計算しようとすると、以下のような資料の準備やパラメータを詳細に設定する必要があります。
・事業計画(3~5年程度の損益計画)
・事業計画期間の設備投資額、減価償却費
・事業計画期間の運転資本の増減額
・割引率(WACC=加重平均資本コスト)
 - リスクフリーレート
 - β(ベータ)
 - エクイティ・リスクプレミアム
 - 負債コスト(調達金利)
 - D/Eレシオ
・永久成長率

(参考記事)
WACC(加重平均資本コスト)の計算

3. DCF法の簡易的な計算方法

M&Aの専門家であれば当然上記のパラメータを1つ1つ詳細に検討していくことになりますが、それぞれ決まった正解があるわけではなく、専門家やファームのポリシーによってまちまちです。また、1つのパラメータの置き方次第でDCF法の計算結果は大きく変わってくるという性質もあります。

以上から、仮に売手目線でおおよその評価額を知りたいと思っても、実際に計算するのは困難と言わざるを得ません。

そこで、今回は、かなり乱暴ではありますが、DCF法の概算額を知りたいという方のために、超ざっくりとした計算方法をお伝えします。

DCF法による株式価値=(目標とする営業利益×70%÷8%)+非事業用資産-純有利子負債

・目標とする営業利益は、例えば3年後の目標数値(ただし、達成可能な水準である必要があります)を置いてみてください
・70%を乗じる意味は、「1-実効税率」、すなわち税引後を表します
・8%で割る意味は、将来永続するキャッシュフローを割引率8%で割り引くということですが、詳細は割愛します
・非事業用資産:有価証券や遊休不動産など、本業に関係のない資産の時価
・純有利子負債=借入金-現預金

以上が、売手の立場で事前に概算額を計算するとした場合に、現実的に計算可能な方法だと考えています。もちろん、一律に割引率8%と置くのは乱暴ですが、私の経験上6~10%に入ることが多く、仮置きするとすれば妥当な水準ではあると思います。

4. DCF法を活用するポイント

DCF法を活用するポイントとしては、目標とする営業利益が現在の営業利益よりも高い場合、年買法や類似会社比較法よりもDCF法の評価結果が高くなるといえます。そのため、特に成長性が高い企業や業種の場合、年買法や類似会社比較法では過小評価につながるおそれがあり、DCF法の評価の概算額を押さえておくことは非常に重要となります。

今回はあくまでDCF法のざっくりとした評価イメージを把握するために、かなり乱暴な計算式をお伝えしました。実際にM&Aを検討される際には、FAに相談してより詳細な評価についてアドバイスをもらうことをお勧めします。

(関連記事)
企業価値評価(中小企業M&Aで用いられる年買法について)
企業価値評価(類似会社比較法について)

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