三浦しをん「愛なき世界」を読んで物事の源流に想いをはせる
先日久々に敦賀の本屋さんちえなみきに行ってきました。
本の並べ方やセレクトが楽しくて毎回すごく長い時間を過ごしてしまうのだけど、最近はやっぱり庭づくりとかグリーンに関する本が気になるよね〜と思いつつ2Fの「植物と暮らす」コーナーへ行きうろうろしていたら気になる一冊に目が止まりました。
………………三浦しをん「愛なき世界」 (上から2段目平置き)
…えっこれ小説??愛なき…?どういうタイトル?しかもなぜここに笑
と思いましたが、その隣には「ザッケン!」もあったので妙に納得。さすがです。
パラパラとめくってみると文庫にしては文字も大きく笑、なんとなく面白そうだったので上巻のみ購入しました。(せこい)
上巻では料理人の男子(藤丸くん)と研究者の女子(本村さん)が気持ちがすれちがいながらもお互いに共感するところが増えていくドキドキを描いているのだけれど、とにかく研究者の方たちの生態の書き方が面白すぎて何度も声出して笑ったり吹き出てしまうシーンがありました。
最近年縞関連で研究者の方々と仲良くさせていただくことも多く、そんな方々を思い浮かべながら「わかる〜」ってなるのも面白さの一因だったように思います。
私がグッときた上巻のハイライトが、その料理人の男子(藤丸くん)が植物学の教授(諸岡教授)に院生と間違われて芋掘りを手伝わされるシーン。その教授と藤丸くんの会話です。
ここを読んで思い出したのがこれでした。
2022年に福井県年縞博物館で「掘る!」という特別展があったときに年縞研究の中川毅教授が書いていた文章です。
これ、めちゃめちゃ名文なので全人類に読んで欲しい!!!!!
そう、
"すべての物事には意識されない前段階が存在する"
んですよね…
"地面に孔(あな)をあける作業は、様々なことの源流に位置している"
んですよね…
"縄文土器の年代を知るとき、"
知ってる!!水月湖の年縞を使うんだよ!!!年縞もまさにその源流だよ!!
"文明の利益をただ末端で享受するのではなく、それを成り立たせている全ての営為に目を向け、賞賛し、感謝することは有意義だと思う"
!!!まさに!!!
あっこういう話最近もなんかで見たぞ?と思ったらあれです、関西地質調査業協会の採用プロモPV!!!以前友達が出てるからと気軽に見てみたら短い歌の中にも感動が。。
(最後熱唱してるブラウンのパンツ履いてるの友達です)
なんとこれ今年のNIKKEI社歌コンテストで優勝してました!笑
「600万とか〜♪ 」のところ頭リフレインしがちですが、
「災害が起きたら〜♪ いち早く駆けつける〜♪ 復旧が少しでも早く進むため〜♪ 」
のところグッときました。知らんかった…
土を掘るって深いですね…
…さて、めっちゃ話それましたが、先ほどの藤丸くんの問いに対する諸岡教授のアンサーがこれです。
な、泣ける〜〜!!!
マヤの年縞を研究している北場育子さんも、お会いしてお話を聞くたび、
"『知りたい』という思いは、空腹に似ている。そして、うつくしいものを追い求めずにはいられない"
的なマインドを本当に感じます!!
年縞を掘っている時のキラキラ感、
掘り上げた年縞をようやくイギリスで調査できるようになった〜って聞いた時の高揚感、
年縞博でのガイドツアー中トークに熱を帯びてきてどんどん早口になっていく様、
泥なのに…って言いながらも愛おしそうに年縞を眺める眼差し!!!
あっ、私…完全に藤丸くん目線で研究者の皆さんをみている…
私がなぜこの本がそんなに面白いかがわかった気がします。
そして三浦しをん「愛なき世界」下巻、なんで上巻と一緒に買わなかったんだ!と後悔しすぐにネットで買いました。
下巻は最初少しセンシティブな内容になりますが、やはり面白い!!
研究と調理は似ている!!ってくだりがあるんですが、確かに以前中川先生北場先生のいらっしゃる立命館大学の古気候学研究センター(←つい最近できた新ホームページ)にお邪魔したとき、ゴツめの研究機材の中になぜか調理用器具も置いてあったな…でもあれほんとに研究に使ってたな…
などなど小ネタも楽しみつつ最後まで読み進めました。えっ、これで終わりなのか…でもリアルっちゃリアルだ…そして日常はつづく…
…というわけで、三浦しをん「愛なき世界」。
愛なき世界はめっちゃ愛に溢れる世界でした。(雑なまとめですみません。でもほんとそんな内容なのです!!!)
一途な研究者たちのときめき偏愛生活(上巻の帯のフレーズ)を少しのぞいてみたい人、
そんな人に恋しちゃった人、
こういった偏った人たちにグッとくる人(私)
…みんな…読んで…
え!これ「日本植物学会賞特別賞」受賞してるの…????笑笑
おすすめです!!!
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