Wikiとか仕様書とか書くときに意識したい「読み手の探し方」

プログラマーなど開発に携わる人は、仕様書、作業手順書とか、業務フローをまとめたWikiとか書くことが多いだろう。ただ、どうしてもプロダクトの開発者視点になってしまうためか、読んでいて「欲しい情報がどこに書かれてるのかわからない」状況になることが多いと感じる。いくら役立つ情報を載せても、読み手がそれを見つけられなければ全く意味がない。

人はつい、自分の視点でものごとを見てしまいがちだ。でも書き手は、伝えたい情報を読み手の視点で見なければならない。書き手視点を読み手視点に変えることを意識するだけで格段に良いドキュメントやサイトを作れるようになると思うので、この記事を書いてみる。

読み手が情報をどう探すかイメージする

ドキュメントやサイトの構成を考えたり、文章を書いたりするときに意識したいのは、「この情報を探している人はどういう行動をとるのだろうか?」ということだ。物語と違って、仕様書やWikiなどは最初から最後まで読んでもらえるわけではない。読み手は必要な情報だけをピックアップして読む。読み手が「このあたりに欲しい情報がありそう」と推測して、必要な情報に素早くアクセスできるように書く必要がある。

読み手の行動の理解に便利な4つのモデル

読み手の行動をイメージする、といっても、どういう行動をとるのかさっぱりわからなかったりもすると思う。そんなときに、情報アーキテクチャの分野で言われているユーザーの行動モデルがとても参考になるので、紹介したい。書籍『情報アーキテクチャ』(オライリー)や『デザイニング・ウェブナビゲーション』(同じくオライリー)に詳しいので、そちらも適宜参照して欲しい。

既知項目検索
ユーザーが、自分が探しているものが何か知っていて、さらにそれを言葉で表現でき、どこで探せばいいか、そしてどこから探し始めればいいかを知っている。このような状態での探し方を、「既知項目検索」(known-item seeking)と呼ぶ。

たとえば、業務WikiからGitのブランチ作成ルールを探すようなケースが挙げられる。情報を探すためのキーワードがはっきりしているので、情報を探す際には検索機能が多く使われる(前述の例であれば、検索キーワードは「ブランチ ルール」などだろう)。もちろん、目次やナビゲーションを辿って目的の説明項目を探す場合もある。いずれの場合でも、読み手が頭に思い浮かべた言葉と、ドキュメントで使う言葉を一致させることが設計のカギになる。

探求探索
ユーザーは、自分が何をわかっていないのか、何が必要な情報なのかを把握していないこともある。もしくは、自分が何をわかっていないのか把握してはいても、どこから手を付けていいのかわからないほど多岐に渡っていたり、情報を探すために必要な言葉を思い付かなかったりする。このような状態での探し方は、「探求探索」(exploratory seeking)と呼ぶ。

知識が少ない初心者の読み手は、この探求探索の状態にあることが多い。開発チームに入りたてで、業務Wikiを開いたもののどこから読んだらいいのかわからないような状況がそれにあたる。

探求探索では、探している情報が何なのかユーザー自身にもはっきりとわかっていないため、明確なゴールがない。手探りの中で情報を仕入れながら、得た情報をもとに次の探索へと進んでいく。情報を得るにつれて、当初の目的とはまったく違う情報を探しに行ったりもする。

探求探索の状態のユーザーには、受動的に情報を得られる読み物形式のチュートリアルコンテンツだったり、「初めにお読みください」のようなオンボーディングカテゴリーを作ったりすると良い。

再検索
過去に見たことがある情報を再度見る必要が生じて、探し直す、というケースもある。そのような行動は、「再検索」(refiding)と呼ぶ。再検索に対しては、過去に見たページの一覧を表示したり、再検索されやすいページをトップページなどに表示するなどの工夫がある。

全数探索
あるトピックについての情報を網羅的に探す状況もある。たとえば、プロダクトのテスターやマニュアル制作者が仕様書から各機能の仕様を一通り読み込むような状況が想定される。そのような行動は、「全数探索」(exhaustive research)と呼ばれる。全数探索への対応としては、ページの適切なカテゴライズだったり、タギングだったりが考えられる。

もちろん、読み手のすべての行動をこれら4つに分類できるわけではないけれど、大部分は網羅できるはず。まずは「既知項目検索」と「探求探索」を意識して、「既知項目検索」向けのチュートリアルを用意したり、「探求探索」する読み手がどんな言葉で情報を探すかを考えるだけでも、ドキュメントやサイトの探しやすさがかなりアップすると思う。

この「読み手が思い浮かべる言葉」を「トリガーワード」と呼んだりするけれど、Slackのヘルプは、トリガーワードを太字で目立たせている。こんな工夫も考えられるので、ご参考に。

まとめ

情報を探しやすいドキュメントやサイトを設計するためには、ユーザー(読み手)の行動をいかに正しく想定できるかにかかっている。まずは「読み手の探し方」に意識を向けてみて欲しい。そのために、今回紹介した行動モデルが参考になるので、ぜひ頭の片隅にでも入れておいてもらいたい。

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