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悩める村上主義者

村上春樹の6年ぶりとなる長編小説「街とその不確かな壁」が去る4月13日に発売された。

「ノルウェイの森」が文庫になったより後からハマった後発ではあるものの、一端の村上主義者としてはソワソワするニュースだ。

巷では、村上春樹ファンのことを「ハルキスト」と呼ぶ風潮があるが、これは村上春樹先生ご本人がはっきりと「好まない」とし、それよりも「村上主義者」の方がいいと某著書で述べていらしたので、私もそれを名乗ろうと思う。
(今は違う?いや、まさか)

村上主義者としては新刊が気にならないわけがない。しかし、まだ私は本著を手に取っていない。

並んで買うのが気恥ずかしいとか、飛び付くのはいかがかと斜に構えているとか、実は何かしらの裏ルートで届くことになっているとか、そういうことではない。

ただひたすらに、文庫化を待っているのだ。

単行本が高いということを言いたいわけではない(と毅然と言い切れるわけでもないが、それが主たる理由ではないという意味では間違いではない)。
読書スタイルと収納の問題なのだ。

通勤の、しかも必ず座れるとも限らない、乗換も最大3回ある電車通勤の共とするには、1,200ページに及ぶ単行本の厚さと重さと大きさは耐えかねる。
たとえ分冊(上下巻)になろうとも、文庫で読むことが私のスタイルにあっている。
しかも、村上春樹作品であれば、文庫化するのは間違いない。
装丁がキレイで凝っているから文庫化しないと踏んで単行本で購入した「猫を棄てる」でさえ文庫化されたのだ(軽くショックだった)。
ましてや待望の長編小説が文庫化されないわけがない。

寝室のベッドの脇に立つ本棚は、すでに文庫本を収めるのにも限界が近づいている(あるいは限界を超えている)。
ただでさえ就寝中に地震が来たら本に埋もれる自信がある状況。圧倒的に本棚が足りない。

とはいえ、潔く心穏やかに単行本発売を眺めているわけではない。

「1Q84」が単行本3冊組で発売された時も、「騎士団長殺し」が2部組で発売された時も、文庫化間違いなしと待ちながら、その間に単行本を読んだ人のレビューが目に入りそうなのを必死に避け、うっかり伸びそうになる手を耐え、必死の思いで文庫化を待ったものだ。

ゆえに、「1Q84」が6冊組で文庫化された時はも、「騎士団長殺し」が4冊組で文庫化された時も、それぞれそのボリュームに圧倒されながらも感涙に咽ばんとするほど歓喜した記憶がある(ただし記憶はしばしば美化され誇張される)。

だから、今回も待つのだ。

ひたすらに、「街とその不確かな壁」の文庫化を。

ちなみに、前作「騎士団長殺し」が文庫化されたのは、単行本の発売から2年後。その前の「1Q84」が文庫化されたのは3年後。

文庫で読めるまで、3年?

やれやれ。

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