Goodpatchの新プロダクトStrapに秘められた苦悩の3年間のストーリー
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Goodpatchの新プロダクトStrapに秘められた苦悩の3年間のストーリー

Naofumi Tsuchiya / Goodpatch

先週、Goodpatchから久しぶりの新プロダクトStrapのβ版登録開始がリリースされました。

LPのキャッチにある通り「リモートコラボレーションの可能性を広げるクラウドワークスペース」で、このコロナでリモートワークが広がっている中でリリースのタイミングが重なり、発表後5営業日で1800件を越えるβ版申し込みの登録があり、多くの反響をいただけました。

1年以上前から開発しており、タイミングに関してはただのラッキーなのですが、このStrapというプロダクトのリリースまではなかなか平坦な道ではなく、Strapを作っているチームであるGoodpatchのProduct Divのメンバー達は3年以上の期間、苦悩の日々を過ごして来ていました。

今日はそのストーリーに関して書いてみたいと思います。

以下の文章は先週リリースの日に社長報として社内向けに書いたものを少しだけリライトしたものを載せています。Goodpatchのメンバーになった気持ちで読んでみてください。

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社長報 新プロダクトStrap始動。Prottから続くストーリー。

いよいよ、本日弊社Product Divから出る久しぶりの新プロダクト「Strap」がリリースする。ここ数年ReDesignerやAnywhereといった新規事業は出ているが、ProductDivのプロダクトという側面で言うとPrott、Baltoに次ぐ3つ目、そして実に3年3ヶ月ぶりにリリースするプロダクトだ。

3年前以上前からGoodpatchにいるメンバーはわかると思うが、このStrapを出すまでProduct Divのメンバー達は苦悩の日々を過ごしていた。

Prottの成長鈍化とPrott2の失敗

Goodpatchは元々UIデザインの会社でありながら、創業3年目から自社プロダクトの開発もしている。その第1段がProttだ。当時はFlintoでよくないですか?とか社内にも反対されながらも、俺含めたった4人で作り始めたProttは、思いの外リリース後それなりの急成長を見せた。

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1年目 売上〇〇万
2年目 売上高 前年対比 433%
3年目 売上高 前年対比 162%
4年目 売上高 前年対比 117%

こう数字を並べて見るとわかるが、3年目まではSaasビジネスだとそれなりの成長プロダクトだ。当時は社内の目標値も高く未達が続いていたのと、組織状態も良くなかったのであんまり凄いイメージはなかったのだが、実はいい感じの成長をしていたのである。

しかし、3年目の途中でAdobeXDがリリースされ、Prottの成長に暗雲が立ち込める。いや、その時はそこまで気付いてなかった。InvisionやFlintoの方が気にしていたかもしれない。

当時、シリーズBで4億円の調達をしたばかりの俺は焦っていた。

振り返るとかなりの失敗の一手となったPrott2

Prottが順調に伸びていた3年目の終わりに、俺はProductDivのメンバーにある提案をした。

「今のProttはすでに技術負債が溜まり始めている。今後Prottをスピード感を持って改善していくにはリファクタリングが必要じゃないだろうか?」

普通、社長からされるような提案ではない。普通はメンバーがリファクタが必要だと上に提案して、そんな所にリソース使うならもっと売るために機能を作れ!と言われるのが一般的な会社の風景だ。正直メンバーもびっくりしていた。

そして、俺は続けて 「どうせリファクタするなら、海外市場でも使われるように外国人メンバーを入れてProttをリニューアルしよう!」 と提案した。

これがその後に続く地獄への意思決定となった。

運良くベルギー人の優秀なデザイナーを採用する事ができ、その後も外国人メンバーをどんどん採用しチームは膨れていった。一時期はProttチームだけで30人くらいいたと思う。

しかし、Prott2は一向に前に進まなかった。

色んな原因はある。ライトパーソンをアサインできなかった。チームもバラバラになっていた。永遠にワークショップをやっていて、結局何も進まないみたいな地獄のような数ヶ月があった。振り返れば反省点ばかりだ。

それと同時期にGoodpatch自体も組織崩壊が起きていて、Product Divからも優秀な人材がどんどん抜けていった。

今いるProduct Divは半分以上がこの時を知っているメンバーが残っている。

それでも、Prott2を進めないといけない。開発スピードを上げるためにアジャイルコーチを入れてスクラムを始めたり、チームはなんとかもがいていた。Product Divは決して悪い雰囲気ではなく、むしろチームとしてはまとまっていたし、本当に良いチームだった。なんとかPrott2を前に進めようとみんな頑張っていた。

しかし、リミットは来てしまった。

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幻となったPrott2のDesign Guideline

Prott2の開発停止とチームの半減

忘れもしない2018年初夏、翌期の予算を決めるタイミングで役員会議でPrott2にこれ以上投資をするべきかの議論があった。もちろん、それまでも1年間のうち何回も議題に上がっていた。そこまでにPrott2には2年半で数億の投資を続けている。FY2019の予算を決める夏までにPrott2の未来が見えない場合は開発を止める決断もしないといけないと半年前には役員や株主に言われていた。

役員の中でProttに最も思い入れがあるのはもちろん俺だ。すでにProttを作り始めた時からいるメンバーは俺だけだし、自分のアイデアから始まったプロダクトだ。

しかし、これ以上Prott2の開発を続けるには予算がかかり過ぎるし、プロトタイピングツールマーケットではAdobeXDが浸透し、明らかな負けは見えていた。

俺は役員会でPrott2の開発停止を決め、Product Divのチームを半減させる意思決定をした。多くのメンバーは部署異動を迫られ、結果的に残らなかった。このタイミングでProduct Divの役員も去ることになった。

残されたメンバー達はまだユーザーがいるPrott v1の改善を続け、この後どうなるのかわからない未来が見えない状況だった。

Prottを売却することも考えたが、成長が鈍化したプロダクトで、メンテコストが高いプロダクトはどの会社も買ってくれないのだ。俺も未来が見えずに、Prottを静かに閉じていくしかないのかもしれないと思っていた。でも、当然メンバーを残している以上は諦めたくはないとは思っていた。

今まで自分たちが使うものを自分たちで作り続けてきたGoodpatchの文化をここで諦めてはいけない。Goodpatchは自分たちでプロダクトを作り続ける会社であり続けなければ。

救世主(メシア)黄 兪維ことFishの降臨

未来が見えないまま、とりあえずProduct Divは俺が引き取り、どうするか考え始めた2018年9月。あるメールがinfoに届いた。

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そこに貼ってあったプロトタイプと書かれたリンクを見に行った時の衝撃は今でも忘れられない。

黄さんが作ったPrott2のプロトタイプ

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そのリンクには開発を中止したはずのPrott2が完成形に近い形で実装されていた。しかも、プロトタイプも動いていて、何ならProduct Divで2年掛けて作っていたのより完成度も高く、機能も多かった。

メールを送ってきた黄さんはProttのユーザーで、ユーザーミートアップにも参加したことのある人だった。(まさか、ユーザーミートアップで少し触っただけのPrott2を見てあれを実装したのか・・?)

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俺はすぐにメッセージに返信して、送信主である黄 兪維さんをオフィスに呼んだ。

正直、とんでもないエンジニアだというのはあのプロトタイプを見た瞬間にわかっていた。でも、どんな人なんだろう。

ドキドキしながら、会った黄さんは、想像の斜め上を行くくらいの好青年だった。そして、あのPrott2のプロトタイプってどれくらいの期間で作ったか聞くと、なんと1ヶ月!!むしろReactを触ったことがなかった所から2週間でReactをキャッチアップし、2週間で実装したと言うのである。しかも、バックエンドはWordpressだと。

正直バケモンが来たと思った。

面接中なのに、近くにいた新卒1年目の尾崎を会議室に呼んで、黃さんのプロトタイプを見せたほどである。すぐにニッシーさん(Product Divマネジャー)にも会ってもらった。

正直、Prottはこの状況だけど、黄さんは逃してはいけないと俺の直感が働いた。彼がいれば、この後どんなプロダクトでも作れるかもしれない。

この時点では何もアイデアはない。それでも、俺は黄さんを採用した。

これが黄 兪維ことFish(ニックネーム)との出会いだった。

プロジェクトコードネームorca(オルカ)

Fishの加入が決まったとはいえ、Product Divは未来の見えないPrott v1の改善を続けていた。

俺の頭に当時あったのはプロトタイピングマーケットではない場所で戦うことだった。

何か別の切り口で、Prottの経験を活かしながら新プロダクトができないだろうか。

一つ、直感的にあったのが、「情報の再利用性」 というペインだった。

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そして、これらのペインからナレッジマネジメント領域はマーケットもでかいし、その中の一つの方向性として出てきたのがビジュアルコラボレーションツールだった。

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ここから、アイデアを膨らませてビジュアルコラボレーションツールのプロトタイプを作り、取締役会で合意を取り、本格的にプロダクトの開発を始めたのが去年の3月だった。

コードネームはorca(オルカ)。新加入したFishのニックネームから連想する形でシャチを意味するorcaに決まった。

そして、この言葉を掲げた。

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Prott v1の売上があるうちに、新しいプロダクトを作るんだ!

おじいちゃんの年金で、孫が夢を追うみたいな構図だと、よくProduct Divの定例で言っていた。Prottおじいちゃん死なないで!(不謹慎)

組織復活の裏で、苦しみ続けた1年

この1年Goodpatch全体は組織崩壊から奇跡の復活を遂げ、会社全体としては勢いに乗りポジティブなムードが漂っていた。

しかし、Product Divメンバーは実に3年以上に渡ってプロダクトが出せていない。会社全体が復活の勢いに乗る中でどこか置いていかれたような気持ちだったかもしれない。

やっとプロダクトの承認がおり、開発を進めるしかない状況だった。新規プロダクト開発というのは、開発が長引くほど先が見えなくなる。

作ろうと思ったビジュアルコラボレーションツールは、予想以上に開発期間を要するものだった。途中、メンバー達は思うように進まない開発スピードにモヤモヤを感じる場面もあったかもしれない。他の部署の目も気にしていただろう。

それでも、彼らは誰も諦めなかった。誰も辞めなかった。

唯一の救いは、昔と違い今回のプロダクトに多くの他部署のメンバー達が協力してくれた事だ。昔、Prottを作っている時は部署間のセクショナリズムが強く、Design DivのメンバーがProduct Divに関わろうとするという姿勢はあまりなかった。

しかし、そこから時が経ち、組織崩壊を越えたGoodpatchはValue通りのGo Beyondの精神でDesign Divのメンバー達がこの1年Strapの開発に積極的に協力してくれた。多くのメンバー達が協力してくれたのは本当に嬉しかった。

終いにはキタム(事業責任者)も異動してきてくれた。

そしてプロダクトの名前もStrapに決まった。
紐を結ぶという意味合いから情報を結びつける(紐付ける)という意味が含まれている。

こんなに収まりの良いビッグワードがよく余っていたものだ。
Strapのために誰かが残しておいてくれたかのようだ。

いよいよ悠久の時を経てStrapリリース

Prott v2の開発停止から1年半、Baltoのリリースからは3年3ヶ月。

苦しみ続けた約1年の開発期間を経て、いよいよStrapがリリースする。

奇しくも神様のいたずらか、このタイミングでコロナが襲来し、企業が一気にリモートワークを始めるというトレンドになった。

Strapはリモート環境ではさらに活きるツールである。

もう少し早く出せていれば!と悔やむ部分もあるが、このタイミングで出せるのは十分ラッキーである。

もちろん、まだβ版だし、競合のMiroやWhimscalには機能的にも遠く及ばない。

でも、日本のユーザーの声を聞きながらプロダクトを改善できるという圧倒的な地の利が我らにはある。まだ多くの企業が使っていない未開拓マーケットだ。

ここからが勝負である。

それでも、この数年苦しい想いをしながら、何回も辞めようと思ったに違いない、それでも諦めずに続けたProduct Divのメンバー達やっはー、あやか、うっちーさん、よっしー、にっしーさん、たいが、あさこさん、Fish(入社順)、そしてついでにキタムに賛辞を送りたい。 

本当にお疲れ様。

そして、Strapに協力してくれているGoodpatchのメンバー達ありがとう!

さあ、偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれるを証明しよう!

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これがStrapを作っているProduct Divのストーリーです。

やっとβがリリースできて、正式リリースまではプロダクトをまだまだブラッシュアップしないといけないですが、それでも今の時代にまさに求められているプロダクトを作れているのは、この数年プロダクトが出せずに苦しんだ彼らにとっては心地の良いプレッシャーでしょう。

新プロダクトStrapはここからがスタートです。

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Naofumi Tsuchiya / Goodpatch

記事を読んでいただきありがとうございます!これからも頑張ります!

Goodpatchのpは小文字!
Naofumi Tsuchiya / Goodpatch
Founder, CEO of Goodpatch Inc. 東京、ベルリン、ミュンヘンにオフィスがあるデザインカンパニーの社長です。 Goodpatchのpは小文字です。2020年6月、デザイン会社として初の東証マザーズに上場。