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バリュエーションを「先送り」?!(6)

前回の記事はこちら。

前回までで、バリューションを先送りする方法として新株予約権付社債があること、ただそのままだと社債=借金になってしまうので起業家側のリスクを下げる方法として「社債」を外した新株予約権を使う方法があることを説明してきました。

じゃあ、具体的に、新株予約権を発行したい場合、どうすればいいのか?

なんかものすごく大変そうではないか?(弁護士費用めっちゃかかりそう?)という不安の声が聞こえてきます。

でも大丈夫。

実は、ベンチャーキャピタルのCoral Capitalさんが、誰でも使える新株予約権の雛形一式を、なんと無料で公開しています。

その名も「J-KISS」。名前がいいですね。

こちらに書式一式やCoral Capitalさん自身による解説が大量に掲載されていますので興味ある方は御覧ください。

これまで解説してきたことに即して、J-KISSがどのような設計になっているか、要点だけ説明します(詳細はCoral Capitalさん自身の解説を各自ご確認下さい。

ディスカウント条項

以前解説した、「次回資金調達ラウンドにおける発行価額よりも●%分お安く株を取得できるという条項」。投資家が早い段階で新株予約権方式で投資をする場合のうまみのひとつ。

J-KISSでは、「20%」に設定されています。

ただしJ-KISSはあくまでも雛形との位置付けなので、案件ごとに交渉して数値をいじっても問題はありません。


バリュエーションキャップ

これも以前解説した、「次回資金調達時のバリュエーションが高くなりすぎていた場合の処方箋」。

J-KISSでは、さすがにここは所定の金額は入っておらず、「案件ごとに交渉」となっています。 


発動条件

新株予約権を株式に転換するための条件。

これまで「次回の資金調達時」などと表現してきましたが、専門家の間では「適格資金調達」などと呼んでいます。

J-KISSでは、「1億円以上の新規資金調達」があった場合を「適格資金調達」に該当すると定めています。


買収発生時の措置

適格資金調達が発生しないまま、対象会社が大手企業に買収されてしまったらどうなるのか?

何も定めていないと、新株予約権は紙くずになってしまいます(新株予約権は「株」ではなく「株をもらえる権利」に過ぎないので。)。

そこで、J-KISSでは、投資家のこのリスクを回避するために、適格資金調達前に買収が起きた場合は、「バリュエーションキャッ プで普通株へ転換する」、もしくは「投資額の2倍の金額を金銭で償還する」と定められています。


いかがでしたでしょうか。

シード段階でなかなか弁護士費用や司法書士費用の捻出が難しいが、新株予約権でバリュエーションを遅らせて資金調達をしたいとお考えであれば、J-KISSの利用を検討することも一考だと思います(ちなみに当職はCoral Capitalさんとは何の利害関係もありません。念の為。)。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家・スタートアップの皆さんを応援しています。



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