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オンライン授業で映画を使いたいとき

今回は、いつもの起業家向けの記事をちょっとお休みしまして、ちょっと番外編。


実は小職、大阪府立大学さんで2年前から非常勤講師をさせて頂いているのですが、今年はコロナの影響で100名以上の対面授業は原則NGとのお達しが来ました。残念ながら、小職の担当授業は大教室で100人超えです。

で、パワーポイントに音声を吹き込んで準備してくださいというアナウンスが来たのですが、パワポに音声を吹き込むって人生初の経験で、なかなか四苦八苦しております。

そして、さらに困ったことが起きました。小職は毎年教材として授業冒頭で映画やドキュメンタリーの一部などを上映し、それを踏まえて講義をするというスタイルをとっていたのですが、これってオンライン配信にしてしまうと著作権法35条違反なのでできないのでは、、、という問題です。

こちらについては、小職は弁護士のため、今年特別な法律改正があったことを知っているのですが、学校現場ではもしかすると知らない人も多い?かと思い(私の周りで教員をしている人でも知らない人が結構いました)、細やかながら共有させていただきます。


コロナ前

コロナ前は、著作権法35条に基づいて、学校現場で教育目的で他人の著作物を著作者に無許可で利用することは、合法とされていました。

たとえば、教室の中で映画を上映する、といったことです。


ところが、NGの類型がありました。

それが、「オンライン配信」です。

第三者の著作物(映画など)をオンライン配信で生徒に視聴させることは、著作権法35条によっても許されていませんでした。


しかし、コロナ前から、教育現場含め様々なオンライン化が進む中で、このようなオンライン配信による教育目的の利用も合法化しようという議論が進んでしました。

そして、2018年の著作権法改正において、国が定める管理団体に補償金を支払う「有償」形態であれば、著作者の個別の許可がなくても、教育目的での映画や音楽のオンライン配信ができるように著作権法35条が改正され、2021年5月24日までに施行されることになっていました。(注1)


コロナが起きて前倒し

ところが、誰も想定していなかった事態が起きました。

そうです、新型コロナウィルスです。

これによって、2018年の著作権法改正が想定していたニーズを圧倒的に超えるオンライン講義ニーズが教育現場に発生しました。

そこで、この異常事態を受けて、急遽、改正著作権法35条の施行が2020年4月28日に一気に前倒しになったのです。


さらに「有償」が「無償」に !(今年だけ!)

上記のとおり、法律の施行は前倒しされたのですが、法律には「有償」と書いてあります。

では、学校は、著作者にいくらの補償金を支払わないといけないのでしょうか。。。?!(注2)ここが教育現場のモヤモヤしていたところかと推測されます。

ところが!この「有償」についても、コロナ対応の特別措置ということで、2020年中に限っては「無償」となっています!!!


まとめ

2020年末までは、特段の費用を支払うことなく、第三者の著作物を教育目的でオンライン配信等することができるのです。

ただ、学生がダウンロードした媒体を違法にアップロードして営利目的で利用するなど、悪用も懸念されるため、この措置は2020年限りの特別なものとなっています。

さりとて、今年は、教員、生徒ともに、本当に疲弊しているのではないかと思います。小職も細やかながら大学で教える機会がありますが、パワポに音声を吹き込むという作業は本当になんともいえぬ作業でして、、、やはりリアルタイム、リアルでの授業で伝えられることの10分の1も伝わらないのではないかという気がしています。

が、この著作権法35条に関する特別な措置は、そのようなダメージを一定程度緩和する力があると思います。

今年限りの措置にはなりますが、まだ今年も2ヶ月半ありますので、是非この制度を使って多くの授業がより生徒にとって魅力的なものになることを願います。(注3、4)



注1)法律は、このように、通常、制定されてから施行されるまでの間にバッファが置かれます。

注2)補償金の支払いは、実際には教育機関が一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS、サートラス。(覚えにくい・・・))に対して支払をします。利用申請も一括して教育機関が行っているようですので、現場の教員としては、自分の所属する教育機関がSARTRASに対する届け出をしていることを確認できればOKと思われます(小職の場合は、大学が届け出をしているのでOKという返事を大学事務局からもらいました。)。

注3)本制度の詳細については、SARTRASが出しているQ&Aなどたくさん情報がありますのでご参照ください。

注4)注1のとおり、個々の教員ではなく教育機関がSARTRASに補償金の支払をすることが一般的と思われるため、私見ですが、コロナ禍が2021年も継続しオンライン授業の需要が継続するのであれば、一定規模以上の教育機関は有償で本制度の利用を継続するのではないかと思われます。

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