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友人・知人と起業するときの注意点(7)

前回の記事はこちら

なお、本記事は、小職が参加する士業団体「南森町スタートアップ・ラボ」(MSL)が2020/10/20 18:00-に開催した無料ウェビナー「MSL#3_友人・知人と一緒に起業するときの注意点〜創業者間契約ってなに?〜」の共同発表成果に大きく依拠しています。MSLの先生方ありがとうございました。

連載第1回で提示した事例をもとに、株式会社イソノ、カツオ、ワカメ、タラの身に何が起きるのかを解説していきます。

今回の記事では、創業株主間契約で、株式買取条項以外に想定される規定の代表例、「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」を概観します。


競業避止義務ってなに?

たとえば、タラが役員退任後あるいは従業員退職後に、カツオのアイデアをそっくりそのまま転用して、「TAMA」と類似のサービスを開発することは違法でしょうか?

会社の役員である間、または従業員である間は、会社と競業する事業を行うことは違法となる可能性があります。

少なくとも、取締役については、競業事業を行う場合は、事前に取締役会の承認を得なければならないことが法律上明記されています。従業員についても、信義則上、競業避止義務を負っていると解されています。

会社法
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
第三百六十五条 取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。


退職したらどうなるの?

他方で、ひとたび退職してしまうと、この競業避止義務はなくなってしまいます。

そこで、創業株主間契約の中で、退職後の競業避止義務を創業者間の約束事として定めておくことが有用になってきます。


契約書にはどうやって書けばいいの?

ただし、無制限の競業避止義務を課すと、憲法上保証された「職業選択の自由」を侵害するものであるとして、裁判上無効と判断されてしまいますので注意が必要です。


CASE 
カツオは、なんとしてもE-sportsプロダクト「TAMA」のアイデアをタラに模倣されたくなかったため、創業株主間契約の中に、「タラは、退職後、死ぬまで、全世界で、E-sportsに関する事業をすることができない」という条項を挿入した。

これは、タラが裁判所で有効性を争った場合、ほぼ間違いなく無効という判断になるでしょう。


CASE
カツオは、創業株主間契約の中に、「タラは、退職後1年間、大阪府内で、「TAMA」と競合するE-sportsに関する事業をすることができない」という条項を挿入した。

こちらの条項であれば、裁判所においても有効であると判断される可能性が一定程度あります。このあたりは裁判例の集積がある分野ですので、詳細は弁護士に相談いただければと思います。


まとめ

以上で「友人・知人と起業するときの注意点」シリーズは一旦終了です。

最後に付け加えると、共同創業はやはりパートナーを誰にするかが決定的に重要かつ、後戻りができません。いくら創業株主間契約で担保したとしても、買取には一定の痛みが伴いますし、心理的にも相当大変な状況に置かれます。

是非、最高のパートナーを探すことに最大限のエネルギーをかけていただければと思います。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家の皆様を応援しています。

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