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友人・知人と起業するときの注意点(6)

前回の記事はこちら

なお、本記事は、小職が参加する士業団体「南森町スタートアップ・ラボ」(MSL)が2020/10/20 18:00-に開催した無料ウェビナー「MSL#3_友人・知人と一緒に起業するときの注意点〜創業者間契約ってなに?〜」の共同発表成果に大きく依拠しています。MSLの先生方ありがとうございました。

連載第1回で提示した事例をもとに、株式会社イソノ、カツオ、ワカメ、タラの身に何が起きるのかを解説していきます。

今回は、取得価額の話の続きです。


簿価純資産法とするのは?

取得価額のほかに「わかりやすい」買取価格は、簿価純資産法による金額です。

これは、大雑把にいいますと、会社の純資産の部(貸借対照表の右下)の金額=株主価値 として、これを発行済み株式数で割って、一株あたりの価値を算出するものです。
たとえば株式会社イソノが、革新的なプロダクト「TAMA」を開発したものの、まだ全然売上も立っておらず、第1期の税引き後純利益が10万円しかなかった、となれば、
純資産は 資本金100万 + 第1期の税引き後純利益10万 =110万
110万の20%(タラの持ち分)は22万円、ということになります。
とくにスタートアップは、設立から数年は赤字が続くことが多いため、実際には初年度からずっと赤字で、純資産がマイナスということもザラです(→買取価格は0円ということになります。)。



「時価」とするのは?

なお、「時価」にするのは避けたほうがよいでしょう。この紛争が発生するのは、上場「前」の段階であり、「時価」がいくらなのかなんて、創業者間で見解が一致するはずがありません。第三者の会計士などに時価評価の依頼をするとしても、それだけで数十万円の費用が発生してしまいます。

「話し合いで決める」とするのは?

これもオススメではありません。くどいですが、株式買取条項が発動するのは、かなりシリアスな状況であることが多いため、冷静に話し合って買取価格を決める、というのは、なかなかできることではありません。


「直近のバリュエーション価格」とするのは?

シード調達を完了した会社であれば、直近のバリュエーション価格が存在します。これを基準とするのは、売り手としては不公平感がなく受け入れやすいところです。

が、創業者間契約を締結する時点ではシード調達すら完了していないことが多いですし、億単位のバリュエーションになってくると、たちまち一般の資力では買い取れない金額となってしまいます。買う側としては非常に危険な評価方法になってきます。


まとめ

以上、前回の記事含め、買取価格については、取得価格、簿価純資産法、時価、協議による価格、直近のバリュエーション額があることを見てきました。

正直、どれが正解ということは一般論としては言いにくいところです(この記事を読んでくださっている方が、売る側になる可能性が高い場合、買う側になる可能性が高い場合で、オススメは変わってきます。)。

それぞれの評価方法の特徴と、ご自身が将来置かれる可能性が高い立場にたって、評価方法を決めるべきと考えます。

が、あえて申し上げるならば、全員にとって何らの恣意性もなく公平、かつ、直近の(中小企業的な)会社の実態を反映している、というところでは、簿価純資産法は収まりが悪くはないと思いますし、対税務署的にも問題が無いと思います。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家の皆さんを応援しています。

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