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①福祉の現場で培われた死生観、人生観

ある企画でインタビューを受けた記事の内容。

🧑‍💻:それではさっそくお話を伺いたいのです
  が、🙋‍♀️さんはこのような仕事に就く前に      
  高齢者と関わることは身近にあったんです
  か?

🙋‍♀️:自分が直接介護するっていう機会はなか
  ったんですけど、実家の隣に父方の祖父母  
  の家があって祖母が認知症になったとき 
  に、母屋に介護用ベッドが搬入され、いわ 
  ゆる老々介護がはじまったのを見ていま
  た。今までの祖母と様子が違ってきて、精
  神面も荒れてきたのでそこから施設に入所 
  していく流れまでは見ていました。施設に
  いる祖母に面会もしていました。

🧑‍💻:🙋‍♀️さんが働いている施設の方は認知症の
  方も多いですか?

🙋‍♀️:ほとんどそうです。

🧑‍💻:実際に働いてみて、認知症のある高齢者
  と関わってどうですか?

🙋‍♀️:先ほどの話にもあったんですが、私は幼
  いときから見てきた祖母と、認知症になっ
  た祖母を同じ人物として見ちゃうから目の
  前にいる認知症の症状が出ている祖母を受
  け入れられないときがあって、面会に言っ
  ても返答してくれない祖母に話しかけるの
  が恥ずかしかったり、今までいろいろよく
  してくれて料理も作ってくれたのに別人だ
  なって思って落ち込むことが多かったんで
  す。しかし、施設にいる認知症の方に対し
  て職員として接するのは、言い方が悪いん
  ですけど「他人」だし、その方の今までの
  人生を話でしか聞けないし、入所されてか
  ら職員と入居者の関係なので結構割り切っ
  て介護をし、関わりを楽しむこともできま
  す。

🧑‍💻:家族だとやはりそこは…。

🙋‍♀️:元どおりに戻ってほしいとか、認知症は
  病気だから治るとか思うし、思いたいんで
  す。
この薬は認知症を遅らせる薬ですって
  持ってきてくれるご家族もいらっしゃいま
  すけど、職員としては今のその人を受け入
  れることが、その人にできるケアなので過
  去に戻るというよりも、今この人が困って
  いることに対して…例えば排尿コントロー
  ルが難しくなったから排泄介助を行うよう
  に、その人の直面している困りごとに対し
  て専門職としてどう対応していくかと割り
  切れるんです。あと、病院に入院している
  認知症の方と、特養に入居されている方と
  でも違って…特養は最後まで看取るので、
頑張らない、頑張らせないっていうのがベ
  ースなんですね。
でも病院だったら入院の
  期間が決まっているからその期限がきたら
  次の施設を探して転々とする方もいます。
  例えば徘徊して転倒して骨折した部分を治
  療する目的で入院するので、やむを得ない
  身体拘束もあります。特養だったら「看取
  る」がゴールなので、歩き回って怪我しち
  ゃうこともあるかもしれないけれど、その
  人がやりたいんだったら拘束しないで、見
  守りつつ柔らかいケアをしていくようにし
  ています。

🧑‍💻:人生の最期のステージなので、やりたい
  ようにやらせてあげたいっていう感じです
  か?

🙋‍♀️:そうですね。例えば最期って人間は食を
  受け付けなくなるようになっていて口が開    
  かなくなったり、嚥下しなくなったりする
  んですけど、病院だったら「治療」が提供
  できるから「胃ろう手術」したり、言語聴
  覚士による「リハビリ」を行うケースが多
  いって知り合いのソーシャルワーカーから
  聞きます。その点、特養は点滴などの「治
  療」すらできません。しかし「治療」がで
  きないからこそ、じゃあその人が食べたく
  ないっていう表示をしているんだったら、
  舐める程度にするとか、好きな飲み物を聞
  いてその飲み物を飲んで一日を終えると
  か、そのような接し方をして、最期緩やか
  に息を引き取っていくのを見守るというこ
  とをしていくんです。

🧑‍💻:これまでどのくらいの方を看取ったんで
  すか?

🙋‍♀️:私が入職した年は多かったと聞きまし
  た。これまで三年間で15名くらいですか
  ね。

🧑‍💻:看取りの時はご家族も立ち会うんです
  か?

🙋‍♀️:病院と比べてしまって恐縮なんですが、
  病院だといまだに面会制限もあって、この
  コロナ禍ってこともあって最期までガラス
  越しでしか会えないってこともあったので
  すが、ほとんどの特養が今は最期の看取り
  だねってなったら入居者とご家族が同じ空
  間で過ごせるような環境づくりをしていき
  ます。毎日通ってくる方もいますし、泊ま
  っていく方もいます。夜勤中に呼吸とかバ
  イタルを見るときに横に簡易ベッドで娘さ
  んが寝ていて「すみません」って言って
  (笑)、巡回することもありました。ご家
  族がいない方もいますし、ご兄弟もいなく
  て独り身の方もいます。それでも毎日職員
  が愛情込めてケアさせてもらったので、独
  りで亡くなるよりは顔なじみの職員が看取
  れるのはいいねっていう話は職員どうしで
  しています。

🧑‍💻:🙋‍♀️さん自身が看取りで、入居者が息を
  引き取っていく場面に立ち会ったこともあ
  るんですか?

🙋‍♀️:あります。呼吸の間隔が広くなってき
  て、そろそろってなったら休憩中の職員と
  か仕事が終わってその人を看取るために何
  時間も残っている職員もいて、みんなで囲
  んで「無理しないでね」って声をかけて体
  に触れて、ふっと息を引き取る瞬間を何回
  か体験しましたね。

🧑‍💻:「看取り」の話はこれまでも聞いてきま
  したが、人が息を引き取る瞬間に立ち会う
  のはすごい体験ですね。次回も引き続き
  「看取り」について詳しく伺っていきたい
  と思います。


        ーつづくー

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