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トラウマによる「近親感」と英国王室の陰惨ドラマ

先週末にポストで書いた、トラウマで著名なカナダ人医師ガボール・マテ(Gabor Maté)についての最新ニュースを見てびっくりした。彼は、英国王室の反逆児、あのハリー王子のトラウマ・セラピストだったようだ。普段、英国王室ネタにほとんど興味がないので、これは全く知らなかった。王子とのセラピー対談のインタビューが公開され、大きな議論をかもしだしている。

それはともかく、私は、今まで、全く、というかほとんど興味のなかったハリー王子に突然のごとく、近親感を覚えた。

前回のポストで書いた通り、私は続行中の心理セラピーで「トラウマ」の件にさしかかってから、停滞している。頭が「空っぽ」になる感覚があるからだ。セラピストは、停滞はいいことだと言ってくれたが、実のところはちょっと焦りを感じている。

この怪しげな「親近感」をしばらく考察してみた。そう言われてみれば、ハリー王子の人生はトラウマに満ちている。去る90年代、王子の実母・故ダイアナ妃の葬儀のときに映し出されていたハリー王子の齢(よわい)12歳には似合わない重苦しい表情が忘れられない(以下、右)。最近出版された暴露本で「ずっと10年以上も、泣くことができなかった」と告白しているようだ。

右:わずか12歳で実母を失う 重々しい表情

そして、その後妻となるカミラと長年、婚外情事にふけっていた父親(現チャールズ王)。その憎々しいカミラを、愛する実母の死後まもなく「母親」と呼ばなければいけなくなる。読んではいないが、暴露本では「邪悪な継母」(ウィッケッド・ステップマザー)と堂々と書いてしまったようだ。また、それが災いし、父チャールズ王が、故エリザベス女王がハリー王子に生前に贈ったイングランドのコテージを、新しい「王」としての権威を悪用して、没収するという事件が現在起こっている。これには、痛々しい限りだ。また、この件に関しては、BBCの王室PR担当者さえもチャールズ王を大ぴらに非難している。

・・・と、思わず、色々探ってしまい、ますますこの王子に親近感を感じた。そこで、気づいた。あまりにもシンボリックだからだ。繰り返すが、私は英国王室に関しては、普段は全く関心がない。自分と同じようなトラウマ専門家に相談にのってもらっている、という些細な事実だけで、全くはかけ離れた世界にすむハリー王子にここまで親近感を、つい感じてしまった、ということ。これは、実はおかしな話だ。トラウマのある状態では、人間は似たような傷をもつ人に親しみを感じてしまうようだ。それは、まさしく「歪み」だと思う。マテ医師が言った通り、私たちは「今、この瞬間を見ていない」(実は、過去の自分の傷を見て、それに反応している)、これを展開していくとつまりは「他人、さえ見ていない」ということでもないだろうか? つまり、他人は単に自分の傷、過去の自分自身の傷を反映する「鏡」であるのみ・・・。こう考えると、実は自分のトラウマが深すぎると、他人の「本来の姿」を、そのままの姿で受け入れていけるような距離感を、きちんと保っていくことができなくなってしまうのではないか。これは、子育てなどをするときにはとても重要だ。子供は「他人」ではないが、子育てをしていく上では、健康的な距離感、相手に対する尊厳、といったことがとても必要だとよく思う。

これは、トラウマに関して停滞している私にはちょっと意味のある考察だった。もしかしたら、これを認識することによって癒しがもたらされる(かも)しれない。

よく考察してみると、他人とふれあうとき、私はつい自分と似たようなタイプの人、もしくは同じような傷を持っている人に若干惹かれてしまう。これは、友人などの個人関係だけではなく、同僚や、はたまたミュージシャン、作家などについても同じ傾向がある。なんとなく「ホッとする」ためだ。しかし、客観的にみると、これはとても不健康な癖なのかもしれない。もしかしたら、このトラウマによる歪みのために、本当に自分にとって必要な人たちを妨げている可能性もある。裏返してみると、もしかすると自分に本当に必要なのは、自分と似たような傷を「持たない」人かもしれない。それより、健康的な道に誘導してくれる、トラウマの外部にいる人たち、かもしれない・・・。

・・・また、私はよく対人関係で行き詰まることも多い。

ハリー王子に話を戻すと、客観的にみると、王子とメーガン妃はどこか似ている。どちらも、トラブルのある家庭で育っている。二人とも、両親の離婚、絶縁や崩壊のある家庭背景からの出身者だ。まさしく、「傷」で惹かれあっているような二人だと思う。これを、王子と同体験のあるウィリアム王子と比較してみる。こちらは、円満な家庭で育ったキャサリン妃を選んでいる。良くも悪くも、こちらは、ハリー王子と同様なトラウマがあるにもかかわらず、反逆者にはならずに、保守的な道を選んだ兄である。こちらが、実際に、本人にとってどういう道なのかは、私たちには全くわからない。ウィリアム王子は、公的な場や、メディア上でプライベートな感情は一切語らない。

心の傷、トラウマによって私たちの選択肢にかなり歪みが生まれている、と考察するだけでも大きな進展を感じた。私の個人的な話はここでは書かないが、一般的に知られている王室のアナロジーをつかってよく考えてみた。

セラピストともっとこの件に関して話してみる。


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