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No.21 抵抗できない好奇心

 クアラルンプールの屋上で、私たちは心地よい風に吹かれながら語り合った。日本での生活、旅行の思い出、そしてこれからの夢について。希望に満ち溢れる会話の中には、未来への不安も混ざり合う。
 「ところでさあ、私たちの部屋にゴキブリが出たんだけど、みんなのとこはどう?」
あずきが、酔いで虚ろな目で問いかけた。
「今のとこ見ないですよ」
とタカシが答えた。彼の部屋は清潔そうだった。
「怖くて部屋に入れないんだけど・・・」
あずきは続けた。
「タカシ君の部屋にベットが2つあるんなら、一つ貸してくれない?私と美香で寝るから。」
「いいんですけど、僕、酔って寝たら素っ裸になるクセがあるんですよ。それでもいいなら。」
とタカシは、恥ずかしそうに言った。それに対してあずきは、少し好奇心が見え隠れしているようだった。
「まあ、それくらいならいいよ。」
とあずきは、全然気にしないという感じで応じた。

 朝日が街を照らし始めると、私はコーヒーを手に屋上で新たな1日を迎えた。荘厳なコーランが遠くまで響き渡っている。タカシがボサボサの頭で上がってきて、
「おはようございます。コーヒーってどこで貰えるんですか?」
と尋ねた。レセプションの所に置いてあることを伝えると取りに行った。
「タカシ君、私たちのもお願い。」
と、あずきは、もうタカシをアゴで使っている。
 昨夜、私たちは高地にあり涼しいキャメロンハイランドへ行くことを決め、タカシは予想通り素っ裸になってしまった。朝日が彼の一物を照らし、あずきはそれを目撃してしまった。そして、タカシは、恥ずかしそうに枕で隠したそうだ。
 私たちは、顔を見合わせて大笑いした。見られたタカシも、申し訳なさそうに笑っていた。そして、美香は見逃したことを残念がっているように見える。私は、またこの旅を楽しむことができそうだ。


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