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アルテメスト(ARTEMEST):ミラノ・サローネ 2023より、1930年代のミラネーゼの邸宅をイメージしたインテリアの展示

1. 4年ぶりの開催となったミラノ・サローネ2023


2023年4月18日から23日にかけて大々的にミラノで開催されたサローネ。

家具やインテリア用品の世界最大規模の国際見本市である。

毎年4月にミラノで開催されるのが恒例のデザインの祭典であったが、2020年は完全に中止、2021年は9月に開催、2022年は6月に開催された。

2021年と2022年については、状況を見つつ時期をずらしての開催だったわけだが、まだ渡航制限が十分には解けていなかったこともあり、来場者数も例年に比べたら少ないままであった。

2023年4月のミラノ・サローネは、2019年から4年ぶりに例年通りの4月に開催されるということもあって街は大いに盛り上がった。

ミラノ・サローネは、企業やデザインを学ぶ学生向けにミラノ郊外の会場で開催されるサローネ・デル・モービレ(Salone del Mobile)と、街中で一般の人も自由に無料で展示を開放しているフオーリ・サローネ(Fuori Salone)の大きく二つに分かれる。

どちらかというと後者の方が街の建物を利用して展示が構成されていたり、またなりよりも一般の人も入りやすかったりということで、フオーリ・サローネの方が楽しいという声もよく聞く。

またこの時期にミラノの街を歩いていると、イタリア人以外の人を本当に多く見かけた。

かくいう筆者は、学業が忙しく、ほぼサローネのブースを見ることはできなかったのだが、一つだけ、前々から気になっていたアルテメスト(ARTEMEST)というイタリアのインテリア用品の会社のブースだけ見に行くことにした。

実はこの会社のブースについては、4年前の2019年のサローネの際にも見に行っている。

その時にあまりに素敵だったので、今年はどこの会場で展示をやっているのだろうかと検索して訪問することにしたのであった。


2.アルテメスト(ARTEMEST):イタリア産のインテリア用品を扱うオンラインショップ

イタリア産の高級インテリア用品を扱う大手オンラインマーケットプレイスであるアルテメスト(ARTEMEST)。

このオンラインマーケットは、ジュエリーデザイナーのイッポリータ・ロスターニョ(Ippolita Rostagno)とマルコ・クレデンディーノ(Marco Credendino)によって2015年に立ち上げられた。

アルテメストは、イタリアのクラフトマンシップを世界にアピールするべく、家具、室内装飾、そして照明など、選りすぐりのメイド・イン・イタリーの品を取り扱っている。



(ARTEMESTの公式サイトより)

アルテメスト(ARTEMEST)の公式サイトでは、販売中の小さな食器から大きな家具まで全て見ることができ、そのあまりの種類の豊富さとセンスの良さにワクワクしてしまう。

(2023年のサローネの展示会場となった邸宅の中庭より)

次の章からはミラノ・サローネでの展示を見ていくことにしよう。



3.ラパルタメント(L’Appartamento):1930年代のミラネーゼのアパートをイメージした展示

アルテメストは、2023年のミラノ・サローネの期間中、1930年代のミラノのアパートをモチーフにした展示ラパルタメント(L'Appartamento)を一般公開した。

そこではアルテメストがそのプロダクトを扱う6つのインテリアデザインスタジオが、リビングやベッドルーム、テラスなどそれぞれの部屋を担当し、見事な展示空間を作り上げている。

展示会場であるミラノの邸宅もとてもシックな作りで、木の枠にはめられたステンドグラスがとても美しかった。

それではそれぞれの部屋を一つ一つ説明していくこととしよう。



3-1. 入り口の部屋(L'Ingresso)

まず会場に入るとすぐに、ドバイを拠点とするスタジオT.ZED Architectsによる入り口の部屋(L'Ingresso)の見事な装飾が目を引く。

T. ZED は、照明、ディテール、テクスチャーにこだわったインテリア用品や装飾を使うことによって、それぞれの顧客の理想に見合った室内空間を生み出すことを得意としているようだ。

T. ZEDの設立者であるタリク・ザハルナ(Tarik Zaharna)は、ルクセンブルクで育った後、ロンドンに移り、ロンドン大学のバートレット校(The Bartlett School of Architecture)で学位を取得した。

ヨーロッパ、北米、中東など様々な地域でプロジェクトを手がけた後、2015年にドバイでT.ZED Architectsを設立し、2020年にはルクセンブルグにまで事業を拡大した。




3-2. リビング

リビングをデザインしたのは、アイルランド・ダブリンのスタジオ キングストン・ラファティ・デザイン(Kingston Lafferty Design)である。


そこには、リビングに訪れた人がまるで旅に出かけているかのように感じられるような工夫が凝らされているという。

このスタジオは、2010年にロワザン・ラファティ(Roisin Lafferty)が設立したものであり、現在では世界中のチームと取引があるとのこと。

(よく見ると美しい天井)

このスタジオは、明確なテーマよりもクライアントの要望を一つ一つ汲み取り「空間」を生み出すことを重視しているとのこと。

壁や家具などの金色が印象的な部屋であったが、決してけばけばしさはなく、ガラスのオブジェや絵画などと調和していたのであった。


3-3. テラス(Terrazza)

イタリアでの生活に欠かせないのがテラス。

気候の良い日に外にテーブルと椅子を置けば、そこは第二の食卓となる。

朝には新聞片手にコーヒーを、昼には友人を呼んでランチを、夜にはまったりお酒を飲む場にもなるテラス。

このテラスをデザインしたのは、アメリカ・マイアミのデザインスタジオ モニミ・デザイン(MONIMI Design)である。

このデザインスタジオは、住宅や商業施設のデザインを企画するほか、カスタム家具やコレクターズアイテムの製作も手がけ、その成果は『フォーブス』(Forbes)などの雑誌でも多数紹介されている。

ここに置かれているのは、このテラスに訪れた人が外に出たことに気づかないと言ってもいいほど、外と中の境界を意識しない家具やアイテムなのである。


3-4. ダイニングルーム(La Sala da Pranzo)

さて室内に戻ると、次はダイニングルームに行き着く。

こちらをデザインしたのはアメリカ・ヒューストンを拠点に活動する
ニナ・マゴン(Nina Magon)である。


またインドにルーツを持つニナは、ジャイプルの城やデリーのコーヒーショップなどに足を運ぶうちに、そのデザインをするオブジェや建物が置かれる場所自体の特性をオリジナルのまま保つことの重要性を強く認識するようになった。

そのためにニナは、このイタリアのアパートの古くてもシックで生活に馴染むような床やドア、壁を高く評価し、これらと自身のモダンな家具の調和を心がけた。

つまり伝統的なイタリアの建物とモダンで芸術的な作品を組み合わせることで、空間全体の美しさを際立たせることを意図したのであった。



3-5. ベッドルーム(La Camera da Letto)

ベッドルームをデザインしたのは、ドバイを拠点に活動するデザインスタジオ スタイルド・ハビタット(Styled Habitat)である。

スタイルド・ハビタットは、1930年代のアパートというテーマをもとに空間を作る上で、1922年のオスマン帝国の崩壊という背景に着目した。

13世紀末から数百年にわたり繁栄した巨大な帝国が崩壊した上に、空の旅が普及していった1920年代において、ヨーロッパ諸国にとって極東や中東のスタイルはより身近なものとなっていった。

このベッドルームでも、テーブルや皿の柄など細部にエキゾチックなデザインが取り入れられると同時に、ロマンチックなイタリアの建物の良さも活かした空間作りが試みられている。

ハビタットは、歴史的背景、場所、建築をまず尊重して初めて、その限界を乗り越え、既存のルールに挑戦することができると考えているのである。





3-6. 廊下と書斎(Il Corridoio & lo Studio)

最後に紹介するのはパリ在住のデザイナー、 アンヌ・ソフィー・パイユレ(Anne-Sophie Pailleret)が手がけた廊下と書斎である。

アンヌ・ソフィーは、快適さとエレガンスの完璧なバランスを追求することを念頭に置き、部屋の装飾の細部にまでこだわり、余分なものがないように気を配った。

特に光は暖かさと快適さを感じられるようにコントロールされており、いずれも伝統的な室内の空間にマッチする照明器具がここでは採用されている。



以上、アルテメストの6つのブースを紹介した。

普段はなかなかアクセスすることができない素敵なイタリアの邸宅の中に入ることができて、また中の素敵な家具を実際に目にすることができた。

いずれも凝りすぎたデザインというわけではなく、あくまでも生活に馴染むデザインを採用しているということがとても印象的であった。

特にテラスは「こんな感じで友人を招いたら楽しいだろうな」という雰囲気であり、リーズナブルな食器から少しずつ揃えたいと思うような展示だった。

結局のこの邸宅しかサローネのブースはまわらなかったが良いものを見ることができて満足であった。


ラパルタメント・バイ・アルテメスト(L'Appartamento by Artemest)

住所:Via Cesare Correnti 14, 20123, Milano, Italy

展示期間:2023年4月18日から23日まで

公式ホームページ:artemest.com

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