セレッティ(SELETTI):「他にはない」がここにある、イタリア発のポップな生活雑貨ブランド
ミラノの中でもお洒落なお店が多く集まるポルタ・ガリバルディ(Porta Garibaldi)エリア。
特にコルソ・コモ(Corso Como)やコルソ・ガリバルディ(Corso Garibaldi)沿いには、飲食店や雑貨店、インテリアショップなどいくつも素敵なお店が並んでいる。
その中でも、カラフルな外観で人目を引くのは、生活雑貨・インテリア用品を生み出すデザイン会社セレッティ(Seletti)である。
今回のnoteでは、世界の注目を集めるイタリア発のブランド、セレッティを紹介していきたい。
1. 1964年創業、セレッティ(Seletti)の歴史
1964年、セレッティ(Seletti)は、マントヴァのチコニャラ(Cicognara, Mantova)にてロマーノ・セレッティ(Romano Seletti)とマリア・セレッティ(Maria Seletti)によって革新的なプロジェクトデザインを行う会社として創業した。
この創業者のセレッティ夫妻は、国際的なビジネスのエキスパートであるルイジ・ゴリオ(Luigi Goglio)の支援を得て、中国、タイ、インドなどのアジアとのビジネス関係を速やかに構築した。
1972年時点で創業者のロマーノは、将来、生産がアジアに集中することを見越して、アジアの会社と手を結び、輸入ビジネスを開始した。
アジアでのビジネスを通じて、アジアの市場や流行を取り入れつつ拡大していったセレッティ社。
1980年代の終わりには、創業者の息子である17歳のステファノ(Stefano Seletti)も加わったセレッティ社は、ハイパーマーケットにも参入し、クライアントに対してアドホックな、つまりその都度クライアントの要望に応えた商品を供給し始めた。
1990年代からセレッティ社を継いだ2代目のステファノ・セレッティ(Stefano Seletti)は、ローマのローカルな市場で売られるようなミルクポットからニューヨークのMoMAのグッズまで、幅広い商品を手がけるようになっていった。
ステファノは、金属やガラス、磁器など様々な素材を使って、知的好奇心や芸術的なオリジナリティ、そして日常生活とを融合させるという願望のもと、新しい製品作りに取り組んだ。
このようにセレッティ社のさらなる発展のために挑戦を恐れなかったステファノは、大衆的でありながら、創造性と芸術性の高い商品、それでいて民主的な価格の商品を作ることを目指した。
2. 様々なアーティストとのコラボレーション
セレッティ社は、様々なアーティストとコラボレーションして魅力的かつ独創的な商品を生み出していることでも有名である。
なかなか他のお店では見ないような不思議なデザインに惹かれて、ミラノのセレッティのショップについ入ってみたという人もいるであろう。
ここではセレッティとコラボレーションしたアーティストを何人か取り上げていくこととしよう。
この写真の上の方に写っているように、1976年イタリア生まれのマルカントニオ・ライモンディ・マレルバ(Marcantonio Raimondi Malerba)は、輸送用の木箱を使い牛、豚、ガチョウといった動物の形をした家具を作った。
またネズミなどの動物がランプを持った作品もマルカントニオの作品である。
さらにこちらの金継ぎ(Kintsugi)シリーズも、マルカントニオが手がけたものである。
金継ぎと言ってもイタリア人のマルカントニオが作っているので、Made in Italyの金継ぎである。
海外では日本の金継ぎの認知度が意外にも高く、アートや文化に関心がある人ならば「金継ぎ」(Kintsugi)という日本語の単語の意味を知っているくらいである。
ここでの「金継ぎ」は修復というよりも、フランケンシュタインのように別々のものが組み合わされて新たなデザインを生むために使われているのである。
一方で、こちらの二つのタイプのデザインが融合したテーブルウェアシリーズ、ハイブリッド(Hybrid)もセレッティの人気作品である。
CTRLZAKというデザイン会社が手がけたハイブリッドシリーズは、西洋と東洋、古代と近代などといった一見すると相反するモチーフのものが一つの食器の中で合わさっているなんともユニークなデザインである。
照明器具は、セレッティ社の商品の中でも、好調な売れ行きを誇っている。
文字をそのまま照明にしたシリーズのほか、Studio Jobとコラボレーションして作られたバナナランプはベストセラーとのことである。
その他にも、ファッションブランド ディーゼル(Diesel)の創業者レンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)とコラボレーションして生まれた、歯車やスパナ、ボルトをモチーフにしたテーブルウェアの「マシン・コレクション」や、惑星や宇宙服をモチーフにした「コズミック・ダイナー」(Cosmic Diner)も遊び心満載の作品である。
ここまでセレッティ社とコラボレーションした多くのデザイナーやアーティストを紹介してきた。
セレッティ社は、才能ある若いアーティストとのコラボレーションを積極的に行なっていく意思を表明している。
この記事の最後に、セレッティ社と協調したデザイナーやアーティストの中でも最も影響力があると言っても過言ではないマウリツィオ・カテランに触れることにしよう。
3. マウリツィオ・カテランとのコラボレーション、トイレットペーパーシリーズ
セレッティ社とコラボレーションしたアーティストの中でも、パドヴァ生まれのコンセプチュアル・アーティスト マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan;1960)について触れないわけにはいかないであろう。
セレッティは、マウリツィオ・カテランとピエルパオロ・フェラーリ(Pierpaolo Ferrari)が年に2回刊行する雑誌『トイレットペーパー』(Toiletpaper)ともコラボレーションしている。
ほぼ独学でアートの世界に飛び込んだマウリツィオ・カテランは、奇抜な表現を用いつつ、時には強い政治的メッセージを含む作品を製作するアーティストとして常に注目を集めている。
カテランの作品は、世界各地の美術館で展示され、その作品は莫大な金額で落札されている。
カテラン自身は、斜に構えて世の中を見る皮肉屋、つまりカウンター・カルチャーの申し子的な立ち位置で作品を製作していることになっているが、その作品は、一部の人しかアクセスできないような高級なものとなってしまっている点も否めない。
その点でここセレッティで販売されるカテランのコラボレーション作品は、意外にもリーズナブルでこのホーローのマグカップなどは30 ユーロと「買える」値段である。
つまり美術館に展示されるカテランの作品の100万の1くらいの価格でカテランのアートを購入することができるのである。
ここで主張されるアートとは、日常に溶け込むものであり、
ステファノ・セレッティが「すべてのものに美学を与えることができる」と主張するように、ライフスタイルをユニークかつ好奇心に満ちたものにしてくれるアイテムがここにはあるのである。
参考:
・「1600万円の「バナナ」に“事件”。アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2019で起きたこと」『美術手帖』(2019年12月10日付記事)
以上、イタリアに来たならば一度は覗いてみたいショップ、セレッティについて駆け足になったが紹介した。
セレッティで扱われている商品の値段はピンキリではあるものの、中には10ユーロ台の食器など意外にもお手頃なものも多い。
またミラノの店舗の入り口には、無料で持ち帰ることができるカードが設置されている。
アートを日常に、そう言われてもなかなか実現するのは難しいと思っている人も多いとは思うが、セレッティはそれを叶えてくれるお店である。
リラックスして蚤の市を覗きに来るような感覚でお店に訪れることをおすすめしたい。
セレッティ ミラノ店(Seletti Store Milano)
住所:Corso Garibaldi, 117, 20121 Milano, Italty
営業時間:11:00-13:00/ 13:30-19:30(月曜定休)
公式ホームページ:seletti.it
※フィレンツェにも直営店があるほか、イタリアの百貨店リナシェンテなど、世界各地に取扱店あり(2024年現在)。
参考:
・「Seletti, gli antiaccademici pirati del design」『Il Giornale dell'Arte』(2022年2月4日付記事)
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