レシデンツ(Residence):ミュンヘン・バイエルン公国を統治した君主たちの邸宅
ミュンヘンは、ドイツ・バイエルン州の州都。
今回のnoteは、2019年1月に筆者がミュンヘンのレシデンツ(Residence)訪れた時の写真をもとに書いていく。
ミュンヘンのレシデンツは、ミュンヘンを統治したバイエルン公国(1508-1918)の君主たちの邸宅であり、政治の場であった。
1385年、街の北東の一角に最初の城が建てられてから、君主たちによってレシデンツは増築されていった。
ミュンヘンの歴史は古いが、特に繁栄したのは、バイエルン公国の首都、南ドイツの経済・文化の中心地として発展した16世紀以降のことである。
また宗教改革時には、イエズス会、カトリックの拠点になった。
ミュンヘンは、19世紀はナポレオンの支配下に、20世紀には、右翼の拠点となった。
つまりナチス、ヒトラーの影響が強かったのもここミュンヘンであったのである。
そんなミュンヘンのレシデンツは、1920年以降、博物館として一般公開された。
第二次世界大戦期にレシデンツの大部分が、破壊されたが、1945年以降、徐々に復旧していった。
今日、レジデンツの敷地内には、キュビリエ劇場(Cuvilliés Theatre)、レシデンツ博物館(Residence Museum)、宝物館(Treasury)、庭園(Court Garden)、ブロンズ・ホール(Bronz Halls)などがある。
特にレジデンツ博物館と宝物館では、選帝侯やバイエルン公が集めた秘宝を見ることができる。
またそれらのコレクションや建物は、数世紀にわたって集められてきたあるいは増築されてきたために、ルネサンス、バロックやロココ、新古典主義など、様々な時代のものがひとところに集まっているのも特徴的である。
以下、特にレシデンツ博物館の見どころを中心に紹介を進めよう。
まずこちらは、グロット宮殿(Grotto Courtyard)。
貝殻などを寄せ集めてできた宮殿であり、エキゾチックな雰囲気が漂っている。
まるでフランスのシュバルの理想宮を思わせる造りである。
またこちらは、レシデンツの見所の一つであるアンティクヴァリウム(Antiquarium)。
こちらは、16世紀に建設されたルネサンス様式のホールであり、天井にまで美しい装飾が施されている。
天井に描かれる天使とマリアの絵が、とても神々しい。
続いて進んでいくと、コート・ガーデンとカロリーネの部屋(Court Garden and Charlotte Rooms)に行き着く。
バイエルン公マクシミリアン1世(Maximilian I;1573-1651)の時代にまでさかのぼる来訪者のためのスペースは、1814年、バイエルン王マクシミリアン1世(Maximilian I Joseph;1756-1825)の娘カロリーネ・アウグステ(Charlotte Auguste;1792-1873)のための部屋として作り変えられた。
王女用の部屋ということで、どれも少し小ぶりなサイズで可愛いらしいが、家具、絵画、タペストリー、宝物などなど、そのどの一つをとっても、豪華である。
それは19世紀初めの王侯貴族の生活を物語るものともなっている。
鮮やかなエメラルドグリーンで統一された部屋。
天使の顔が愛らしい家具。
壁に掛けられていた絵。
チョコレートの包み紙にそのままなりそうと言った表現が正しいかどうか分からないが、そのように華やかな絵たちである。
続いてインペリアル・ホールと4つのホワイト・ハウス・ホール(Imperial Hall and Four White Horses Hall)。
バロック様式のこちらの部屋は、先述のバイエルン公マクシミリアン1世(Maximilian I;1573-1651)の時代に建てられたものである。
同じくこの時代には、レシデンツ内の重要となる部屋が次々と作られていた。
ところが1944年、第二次世界大戦中にこれらの部屋は破壊されたが、徐々に復旧作業が続けられた結果、1985年には、元どおりとなった。
金とブルーの色のコントラストが見事なライヒェ・カベレ(Reiche Kapelle)。
ライヒェ・カベレは、マクシミリアン1世の専用礼拝堂として使われていた。
青と金の美しい天井は、植物がモチーフになっており、とてもきらびやかである。
鮮やかな色の緑のギャラリー(Green Gallery)。
2011年に修復が完了したばかりの部屋には、絵画と鏡が展示されている。
その他、精巧に作られた調度品の数々。
実はこの辺はメモを取るのを失念してしまい後悔している。
宝石で彩られた十字架。
貝殻で作られたチェスボードや細やかな細工が施されたカラトリーなどなど。
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以上、レシデンツの魅力を駆け足ながら紹介した。
まだまだ見るべきところがたくさんあったかもしれないが、どのブースも豪華できちんと整備されている印象であった。
最後に、ミュンヘンを統治したバイエルン公国(1508-1918)について少し触れておこう。
現在のドイツがある地域は、16世紀当時はまとまった国家というものがなく、選帝侯や領邦君主がそれぞれの領地をそれぞれのルールで統治しているというものであった。
そのためこの時代の統治形態を指して、歴史学の分野では、礫岩国家という言葉で表現されることが多い。
それは、様々な政体(state)が、礫岩、コングロマリットのように、様々な色の石が組み合わさっているというものである。
神聖ローマ皇帝をはじめとして、様々な諸侯や君主が登場するため、16-18世紀の歴史を理解するのは、混乱がつきものである。
この礫岩の一部となっている政体が、どのような統治形態を持ち、他の政体にどのような影響を与えていたのか、このようなことを読み解くのが現代の歴史家の仕事なのである。
参考:
古谷大輔・近藤和彦編『礫岩のようなヨーロッパ』山川出版社、2016年。
ミュンヘン・レシデンツ(Munich Residence/ Residence Museum Treasury Cuvillies Theatre)
住所:Residenzstraße 1, 80333 München, Germany
開館時間:9:00-18:00(4月1日〜10月14日)、10:00-17:00(10月15日〜3月31日)
※独、仏、英、伊、西、露語のオーディオガイドあり。
公式ホームページ:residenz-muenchen
入場料金:
《レシデンツ博物館》9ユーロ · 8ユーロ(割引料金)
《宝物館》9ユーロ · 8ユーロ(割引料金)
《レシデンツ博物館+宝物館》14ユーロ・12ユーロ(割引料金)
《キュビリエ劇場》5ユーロ・4ユーロ(割引料金)
《レシデンツ博物館+宝物館+キュビリエ劇場》
17ユーロ・14.5ユーロ(割引料金)
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