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カーザ・ガリンベルティ(Casa Galimberti):1905年建設、見事なリバティ様式のミラノの名所

ミラノのポルタ・ヴェネツィア駅(Porta Venezia)近くは、ミラノの中でもアール・ヌーヴォー様式の建物を比較的多く目にすることができる印象である。

その中でもカーザ・ガリンベルティ(Casa Galimberti)という1905年に建てられた瀟洒な建物は、植物モチーフの装飾にセラミックでできた壁の絵が美しく、一際目立っている。

今回のnoteでは、ミラノの隠れた名所カーザ・ガリンベルティについて書いていきたい。


1. イタリアのアール・ヌーヴォー運動 リバティ

リバティ様式の傑作と名高いカーザ・ガリンベルティの説明に入る前に、まずリバティ様式とはどんなものかについて説明を進めていきたい。

リバティ(Liberty)とも呼ばれるアール・ヌーヴォー(Art Nouveau)は、19世紀末にヨーロッパで生まれ、20世紀初頭まで世界中に広まった芸術・建築の運動である。

その名は、家具、テキスタイル、装飾美術品を扱うロンドンのブティック リバティ&カンパニー(Liberty & Co.)がこのスタイルを積極的に用いたことに由来している。

この運動は、それまでのスタイルとの決別を意味し、近代化の要求に応える全く異なる新しい美的言語を創造することを目指した。


(  W. Baedeker, Ex libris C. Schur, cm 14×7.5, Collezione Ivan Matteo Lombardo)

アール・ヌーヴォーは、絵画や音楽などの大芸術(arti maggiori)と、家具製作やガラス細工、織物などの小芸術(arti minori)を同一視することで、建築、デザイン、ファッション、グラフィックなど、さまざまな芸術分野を横断する運動である。

自然や草花、植物、動物の形に着想を得て、流動的でしなやかなラインが多用されたほか、特に建築の分野では、ガラス、鍛鉄、陶器、木材などの異なる素材の組み合わせが特徴として見られる。

またアール・ヌーヴォーを支持する芸術家たちは、優美なだけではなく官能的で洗練された女性を作品の主題に選び、その力強さを描いたのであった。



2. カーザ・ガリンベルティの歴史

ミラノが誇るリバティ(アール・ヌーヴォー)様式の傑作と名高いカーザ・ガリンベルティ。

もともとカーザ・ガリンベルディの建物は、1861年にミラノの公共交通機関である馬車鉄道を管理するために、ミラノ・モンツァ間の馬車鉄道を営業していた会社ソチエタ・アノニマ・デッリ・オムニバス(Società Anonima degli Omnibus;SAO、 1861年創業)の所有地の一部を利用して建てられたものであった。

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1900年、ミラノ市は、ミラノで初の電気で動くトラムを導入することを決定し、電気会社エジソン(Edison)がこの事業を担うことになった。

その結果、280頭の馬を収容していたもともとの建物は、厩舎として使われなくなり、土地は売却され、新しい建物が建てられることとなった。

こうしてカーザ・ガリンベルティ(Casa Galimberti )は、1903年から1905年にかけてマルピーギ通り3番(via Malpighi 3)に建てられることになった。

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ガリンベルティ家は建築家のジョヴァンニ・バッティスタ・ボッジ(Giovanni Battista Bossi)にその建築を依頼した。

この頃、ガリンベルティ家は、また別の建築家アルフレッド・カンパニーニ(Alfredo Campanini)に依頼してカーザ・カンパニーニ(Casa Campanini)いずれもミラノのリバティ様式の建築の最高傑作として有名である。

現在カーザ・ガリンベルティは、地上階に店舗や公共施設、上の階は住居という造りになっている。

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1990年代に入ると、エントランスホールなど、建物の一部が修復されることになった。

さらに2018年3月には、ローマのスペイン階段をはじめとするイタリア各地の建築物の修復を手がけた実績を持つリーヴァ社(RIVA)が中心となって、ファサードの修復が行われた。

このようにしてカーザ・ガインベルディは、その鮮やかな姿を保っているのであり、道ゆく人からの注目を集めているのである。


3. ミラノが誇るリバティ様式の傑作の特徴

それではカーザ・ガリンベルディの特徴をいくつか触れることにしよう。

およそ170平方メートルにもなるファサードは、建築家ボッジのデザインをもとにセラミックで作られた装飾で覆われている。

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その人物の部分の絵付けは、フェルディナンド・ブランビッラ(Ferdinando Brambilla)が担当し、草木などの装飾部分をピオ・ピンザウティ(Pio Pinzauti )が手がけた。

ファサード全体には、ニンフのように自由で優美な女性が描かれるほか、エキゾチックな魅力を持つ人々も描かれており、彼らは実際にバルコニーに寄りかかっているかのようでもある。

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また各階には、まるで建物に絡みつくツタのような鉄骨のバルコニーがある。

その力強くしなやかな線は、このファサードをより立体的なものに魅せているのである。

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ミラノには数多くの歴史的建造物や美術館があるが、たまにこのカーザ・ガリンベルディのような街中の隠れた名所がある。

古い建物が数多く残るミラノにてこうしたスポットを散策していきたいものである。



カーザ・ガリンベルティ(Casa Galimberti)

住所:Via Marcello Malpighi, 3, 20129 Milano, Italy

公式ホームページ:lombardiabeniculturali.it


参考:
「Casa Galimberti Milano: lo stile liberty migliore di Milano」『Unitre Milano』(2020年8月3日付記事)

「Il Liberty a Milano: non solo Casa Galimberti e Porta Venezia」『italo blog』

「イタリアのアール・ヌーヴォー、フィレンツェのリバティ様式建築探訪」『Medium』(2019年1月17日付記事)


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