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ヴァチカン美術館(Musei Vaticani)vol. 5:ミケランジェロの最高傑作、システィーナ礼拝堂『最後の審判』

1. システィーナ礼拝堂(Capella Sistina)

いよいよヴァチカン美術館最大の目玉といっても差し支えないシスティーナ礼拝堂(Capella Sistina)を紹介する。

ここにはミケランジェロの大作である『最後の審判』が描かれているが、ヴァチカン美術館の中でもこの礼拝堂のみ写真撮影禁止であった。

そのためこの章は、美術館の公式ショップで購入したポストカードを撮影したものをもとに説明を進める。

システィーナ礼拝堂の名前は、この礼拝堂の修復を手掛けたデッラ・ローヴェレ家出身の教皇シクストゥス4世(Sixtus IV;治世 1471-1484)に由来している。

シクストゥス4世は、ペルジーノ(Pietro Perugino)やボッティチェッリ(Botticelli)、ギルランダイオ(Ghirlandaio)、ロッセッリ(Rosselli)などの芸術家たちに礼拝堂の装飾を依頼した。

 1483年8月15日、聖母の被昇天の日にシクストゥス4世は、この礼拝堂を聖別した。

システィーナ

時は流れ、シクストゥス4世の甥である教皇ユリウス2世(Julius II;治世1503-1513)の時代、礼拝堂には新たな天井画が描かれることとなった。

こうして1508年、ミケランジェロ(Michelangelo Buonarroti)にこの偉大なプロジェクトが託されることとなった。

1512年、天井画は完成し、その年の11月1日(諸聖人の日)にユリウス2世は、その完成を祝った。

天井画

(ポストカードをスキャンしたもの)

この天井画には、天地創造から楽園追放まで『創世記』のエピソードが描かれている。

天井画3

(ポストカードをスキャンしたもの)

天井画2


時代が下り、1533年末、メディチ家出身の教皇クレメンス7世(Clement VII;在位 1523-1534)は、今度は壁画の制作をミケランジェロに命じた。

この任務は、15世紀にペルジーノによって製作されたフレスコ画の上に、ミケランジェロの作品が描かれることを意味していた。

1536年から1541年にかけて、ミケランジェロはこの巨大な壁画の製作に取り組んだ。

システィーナ礼拝堂3

(ポストカードをスキャンしたもの)

ミケランジェロの最高傑作ともされる『最後の審判』には、完成後も何度か修復作業が施されたが、1979年から1999年にかけては大々的な修復が行われた。

ヴァチカン10

またシスティーナ礼拝堂は、教皇を選ぶ選挙であるコンクラーヴェの会場としても使わている。

そのために教皇ヨハネ・パウロ2世(Giovanni Paolo II;在位 1978-2005)は次のように述べている:「システィーナ礼拝堂は、それぞれの教皇にとって、その人生の特別な日の記憶を伝えてくれる場所である。」

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写真撮影厳禁のシスティーナ礼拝堂。

ミケランジェロはどのような思いでこの巨大な作品に向き合ったのか、また後世の人々はどのような思想を持ってこの作品を批判あるいは賞賛したのか。

そのようなことを思いながら、500年の時を越えてその魂を訴えてくる作品を呆然と見上げた。

やはりこの礼拝堂は、写真ではなく自分の目で見た方が良いのであろう。




2. 請願の間(Sala degli Indirizzi)

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システィーナ礼拝堂を抜けて、バチカン図書館へと続く通路の途中にあるこの部屋。

この部屋は、ピウス7世(Pius VII;在位 1800-1821)によってその図書館の本を収める部屋として使われていたが、グレゴリウス16世(Gregorius XVIl;在位1831-1846)の時代になると、初期および古代末期のキリスト教の貴重なコレクションを収める部屋の役割を果たすようになっていた。

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後にそれらのコレクションは絵画館の方へ移され、現在ここには、16世紀以降の銀食器や象牙、ほうろう、礼服、聖餐杯など様々なものが展示されている。

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3. パピルスの間(Sala dei Papiri)

このエリアからヴァチカン図書館となる。

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このパピルスの間の名前は、6世紀から9世紀のものと想定されるラベンナの教会の文書に由来している。

この文書は、かつてこの部屋に展示されていたが、現在展示されているものはレプリカである。

また部屋の装飾は、教皇クレメンス14世とピウス6世の下で1771年から1775年にかけて施された。

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 写真には映っていないが、ショーケースにはジャン・ロレンツォ・ベッリーニ(Gian Lorenzo Bernini)とアレッサンドロ・アルガルディ(Alessandro Algardi)が手がけたテラコッタが展示されている。



4. キリスト教美術館(Museo Cristiano)

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1757年10月4日、教皇ベネディクトゥス14世(Benedict XIV;治世 1740-1758)はヴァチカン内にキリスト教美術館を作ることを決定した。


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こうしてヴェローナの古物研究者であるフランチェスコ・ヴェットーリ(Francesco Vettori;1692-1770)の指揮のもと巨大なコレクションがここに収められることになった。

この美術館は、キリスト教信仰と文化にまつわる遺物を今に伝えるために構成されている。

ヴェットーリは、関連する遺物や作品を一つ一つのカラフルなキャビネットの中に収めるという展示方法を取った。

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反射して見にくいものもあるが、3-4世紀のカタコンベから出土した作品がキャビネットに収められている。

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コレクションの拡大に伴い、先ほど紹介したパピルスの部屋や請願の間にもそれらの作品が展示されるようになっていった。

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キャビネットに描かれた可愛らしい絵。

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この部屋を抜けると豪華なミュージアムショップに行き着く。

ポストカードはここで購入した。

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ミュージアムショップを出ると、キアラモンティ美術館とブラッチョ・ヌオーヴォを通過していったん美術館の外に出る。

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ここまで鑑賞しただけでもだいぶ体力を使ったが、まだまだ絵画館(Pinacoteca)が残っている。

ヴァチカン美術館特集の中でも絵画館が最後の施設となるので、今しばらくお付き合いいただきたい。

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ヴァチカン美術館(Musei Vaticani)

住所:00120 Città del Vaticano


開館時間:8:30-16:30

入場料:17ユーロ(一般料金)、8ユーロ(割引料金)

公式ホームページ:museivaticani.va

(写真・文責:増永菜生 @nao_masunaga



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