見出し画像

ローマ名物マリトッツォの美味しい歴史:ミラノやローマで購入できるお店も紹介

2021年春現在、マリトッツォ(Maritozzo)を見ない日はないというくらい、店頭やソーシャル・メディア上ではマリトッツォ旋風が巻き起こっているように感じる。

今回のnoteでは、話題のマリトッツォの歴史とミラノ・ローマでマリトッツォを購入できるお店を紹介していきたい。


1. マリトッツォの歴史:古代ローマより、愛を運ぶお菓子

水、小麦粉、ふくらし粉、砂糖、牛乳、卵、バター、オイル。

実にシンプルなマリトッツォの原材料。

そんなマリトッツォの歴史はとても古く、その起源は古代ローマにまで遡るという。

その頃は、外で働く夫のために妻が、レーズンや蜂蜜など栄養たっぷりの材料を入れて焼いたパンのことをマリトッツォと呼んでいたとのこと。

画像30

(2021年3月、ローマのお店にて撮影。素朴な形のマリトッツォ)

さらに時代が下り中世になると、このレーズン蜂蜜パンは、四旬節の時期にこっそりと食べられるデザートという位置付けを得るようになった。

中世のマリトッツォは、労働の疲れを癒すずっしりとしたパンというよりも、レーズンやドライフルーツ、松の実などが入ったより小ぶりなサイズなケーキであった。

またマリトッツォは、次の二つのシチュエーションでもよく食べられるようになったという。

一つは、3月の第一金曜日、女性が婚約者の男性に、中に指輪か金のアクセサリーを入れて、砂糖でデコレーションしたマリトッツォを送るというもの。

もう一つは、夫を探している女性たちが、その村の男性に自分の作ったマリトッツォをプレゼントするというもの。

さらにその男性は、受け取ったものの中から一番美味しいマリトッツォを作った女性を花嫁に選ぶことになっていたとのこと。


画像53

(2021年3月、ローマのお店にて撮影)

いくつもの由来や伝統を持つマリトッツォであるが、情愛や甘い約束などと言った幸せなイメージと結びついたお菓子となって今に伝わることになったのである。

このマリトッツォは元々ラツィオ地方のお菓子であったが、19世紀末になるとマルケ地方、さらに中部・南部イタリアへと広まっていった。

さらにマリトッツォは、地域によってカルボニャーノ、マリテッリ、パンマリティなどと言った異名も持つようになっていた。

現在のローマのマリトッツォは、レーズンなしの柔らかいパンにフレッシュで滑らかなホイップクリームが詰まっているという、私たちも見慣れた形のものである。

このように生クリームたっぷりの伝統的なマリトッツォのほか、ブッラータやトマト、サーモン、サラダなどの具がのせられたおかず系マリトッツォも存在するとのこと。

マリトッツォ

(ミラノのヒュッゲ(hygee)より、サーモンのマリトッツォ)


参考:


実は毎年12月2日はマリトッツォの日ということで、人々はマリトッツォを食べて楽しむとのこと。

ソーシャルメディアでも #maritozzoday のタグが盛り上がっているらしい。

以上、マリトッツォの歴史をざっくり紹介したが、次の章からはミラノとローマでマリトッツォを購入できるお店を紹介していきたい。



2. ミラノでマリトッツォを購入できるお店を紹介

2-1. イジニオ・マッサーリ(Iginio Massari)

ドゥオーモ近くの人気店のこちらは、ブレシア発のパティスリーのミラノの店舗である。

画像1

参考:



画像2

カラフルな一口サイズのパスティチーノやマカロンの種類がとにかく多いのが、お店の特徴である。

画像3

普通サイズのケーキも各種取り扱っているがどれも美味しそう。

画像4

画像5


いつも選ぶのに迷うパスティチーノ、1つ1.5ユーロ。

画像6

そんなイジニオ・マッサーリのマリトッツォはシンプルで綺麗なフォルムである。

値段は4ユーロ。

画像8

早速マリトッツォを家に持ち帰ったのだが、ついでにパスティチーノ1.5ユーロとカフェ1.2ユーロもテイクアウトして広場で楽しんだ。

画像7

家に持ち帰り、包装から出したマリトッツォ。

画像24

お店のロゴ入りのチョコレートがのせられている他は、ふんわり生地に生クリームが詰め込まれており、シュガーパウダーがほんのりとふりかけられている。

画像25

画像26

家に持ち帰るまでに少ししぼんでしまったが、それにしても綺麗な生クリームの断面である。

画像27

試しに割ってみると、奥の方にバニラビーンズの粒が見えるカスタードクリームが入っていた。

画像28

こちらのお店のイートインスペースは、結構狭いので、ドゥオーモ近くの広場で食べるのも良いかもしれない。


イジニオ・マッサーリ(Iginio Massari)

住所:Via Marconi 4/ Piazza Diaz corner, 20122 Milan, Italy


公式ホームページ:iginiomassari.it

(オンランインショップでは主に焼き菓子も扱っている)

営業時間:7:30-20:00(月曜から金曜)、8:00-20:00(土曜)、8:30 - 20:00(日曜)



2-2. ジェルソミーナ(Gelsomina)

レプブリカ駅(Reppublica)近くのカフェレストラン。

インテリアや食器が可愛いので、ついついカメラを向けてしまう。

画像9

筆者の中国人の友人が「ここのマリトッツォが美味しい」と言っていたので期待大である。


画像10

ノーマルなマリトッツォの他、カスタードクリームが入っているものもあるとのこと。

画像11

普通サイズのムースやタルトも魅力的。

画像12

ゼリーキャンディーのディスプレイなど、いちいち可愛らしい。

画像13


この日はテイクアウトし、近くの公園で友人とおやつを食べた。

半分こしたマリトッツォは、クリームと生地のバランスがちょうどよかった。

ついでに頼んだパスティチーノのムースやチョコがのっているミニタルト生地も、バターの風味が豊かでとても美味しかった。

このお店のお菓子は間違いないと思っている。

画像14



参考:


ジェルソミーナ(Gelsomina)

住所:Via Carlo Tenca 5, 20124, Milano, Italy

営業時間:8:00-19:30(月曜から金曜)、8:30-19:30(土曜日曜)

公式ホームページ:pasticceria gelsomina



2-3. コヴァ(Cova)

こちらのnoteでも何度か登場しているミラノ最古のカフェであるコヴァ(Cova)。

画像15

こちらでもマリトッツォが販売されている。

たまたま訪れた時にはピスタチオ味4.5ユーロしか並んでいなかったのだが、ひょっとしたらプレーンもあるのかもしれない。

画像16


家まで持ち帰ったピスタチオ味のマリトッツォ。

画像20

かなりしっかりした箱に入っている。

エコではないかもしれないけど、マリトッツォのような繊細なお菓子を持ち運ぶにはとてもありがたいサービス。

画像21

早速お皿の上に出してみた。

画像17

表面にはピスタチオソースと砕いたピスタチオ、さらにコヴァのロゴ入りのチョコレートプレートがのっている。

画像18

持ち運び時に少し崩れてしまったが、こちらのみっちり生クリームが詰められている。

画像21

画像22

シェアするためにナイフで割ってみると、中から濃厚なピスタチオクリームが!

画像23

マリトッツォというよりも、ピスタチオ菓子レビューのようになってしまったが、ちょっと高いだけの理由が分かる、高級なコヴァのマリトッツォであった。


参考:


コヴァ(Cova)

住所: Via Monte Napoleone 8, 20121, Milan, Italy

電話: +39 02 7600 5599

営業時間: 7:45-20:30(月曜から土曜日)、9:30-19:30(日曜日)

公式ホームページ: pasticceriacova.com



3. ローマでマリトッツォを購入できるお店を紹介

本章では、2021年3月、ローマに史料調査に訪れた際に立ち寄ったお店の中からマリトッツォを購入できるお店を紹介していく。


3-1. パスティチェリア・レーゴリ(Pasticceria Regoli)

こちらはローマに行く前に友人に教えてもらったマリトッツォで有名なお店。

創業は1916年と、100年以上続く老舗の一族経営のお店である。




画像31

筆者が訪れた平日朝、店内に入ることができる人数を制限していたのかもしれないが、外に数人の行列ができていた。

お店の人と話す様子を見ると常連さんのようであった。

画像32

現在店を切り盛りするのは、カルロ・レーゴリとラウラ・レーゴリ夫妻である。

画像34

朝食の定番の甘いパンの種類も豊富。


このお店の名物、マリトッツォ。

店内を見渡すとこちらを食べている人が多かった。

画像35

普通サイズのものは2.5ユーロ。

画像36

ミニサイズは1.5ユーロ。

素朴な形だが、ミラノの凝ったマリトッツォに比べると圧倒的に安い。

画像37

早速ミニサイズ1.5ユーロを食べてみた。

画像38

ミニサイズと言ってもクリームはたっぷりぽってり詰まっており、食べ応え十分である。

1ユーロのエスプレッソを飲みつつ、苦味とミルク感を交互に味わうのが良い。

画像39


そのほか、クアレジマーリ(Quaresimali;quaresima「四旬節」)という名の付いた生地にナッツが練り込まれたマリトッツォも。

こちらの方が、ナッツが入っている分、中世に作られていたマリトッツォの形に近いかもしれない。

画像33


次から次へと人が訪れる人気店であった。

画像40

画像41



パスティチェリア・レーゴリ(Pasticceria Regoli)

住所:Via dello Statuto, 60, 00185 Roma, Italy

営業時間:6:30-20:00(火曜定休)

公式ホームページ:pasticceriaregoli.com



3-2. ロショーリ・カフェ・パスティチェリア(Roscioli Caffè Pasticceria)

こちらは、イタリアの厳正された食材を販売する食品店やレストランを展開するロショーリ(Roscioli)のカフェ。

1824年にローマで創業された老舗の企業である。

画像43

こちらでもマリトッツォ3.5ユーロが販売されていた。

画像44

マリトッツォの他、いろいろな焼き菓子やパンも。

画像45

画像46

年季の入ったショーケースには傷が入っており見にくいかもしれないが、定番のパスティチーノ1.5ユーロも各種揃っている。

画像47

なんとここにはチーズや野菜が挟まっている食事系マリトッツォ3.5ユーロが並んでいた。

画像48


昼下がり、人々で賑わう店内。

画像49

奥の方は、ゆっくりできるカフェスペースになっていた。

画像50

画像51


この時はランチ後だったので、マリトッツォを食べる気にはならず、二口サイズくらいのクリームパフ1.5ユーロとマキアートをオーダーした。

画像52

こちらでは、生クリームとエスプレッソを交互に味わいつつ、友人との話に花を咲かせた。

マリトッツォは次の機会に試してみたい。



ロショーリ・カフェ・パスティチェリア(Roscioli Caffè Pasticceria)

住所:Piazza Benedetto Cairoli, 16, 00186 Roma, Italy

営業時間:7:30-20:00、日曜のみ8:00-18:00

公式ホームページ:roscioli.com



3-3. パレンティ(Parenti)

最後に紹介するのは、ヴァチカンの近くにあるカフェバールである。

画像54

ヴァチカンにアクセスするための最寄り駅、オッタヴィアーノ駅周辺は、意外にも飲食店が多い印象である。

このエリアの人々にとっては当たり前のことかもしれないが、マクドナルドなどがある通りを聖職者が歩いているという光景はなかなか面白く感じた。

平日の朝、朝食を食べる地元の人々で程よく賑わっていた。

画像56

このお店のマリトッツォは、普通サイズのもので2.2ユーロ、ミニサイズで1.2ユーロということで、今まで見た中で最安値だったと思っている。

画像55

他、生クリームをたっぷりと使ったお菓子も多く、気取らないその形はいかにも街のケーキ屋さん特製といった感じである。

画像57

画像58

甘いものだけではなく、パニーニやサンドイッチもあった。

画像59

画像60

甘いパンやパスティチーノの種類もなかなか多い。

画像61

画像62

画像63


ここでもマリトッツォを頼みたかったが、朝、食欲が湧かずソイカプチーノだけでマリトッツォは断念。

画像64

地元の人が頬張るマリトッツォはとてもボリュームがあり、美味しそうだったので次にまた行ってみたいと思っているのであった。


パレンティ(Parenti)

住所:Via Ottaviano, 33, 00192 Roma, Italy

営業時間:7:30-20:00(月曜定休)



---------------------------

以上、マリトッツォの魅力について余すことなく書いたが、やはり本場ローマのマリトッツォの方が、ミラノのものより安く、その分、素朴で余計なものが入っていないというイメージであった。

ローマにはまだまだマリトッツォが日常的に販売されているお店もあると思うので、少しずつ開拓してみたいと思っているのであった。


参考:

”Cos'è il maritozzo: storia e leggende del dolce romano”, in: Roma Today(2017年11月28日付記事)

"storia", in: Marì Maritozzi 公式ホームページ(残念ながらお店は閉店したとのこと)

”Maritozzo con la panna, il dolce laziale dalla lunga storia:Una tradizione che affonda le radici fin nell'antica Roma”, in: Ricette di Cultura(2017年12月2日付記事)


(写真・文責:増永菜生 @nao_masunaga

この記事が参加している募集

ご当地グルメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?