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ルイ・ヴィトン タイムカプセル エキシビション ミラノ(Louis Vuitton Time capsule exhibition Milan)

2019年9月20日から10月20日まで、ミラノの王宮(Palazzo Reale)にて、ルイヴィトンの特別展「ルイ・ヴィトン タイムカプセル エキシビション ミラノ」(Louis Vuitton Time capsule exhibition Milano)が開催中である。 

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日本でも2016年に東京で、2018年に大阪で、同展が開催された。

その他、世界の各主要都市を巡回してきた本展は、その都市ごとに少しずつ形を変えつつ、今回ミラノにやってきたわけである。

展示されるのは、1854年に創業されたルイヴィトンのアーカイブから選ばれた一級のものばかり。


会場の入り口に入ると、まずフランスの職人による皮細工の実演ブースが目に入る。

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本展は、次の5つのテーマに沿って構成されている:「メゾンの象徴」(The key to the codes)、「世界を巡る旅」(Journeys around the World)、「旅するエレガンス」(Elegance in Motion)、「メゾンの多様なアイコン」(Icons of the House)、レッドカーペット(the red carpet) 。

ここでは、撮影した写真をもとにミラノでの展示を紹介していきたい。



1. メゾンの象徴(the key to the codes)

ルイ・ヴィトンが160年以上にわたって培ってきた歴史を提示する本展。

それは、メゾンが不断の努力で創作を続けてきた結果でもある。

ルイ・ヴィトンの最初の成功は、革新的な旅行用のトランクの開発であった。

・鞄の角に取り付けられた丈夫な金具

・丈夫なカンバスと洗練された皮といった素材の組み合わせ

・唯一無二な模様やモノグラム

・鞄の内装として施されたひし形模様、マルタージュ(Malletage)

このように、1860年代に考案された実用的かつデザインが優れたルイ・ヴィトンのトランクは、使う人のことを考えたものである。



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上(Cabin trunk in copper; 1926)、下(Boîte Promenade in épi leather, Nicolas Ghesquière; AW 2015/16)。



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1885年から20世紀初頭にかけての広告や特許権など。

(Patent no. 166513 for a model of a military trunk with a camp bed that could be taken apart, sketch; 1885/ Trademark no. 11514 for distinguishing locks for trunks and travel items; 1908/ Advertisement for the camp bed trunk, with or without mattress; 1895/ Three interpretations of the LV logo on colored bands; early 20th century) 



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左(Zhang Ziyi, Chinese actress wearing look 20 from the AW 2014 collection attending the Cruise 2015 fashion show)

中国の女優チャンツィーが、2015年に開催されたクルーズコレクションに出席する際に着用したという左側の衣装の赤いベルトに注目して欲しい。

この赤いベルトは、トランクの中で荷物を止めるように使われていたストラップをもとにデザインされた。

また右側に映る牛革のトランクには、防水加工されたキャンバス地が組みわせられている。



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(Dress inspired by the Centre Pompidou, Nicolas Ghesquière; AW 2019/20)

こちらはウール、皮、金属が組み合わせられたルックである。


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1873年から1914年にかけて撮影・作成された、ルイ・ヴィトンが工房で撮影した写真や商品のラベル・カタログなど。

(Engraving by L. Guiguet, "View of the Asnières factory"; 1873/ Louis, Georges and Gaston-Louis Vuitton pose with artisans in the courtyard of the Asnières-sur-Seine workshops; 1888/ interior luggage label "Louis Vuitton packer"; c. 1870/ Extract pages from the Louis Vuitton product catalogue; 1914)




2. 「世界を巡る旅」(Journeys around the World)

スーツケースによって成功を収めたルイ・ヴィトンは、次なる挑戦に挑むことになる。

それは、19世紀後半以降、馬車に代わり、蒸気機関車、自動車、そして飛行機など、交通手段が発展していったことによって、人々の行き先は、世界へと開かれた。

それによって、より持ち運びしやすい、より軽くて丈夫な鞄が求められるようになった。

ルイ・ヴィトンは、時代の要請に合わせて、様々なものを生み出していく。


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(Advertising artwork for the semi-expandable suitcase "A comfortable valise"; c. 1910/ "Leaving by train"; 1926/ A selection of Italia hotel labels from the collection of Gaston-Louis Vuitton; c. 1900-1950/ Advertising drawing "The train journey": 1929)

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(Advertisement for the Twin Wardrobe trunk The Spur; 1923/ Advertisement for the Steamer bag The Spur; 1926/ Advertisement for Soks Fifth Avenue The New Yorker; 1977/ A selection of Italian hotel labels from the collection of Gaston-Louis Vuitton; c. 1900-1950)。

1910年から1977年にかけての広告やホテルのラベルなど。



このブースでは、展示される鞄の背景として、汽車や飛行機の窓から見た風景の映像が流れている。

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上(Sirius travel bag in Monogram canvas, Virgil Abloh; 2018)、下(Baule semi-espandibile in pelle; 1900)。



こちらはワードロープをコンパクトにそのまましまえるトランク。

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(Wardrobe trunk in Monogram canvas; 1925)。



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上(Mini hat box in Catogram leather, Nicolas Ghesquière; Cruise 2019)、中(Hat box in Monogram Reverse canvas; 2018)、下(Chauffeur's kit in Vuittonite canvas; 1916)。

特に上の小さな帽子専用のボックスには、可愛らしい猫や犬の模様が施されている。

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こちらは、元モデルのクリエイティブ・ディレクター、グレイス・コディントン(Grace Coddington; 1941-)とのコラボ商品である。




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上(Keepall bag in Monogram vinyl, Virgil Abloh; SS 2019)、下(Keepall bag in Monogram Savane canvas; Kim Jones in collaboration with Joke &Dinos Chapman; SS 2017)。

下の鞄は、キム・ジョーンズ(Kim Jones)とロンドンのアーティストであるジェイク・アンド・ディノス・チャップマン(Jake and Dinos Chapman)とのコラボ商品である。



3. 「旅するエレガンス」(Elegance in Motion)

旅先でも日常と変わらない優雅な装いを。

ルイ・ヴィトンは、そのような希望を叶えるアイテムも生み出した。



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左(Perfume travel case in leather; 2017)、中央(Perfume bottle case in épi leather; 2018)、中の香水("Rose des Vents", "Sur la Route"&"Sun Song" bottles of perfume and cologne)、右(Toiletry set items; 1920s)。


コンパクトにピクニックグッズを収納できる鞄。

生活の技術が、この鞄には詰め込まれている。

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(Picnic trunk in Vuittonite canvas; c. 1910)。


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(Perfume advertising campaign "Attrope-Râves"; 2018/ Advertisement for a travel kit Vogue; 1927/ Advertising artwork for a flask, a Marigny bag in crocodile leather, a Wardrobe trunk in Monogram canvas, and the Heures d'Absence perfume; 1920/ Advertising artwork for perfume bottles; 1927/ Advertising campaign, Celebrating Monogram collaboration projected Cindy Sherman and Louis Vuitton Studio in a Trunk; 2014)

1920年代から2010年代までの香水の広告。


またこれらの化粧品用のケースは、家の鏡台周りのものをそのまま旅先に持っていけるように作られているのである。

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(Toiletry case in leather; 1927)。




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(Milano fitted suitcase in morocco leather, exhibited at the exhibition internationale des Arts Décoratifs et Industriels;1925)。

こちらは1925年のパリ万博(正式名称は現代産業装飾芸術国際博覧会、アール・デコ博覧会との呼び名もあり)で展示された作品である。



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(名前や制作年をメモし忘れてしまった小型のトランク)



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(Client record of Sergio Leone (1929-1989); 1968-1979/ Luchino Visconti(1906-1976)with a Monogram umbrella; 1972/ Client record of Elsa Schiaparelli (1890-1973); 1947-1965/ Client record of Luchino Visconti; 1965-1971)。

1940年代から1970年代にかけての顧客の記録および映画監督ルキーノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti; 1906-1976)の写真(1972)も。


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上(The Turin International Exhibition: the Louis Vuitton company is awarded with the First Prize; 1911)、中(A selection of Italian hotel labels from the collection of Gaston-Louis Vuitton; c. 1900-1950)、下(The Milano International Exhibition: the certificate of honor is awarded to Louis Vuitton company; 1906)。



煙草による健康被害が叫ばれる世の中であるが、こちらのシガレットケースはとても洗練されている。

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(Cigar case in Epi leather; 2000)。



4. 「メゾンの多様なアイコン」(Icons of the House)

ここでは、ルイ・ヴィトンの「マスト・ハブ」(must-have)、持っておくべきアイテムと言える、メゾンを象徴するモノグラムやエンブレムが施された作品が展示される。

これらのメゾンを体現する記号は、時代の流れに合わせて、再解釈され、新たな作品が生み出されている。



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(Louis Vuitton Capucines by Urs Fischer; 2019)。

ウルス・フィッシャー(Urs Fischer)は、ニューヨークで活躍するスイス出身のビジュアルアーティストである。



またルイ・ヴィトンは、草間彌生やマーク・ジェイコブス、ジェフ・クーンズといった世界各地のアーティストたちとコラボレーションした作品を生み出した。

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右(Speedy bag in Monogram Town canvas, Marc Jacobs in collaboration with Yayoi Kusama; AW 2012-2013)、左(Speedy bag, Masters, a collaboration of Louis Vuitton with Jeff Koons, Tiziano, Mars, Venus and Cupid; 2017)。

これらの作品は、基本はルイ・ヴィトンの鞄の形ながらも、それぞれのアーティストの個性によって彩られている。



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右(Embroidered dress; Kabuki jersey top; Coated canvas pants, Nicolas Ghesquière; Cruise 2018)、左(English Alzer suitcase in Monogram canvas; 1959)。

1959年、ルイ・ヴィトンは、柔らかい素材にもモノグラムをプリントすることに成功した。

このプリント技術によって、ブランドのアイコンともなるモノグラムがプリントされたソフトレザーの商品が次々と生み出されていった。

もとは、5本のシャンパンボトルを持ち運びできるように作られた、ルイ・ヴィトンを代表するバッグ「ノエ」(Noé)もこの頃誕生した。



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20世紀初頭から2019年にかけての広告など。





5. 「レッドカーペット」(the red carpet) 

ルイ・ヴィトンは、ハリウッドのレッドカーペットのスターたちにも愛された。

特に、2013年からルイ・ヴィトン ウィメンズのディレクターを務めるニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière; 1971-)が手がけるドレスたちは、どれもクリエイティブでエレガントである。

映画『アデル、ブルーは熱い色』(La vie d'Adèle; 2013)で有名なレア・セドゥ(Léa Seydoux; 1985-)がカンヌ映画祭で着用したドレス。


(long evening dress in crepe and tulle worn by Léa Seydoux at the 71st Cannes Film Festival, Nicolas Ghesquière; 2018)。


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フランス版ウォーターボーイズともいうべき映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(Le Grand Bain; 2018)で主人公の妻を演じたマリーナ・フォイス(Marina Foïs; 1970-)がカンヌ映画祭で着用したミニドレス。

ガラスとスワロフスキーを使って刺繍が施された凝ったドレスである。


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(Short dress in silk embroidered with glass and Swarovsiki elements worn by Marina Foïs at the 71st Cannes Film Festival; Nicolas Ghesquière; 2018)。


こちらは、「魔法のトランク」(Magic malle; "malle"はフランス語でトランクの意味)。

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部屋の中央に置かれたこのトランクとその周りのスクリーンには、メゾンの誕生から、数々の名作の創作、2014年のルイ・ヴィトン美術館のオープンまでのメゾンの歴史を辿る映像が映される。


会場出口付近に設置されていたルイ・ヴィトンの年表。

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正直に言うと、著者はこの時初めて、創設者ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton; 1821-1892)の顔を見た。

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最後に、こちらは会場出口に設置されたルイ・ヴィトンのニュースレターを登録すると、もれなくポストカードをもらうことができる機械。

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ミラノ限定のポストカードもあった(残念ながら著者はミラノ限定のものを引き当てることができなかった)。




19世紀においては時間とお金に余裕のある一部の階級の特権であった

そのような旅行ブームと共に発展していったルイ・ヴィトンの軌跡をたどることができる展示であった。

21世紀も20年が経とうとしている現在では、人々の交通手段や生活スタイルの変化によって、旅はどんどん身近なものになっている。

世界各都市をする本展は、次はどこに行くのであろうか?


参考:

mentelocale milano

L'Officiel(2019年9月19日付記事)

WWD JAPAN(2018年8月6日付記事)



「ルイ・ヴィトン タイムカプセル エキシビション ミラノ」(Louis Vuitton Time capsule exhibition Milano)

会場:王宮(Palazzo Reale Milano)

住所:Piazza del Duomo 12, 20122, Milano, Italy

会期:2019年9月20日から10月20日まで

開館時間:10:00-20:00

※入場無料


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