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バール・バッソ(Bar basso):ネグローニ・ズバリアート発祥の地、映画の世界のようなミラノの老舗バー

唐突な話になるが、筆者は下戸である。

従って一年のうちでも数えるほどしか飲酒をしない。

せっかくイタリアに住んでいるのに美味しいワインも飲み歩くことはなく、ひたすら水とコーヒーとお茶を飲んでいる。

それでもお酒を飲む場所はとても好きなので、ノンアルコールカクテルを頼む。

そんな筆者でも、訪れておきたいミラノのお洒落なカクテルバーやワインバーはある。

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そのうちの一つ、バール・バッソ(Bar Basso)について今回のnoteでは書いていきたい。


1. バール・バッソ(Bar Basso)の歴史

大理石の床、ピンクの壁、鏡など、バール・バッソの内装は、1950年代から変わっていない。

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1967年、バーテンダーのミルコ・ストッケット(Mirko Stocchetto)は、もともと1950年代から営業していたバーをその内装を変えることなく買取った。

ヴェネツィアなどの都市でバーテンダーとして経験を積んでいたミルコは、1960年代にミラノに移り住み、バーの経営に乗り出した。

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ミルコは、後に紹介するネグローニ・ズバリアートなど、数々の名物カクテルを生み出した。

時代が下ってもミルコは、息子マウリツィオ・ストッケット(Maurizio Stocchetto)とともに店に立ち続け、店ではカクテルだけではなく、様々な料理も提供するようになったのであった。



2. アーティストが集まる店、バール・バッソ

またバール・バッソは、ミラノのサローネやデザイン・ウィークの際にアーティストやクリエーターたちが集まる店としても有名である。

1980年代頃から、二代目オーナー・マウリツィオ・ストッケットが、イギリスの若手デザイナーたちと交流するようになり、店は彼らの行きつけとなったのであった。

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その中には、デザイナーのジェームズ・アーヴァイン(James Irvine)やロン・アラッド(Ron Arad)らがいた。

彼らは、バール・バッソについて、それは店ではなく、まるで店主のマウリツィオの家のようであり、こここそミラノ・サローネの象徴であると語ったのであった。

今でもミラノでイベントごと、特にサローネがあると、世界中から集まったクリエーターたちはこの店に赴くとのことである。

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このようにクリエイターたちと特別な関係を築いてきた店主のマウリツィオ・ストッケットであったが、彼はもちろん街のお客さんも大切にした。

確かにバール・バッソは、朝の9時から夜中の1時過ぎまで通しで営業しており、筆者がカウンターを見たところ、日中に食べることができそうなブリオッシュや焼き菓子もあった。

また夕刻のアペリティーボの時間帯には、意外にも何組か親子連れのお客さんも見かけ、そこは大人の社交場でありながらも、幅広い年代の人がわいわい楽しみに行けるお店という印象を受けたのであった。



3. 偶然が生んだ名物カクテル、ネグローニ・ズバリアート

バール・バッソは、ネグローニ・ズバリアート(Negroni Sbagliato)というカクテルが生まれた店としても有名である。

1972年、バール・バッソの一代目店主ミルコ・ ストッケットは、ジンの代わりにスパークリングワインをネグローニに入れてしまった。

思いのほか好評であったこのカクテルは、「誤ったネグローニ」(Negroni Sbagliato)ということで、人々に愛されるようになった。


下の写真は、アペリティーボのおつまみを盛り付けている様子。

10ユーロ前後のドリンクを頼むと、ポテトチップス、オリーブ、ハムやアボカドが乗ったブルスケッタなど軽いおつまみを出してくれるのである。

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夕方18時過ぎ、テラス席の方が人気である。

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筆者たちが頼んだのは、普通サイズのグラスであったが、周りのお客さんは、これよりもう一つ大きなサイズのグラスを選んでいる人が多かった。

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赤い方がネグローニ・ズバリアート、筆者が頼んだ方はノンアルコールであったが、ちまちまおつまみをつまみながら華やいだ気持ちになった。

2020年3月以降、断続的にロックダウンや店の営業形態への規制があったイタリア。

夜12時近くなったも、人々がゆるゆるとお酒を片手に賑やかに話している姿を各地で見かけ、完全にこの脅威が終わっていないにしても少し安心した気持ちになったのであった。



バール・バッソ(Bar Basso)

住所:Via Plinio, 39, 20020 Milano, Italy

営業時間:9:00-1:15(火曜定休)

公式サイト:barbasso.com


参考:

「ネグローニ・ズバリアート」『Campari 公式サイト』(2021年10月24日閲覧)

「In the pink: we toast the enduring health of Milan institution Bar Basso」『Wallpaper』(2017年4月12日付記事)

「BAR BASSO, NON SOLO IL NEGRONI: ANCHE IL COMPLEANNO È "SBAGLIATO"」『ELLE DECOR』(2018年10月13日付記事)


(文責・写真:増永菜生 @nao_masunaga

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