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20世紀のモードを牽引したデザイナー、チャールズ・ジェームズの特別展:Charles James, "The Couture Secretes of Shape"(10 Corso Como)


10 コルソ・コモのギャラリーにて、英国系アメリカ人のデザイナー、チャールズ・ジェームス(Charles James; 1906-1978)の特別展が開催中である。

1906年、チャールズ・ジェームズは、イギリスの軍人である父とシカゴの裕福な一族出身の母との間に誕生。

ジェームズは、イギリスのパブリックスクールであるハーロー校にて、後にそれぞれ小説家と写真家になるイーヴリン・ウォー(Evelyn Waugh; 1903-66)とセシル・ビートン(Cecil Beaton; 1904-1980)といった生涯の友と出会う。

その後、フランスのボルドー大学にて音楽を専攻したジェームズは、実業家サミュエル・インサル(Samuel Insull)によって、建築デザインの学科に入れられたことによって、後に彼の基盤となる数学的な知識を吸収することとなった。


19歳になったジェームズは、「チャールズ・ブシュロン」(Charles Boucheron)という名の店をシカゴでオープンしたが、そのわずか2-3年後、彼はシカゴを離れ、ロングアイランドにて婦人帽子店をオープンさせた。

自身のことを「仕立て屋兼設計者」と称していた彼は、若い頃から、ユニセックスなスタイルを生み出し、その知識を活かして、革新的な技術と方法を追求した。



こうして1933年までに、ジェームズは、タクシー・ドレスやジッパーが特徴的なスパイラル・ジッパー・ドレス、また友人である写真家セシル・ビートンの妹ババ・ビートン(1912-73)のためのウエディングドレスをデザインしてきた。

また1937年には、パリで初めてのコレクションを成功させたジェームズは、同年、サルバトーレ・ダリによってデザインされたサテンのキルトジャケット(現在ヴィクトリア&アルバート博物館に展示される)を製作した。

1950年にはコティ・アメリカン・ファッション・批評賞受賞、1954年にはその記念となるコレクションを開催するなど、その地位を不動のものにしていった。

「アメリカ初のドレスデザイナー」(America's First Couturier)としての名声を得たジェームズは、ジャーナリストのマクドネル・ハースト(McDonnel Hearst; 1920-91)、ストリッパーのジプシー・ローズ・リー(Gypsy Rose Lee; 1911-70)、ファッションアイコンのミリセント・ロジャーズ(Millicent Rogers; 1902-53)、歌手のマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich;1901- 1992)といった20世紀のアメリカを彩る女性たちから賞賛されていた。

1954年に結婚したが、1961年には離婚したジェームズは、ニューヨークのチェルシー・ホテルに移り、そこをオフィス兼アパートとした。

芸術家が集まることで有名であったこのチェルシー・ホテルには、ジェームズの他、先にも登場したサルバトーレ・ダリ(Salvator Dalí;1904-1989)、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol; 1928-1987)ルー・リード(Lou Reed; 1942- 2013)、アントニオ・ロペス(Antonio Lopez; 1936-)、ビル・カニンガム(Bill Cunningham; 1929-2016)といった音楽家や芸術家が住んでおり、ホテル内で交流があったという。

こうして家に戻ることなく、1978年、ジェームズはホテルでその生涯を閉じた。

彼の死後も、世界各地で彼の功績をたどる特別展が開催され、今回、ミラノのコルソ・コモで開催されている展示"The Couture Secretes of Shape"もその一つである。

ここでは、1930年代から70年にかけて製作された貴重なパターン、プロトタイプ、ドレス、原画などが展示されている。

ユニセックスなイヴニングガウンから、チェルシー・ホテルの「ボヘミアンな芸術家コミュニティー」での生活まで、彼の生涯が、このギャラリーの一室につまっている。

ジェームズを賞賛するデザイナーのリック・オーウェンズ(Rick Owens; 1962-)は、ジェームズとの関係を次のように書いている。

「私が1990年代半ばにブランドを始めた時、そのゴールは、チャールズ・ジェームズになることであった。

技術への傾倒や型にはまったつまらない満足感への軽蔑はあるものの、洗練された贅沢なものへのリスペクトは残っている。」

華々しいデビューから、芸術家御用達ホテルでの生活まで、ジェームズの生涯は、ボヘミアン・アーティストとも言うべき、公私ともに自身の創作活動が第一であったことが十分に感じられた。

このような浮世離れした生活があったからこそ、20世紀アメリカのアーティストたちとのフュージョンがあったのであり、もっとも輝かしい時代のアメリカのモード史にその名を刻むことができたのであろう。



Charles James, "The Couture Secretes of Shape"(10 Corso Como)

住所:Corso Como 10,  20125, Milano, Italy

会期:2019年6月1日から7月28日まで

時間:10:30-7:30(水曜と木曜は、10:30-21:00)

入場無料

公式ホームページ:10corsocomo

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