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YVES SAINT LAURENT – SHAPES & FORMS: サンローラン美術館パリより、ファッションとグラフィックアートの対話
現在パリのイヴ・サンローラン美術館では、サンローランのアーカイヴとドイツ人アーティスト クラウディア・ヴィザー(Claudia Wieser)の作品を通して、ファッションとグラフィックアートの対話を体現した特別展「YVES SAINT LAURENT – SHAPES & FORMS」が開催中である。
「ファッション」をモチーフにした美術館の展示としては、一人のアーティストに焦点を当て、それとファッションブランドをコラボレーションさせるというのは、ユニークであると同時に難しい試みである。
なぜならば、その展示の下敷きとなるストーリーがきちんと描かれていなければ、そのコラボレーションは、それぞれの強い個性によって空中分解してしまうからである。
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ファッション界の革命児であったイヴ・サンローランは、1960年代当時のアートの影響を受けつつ、シンプルな幾何学的モチーフや大胆な色彩を組み合わせ、エレガントかつ無駄のないデザインを生み出した。
一方で1970年代生まれのドイツ人アーティストのクラウディア・ヴィザーは、色と形に細心の注意を払いつつ、幾何学的な構造を探求している。
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今回のnoteでは、この展示において、生きる時代も地域も全く異なる二人のアーティストの対話がどのように繰り広げられていくかを考察する。
1. Formes Pures
今回クローズアップされるアーティスト、クラウディア・ウィザー(Claudia Wieser;1973-)は、ミュンヘンの美術アカデミーで学んだ後、幾何学と空間へのこだわりを特徴とする芸術活動を追求していった。
彼女は、セラミック、鏡、木、写真などの素材をミックスし、装飾的なボリュームのみならず、グラフィックなコンポジションを創り出した。
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一方、イヴ・サンローランは、そのキャリアを通じて、一見無機質にも思われる線や無地を通して女性らしい美しさを表現してきた。
クリスチャン・ディオールのメゾンに在籍していた頃から、サンローランは、「ウエスト」ではなく「肩」で固定する優美な服をデザインし、余分な物がない縦長のシルエットをスケッチした。
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また飛行士が着用し、後に宇宙飛行士も着用したジャンプスーツは、サンローランの手によって単色のアンサンブルに生まれ変わった。
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ジャンプスーツのジャンプスーツはサンローランのワードローブとして定着し、そのエレガンスは、シンプルで直線的なラインによって強調されている。
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サンローランは、女性の動きに布地を沿わせることで、女性の姿勢を映し出す、まるで鏡のような服を作りたいという深い願望を持っていた。
彼によれば、ファッションとは女性に奉仕するものでなければならず、それが極められた時、その衣服の絶対的な洗練と優美、そして永遠性が決定的なものとなるのであった。
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2. Formes et Couleurs
イヴ・サンローランにとって、色彩は、フォルムの構成に不可欠なものであり、常に創造の過程において中心にあった。
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1965年と1966年のコレクションでは、抽象画家の世界からインスピレーションを得たアバンギャルドなスタイルを発表し、独創的なカラーパレットとカットを組み合わせたドレスは、活力に溢れた女性のイメージにつながるものであった。
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イヴ・サンローランは、ジャージーのような無地で滑らかな素材を使い、まるでポップアートの絵画をモチーフにしたような鮮やかな色を自身のパレットに入れ、それらのどの組み合わせが一番優美か常に実験していたようである。
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3. Claudia Wieser
ピュアなラインとそれとは対照的な色彩で表現するクラウディア・ウィザーが生み出す幾何学的なフォルムは、イヴ・サンローランのミニマルな作品とも馴染んでいる。
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2002年以来、クラウディア・ウィザーの作品は世界各地で展示され、2010年にはニューヨークのザ・ドローイング・センター(The Drawing Center)でル・コルビュジエ(Le Corbusier)の「Le Poème de l'angle droit」(直角の詩)を再解釈した。
2021年にも、ニューヨークでのパブリック・アート・プロジェクトとして、都市とそこに住む人々のダイナミズムを浮き彫りにする5つの記念碑的彫刻をデザインした。
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これらのアクセサリーからも分かるように、イヴ・サンローランは、球形、円錐形、立方体の中に直線、曲線、正方形、円、三角形を配置し、その対応を自由に楽しんだ。
一見硬質な素材を使い大胆なカットなアクセサリーに見えるが、それを身につけた女性の骨格は逆にしなやかかつ肌色は明るく見えるのではないだろうかなどと考えたのであった。
4.Formes Geométriques
1988年秋冬コレクションのために描かれた探求的なドローイングに見られるように、イヴ・サンローランはカラフルな幾何学図形を中心にコレクションを構成した。
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キュビズムの画家たちのように、イヴ・サンローランは、ラインや色、ファブリックのさまざまな組み合わせでさまざまな服を提案した。
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彼は、ステンドグラスの職人のように、彼ははっきりとした枠で形を区切り、女性の体のラインを強調した。
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また彼は、マットな生地と光沢のある生地、滑らかな表面とリブ状の表面、三つ編みとスパンコールなどを組み合わせてプリズムのようなジャケットを生み出した。
さらに立方体や円錐を重ね合わせたカラフルな手袋や帽子もアクセントとなり、そこには、クチュリエの創造的衝動が存分に表れていた。
5. Noir et Blanc, Dessiner la Forme
黒と白は、時代を超えて、イヴ・サン ローランの創造的な世界に不可欠な要素であった。
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クチュリエは、紙に鉛筆の線でスケッチすることから、シンプルさと純粋さをひたすら探究した。
黒とは、歴史的には喪や病、メランコリーの象徴として捉えられていた。
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15世紀に入り染色技術の発展により、これまでは黒い衣服というとグレーや茶色みがかった中途半端な色から、漆黒の深みのある色の布地を製造できるようになってから初めて黒は、ファッショナブルな洗練されたものとして王侯貴族に受け入れられるようになった。
19世紀には、シンプルさや優雅さの真髄として、紳士のワードローブに取り入れられた黒。
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1926 年にガブリエル・シャネルは「リトル ブラック ドレス」を発表したことにより、黒の神格化は達成されたと言えるが、サンローランはその先を目指した。
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サンローランは、ミニマリスト運動やオプ・アート運動のアーティストと同様に、黒と白によるコントラストやカモフラージュの効果を巧みに利用することで、視覚的なレパートリーの無限の可能性をトルソーの上で実現した。
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以上、パリのイヴ・サンローラン美術館で開催された特別展「YVES SAINT LAURENT – SHAPES & FORMS」を駆け足になったが振り返った。
ちょっと話題はズレるが、ミラノからパリに来ると、ファッション関係の美術館における展示の充実ぶりにいつも驚かされる。
それぞれのメゾンが持っている美術館やギャラリーが公に開かれている上に、定期的にユニークかつしっかりそのブランドのアーカイブを使った展示が開かれているのである。
今回の展示も伝説的なデザイナーと現代アート作家の対話という面白い切り口で構成されたものであった。
サンローラン美術館の特別展は大体年に2回ほど変わるのでまたこれからもチェックしていきたいところである。
「YVES SAINT LAURENT – SHAPES & FORMS」
会場:イヴ・サンローラン美術館パリ(Musée Yves Saint Laurent)
住所:5 Av. Marceau, 75116 Paris, France
開館時間:11:00-18:00(月曜休館)
会期:2023年6月から2024年1月14日まで
・「At Yves Saint Laurent Museum, an Artist Dialogues With the Archives」『WWD』(2023年6月8日付記事)
・徳井淑子『黒の服飾史』河出書房新書、2019年。
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