愛すべき無駄な時間
ゆず胡椒づくりの季節がきた。
青ゆずが出回るこの季節、一年ぶんのゆず胡椒をつくる。
作り方は意外と簡単で、ゆずの皮をすり下ろして、みじん切りした激辛唐辛子と塩をすり鉢で練り混ぜて瓶詰めして冷蔵庫に1ヶ月くらい寝かせるだけ。
ただ、青ゆずの皮をすりおろすのはけっこう大変だったりする。
瞑想状態で、黙々とシャリスリシャリスリし続ける。
夏だから、このプチ運動で汗かくし腕も手もそれなりに疲れる。
でも、不思議と落ちつく時間でもある。
途中、ふと嫌なことが頭の中をよぎると、手からゆずがこぼれ落ちる。
また集中に戻る。
嬉しかったこと思い出すと、ついワタまですり下ろしてたりする。
また集中に戻る。
気が散っては、また集中に戻る。
それを繰り返す。
はっきり言って、買えば安いし楽だしすぐ食える。
でも、そんな年に1回の、愛すべき無駄な青臭いにおいに囲まれる時間がたまらないのだ。
今は苦くて辛くて草臭くてしょっぱいだけなのが、1ヶ月くらい過ぎたあたりから色も風味も落ちつく。
植物からだんだん調味料になっていく。
それがまた楽しみで。
そうしてできたゆず胡椒を、めんつゆに入れたり、魚の薬味にしたり、鍋の隠し味にして一年間楽しむのだ。
愛すべき無駄な時間は、スプーンですくうたびに「いただきます」の時をmax楽しみにしてくれる。
愛すべき無駄な時間は、その時のために存在するんだ。
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