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まだ進化前だから

先日、昔お世話になっていた職場の方から連絡が来ました。
「今年の研修医も全員無事に研修が負えることが出来そうです」
もうそんな季節か、とカレンダーを見るといつの間にやら3月も半ば。春は学生さんの卒業シーズンですが、研修医にとっても節目の月なのです。

日本で医師になろうと思うと、原則的には医学部に6年間通いその後研修指定病院で2年間初期研修を受ける必要があります。外科医になりたい人も、精神科医になりたい人も、小児科医になりたい人も全員2年間の初期研修を受ける義務があります。
研修内容やどの科を回るかは病院毎に差がありますが、一つ言えるのは研修医として働く2年間は残りの医者人生とは大きく異なるものであるということです。


研修医の2年間

医学部を卒業して、医師免許を授与されるといきなり医師としての生活がスタートします。
”初期研修医”であろうと医者は医者。経験も知識も乏しく、自信もない…。それでもきちんと責任を持って患者さんの治療にあたることが求められます。
誰にとっても大変だと思います。私も日々分からないことが多すぎて大変だった記憶があります。それでも何とか食らいついて、目の前の患者さんの助けとなるべく必死に毎日過ごすうちに2年間が終わっていた…私の研修医生活はそんな感じでした。
自分自身のことはよく分かりませんでしたが、初期研修を終えられて専門医へと巣立っていく先生方を見ているとこの2年間での成長は目覚ましいものがあるなと思います。


研修医はイーブイ的な存在である

ところで、イーブイというポケモンをご存じでしょうか。
ポケットモンスターシリーズの初代、『赤・緑』から登場するポケモンです。茶色くてかわいい、皆から愛される大人気ポケモンの一種と言えるでしょう。
特徴は色々な種類の他のポケモンに進化すること。
例えばほのおの石を使えばほのおタイプの”ブースター”に進化しますし、みずの石を使えばみずタイプの”シャワーズ”に進化します。ポケットモンスターの作品が増えるごとに進化の種類は増え、今や8種類の進化先が存在しています。ポケモントレーナーたちにとってはどのポケモンにイーブイを進化させるかが悩ましい問題となるのです。
このイーブイというポケモンが研修医っぽいということが昔から言われているのです。ポケモンをこよなく愛する私の元上司もそう言っていました。
研修医は基本的には初期研修医を終える直前に内科、外科、小児科、産婦人科…など合計19領域から進路を選ぶことになります。つまりは進化する先を自分で決めなければなりません。まさにイーブイっぽいわけです。
初期研修期間中は自分の専門が無い状態で診療にあたるため、ノーマルタイプのイーブイとして頑張るしかありません。かえんほうしゃやハイドロポンプは使えないので、スピードスターやたいあたりを駆使することになります。
ポケモンの世界においてイーブイとして頑張って貯めたレベルや経験値が進化した後にも引き継がれるように、研修中に得た経験や知識はその後の専門医になってからも引き継がれます。なので、研修医の間に頑張ることはその後の医師人生で患者さんにより良い医療を提供する為にも大切なことなのです。


みんなまだ進化前

患者さんは研修指定となっている病院を訪れた時に”げっ、この医者まだ研修医かよ。大丈夫か?”なんて不安に思われるかもしれません。
確かに彼らはまだ専門領域もなく、立派なニンフィアにもブラッキーにも進化していないイーブイの状態です。
しかし、進化を待つ状態の彼らはその歯がゆさや無力さを誰に指摘されるよりも強く自覚をしていると思います。だからこそイーブイとしてのレベリングを欠かさず行い、戦える準備をしているはずです。

これから初期研修医としての生活を始められる先生方、進化先を考えながら経験値貯めを頑張りましょう。
初期研修を終えられる先生方、お疲れさまでした。次のポケモンに進化した後も絶え間なくレベリングを続けられるよう頑張りましょう。


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