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「悪文」から学ぶ伝わる文章の書き方

「文章が上手く書けない」ということは多くの社会人が抱える悩みです。
 自分では分かりやすく書いたつもりでも「意味がわからない」「何が言いたいの?」「Aという意味だったの?てっきりBだと思っていた」と言われた経験はないでしょうか。
 私たち日本人は日常的に日本語を使いますが、あまり文法を意識せずに使っていることが理由かもしれません。ある文章の誤りを指摘せよ、と言われたとき文法と照らしてどこまで指摘できるでしょうか。文法はその言語を使う上での共通ルールであり、受け手は共通ルールに従って理解します。だから、文法が滅茶苦茶だと正しく伝わらないのです。
 さて文章力がないと悩む社会人のために、世の中には「正しい文章の書き方」を教える書籍が沢山あります。これはこれで学習する価値はありますが、逆に反面教師、すなわち「悪文」から学ぶという一風変わったアプローチの日本語学習テキストがあります。
 それが『悪文』です。初版は1960年と古いですが、名著に相応しい輝きを今なお放ちます。本書の冒頭で、著者の岩淵悦太郎氏は「明治時代などは美文の時代であったが、今は悪文の時代だ」と嘆いています。それから60年あまり経た現代、果たして如何なものでしょうか?
 この本では、新聞、TV番組から小学生の作文まで多様な実例を基に、どういう理由でこの文章は伝わらないのか、具体的かつ論理的に指摘しています。巻末には悪文を避けるための50か条が掲載されており、これを読むだけでも「なるほどな」と思いますし、皆さんの文章力はグンと向上することでしょう。
 ちなみに、私が本書から学んだテクニックの1つに「受身形はなるべく使わない」があるので最後にご紹介します。次の文章をご覧ください。

【例文】
軍縮は突然にもたらされるものではなく、一歩一歩実現されなければならない。インドは即時停止に賛成であり、これは今度の声明にもうたわれている

『悪文』P127

これはこれで内容は伝わりますが、私なら次のように直します。

【修正文】
軍縮はすぐには実現できないので、私たちは一歩一歩実現しなければならない。インドは即時停止に賛成であり、今度の声明にもうたっている

 受身形をなくすことで主語・述語がはっきりし、分かりやすくなります。何も考えずに文章を書くと受身形がたくさん登場するので、私は書いた文章を見直す際は意味のない受身形がないかチェックしています。



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