見出し画像

リモート監査への期待と課題

 皆さん、こんにちは。
 Naoです。

 約1週間ぶりの投稿ですね。
 今回は、コロナ禍で注目を集めているリモート監査についてお話しようと思います。

 ご承知のとおり、最近は会議や授業、飲み会など、様々なものがオンライン化しています。
 そのような中、監査もリモート化する動きが起きています。
 従来、監査は、現地にて行うのが当たり前でした。しかし、業務効率化に加え、コロナ禍によって、現場へ行くことが制限されたため、リモート監査に注目する企業が増えてきているようです。そこで、今回は、リモート監査について現状を整理し、どのような効果があるのか、また課題はどこにあるのか解説いたします

(1)リモート監査の現状と課題

 『月刊 監査研究』(2020年5月号)にリモート監査に関する記事が掲載されています(※)。記事によると、すでに製造業ではリモート監査の基準を制定していたり、自動車会社では、現地に赴くことが危険な場所については、リモート監査へ移行するなどの対応をとっている企業があるようです。リモート監査を導入している会社から上がっている利点と課題は以下とおりです。

【効果】
・非常時に必要な正常感の回復
・出張費用の削減効果
・利用できる監査要員の増加
・監査範囲の拡大
・専門家の活用拡大
・必要書類の整理・確認の向上 等

 一番の効果は、監査資源(ヒト・モノ・カネ)の効率化のようです。まず、目に見えやすいのは、出張費用の削減でしょう。遠方に赴く場合、新幹線や飛行機、また宿泊を伴う場合はホテル代など、1回の出張で1人10万円近くかかることもあります。また、現地に向かうまでの時間だって、タダではありません。
 また、リモートだと場所を選びませんから、遠方に住む従業員を監査要員に加えたり、忙しい専門家を交えてテレビ会議をすることもできます。更に、時間を節約できることにより、後回しにしていた監査対象への監査も可能になるでしょう。
 現場も無関係ではありません。日頃から書類を整理しておかないと、突然リモートで、あれこれ書類の提出を指示されても対応できず、評点を下げることになります。
 コロナ禍で日常業務が制限され、非日常が続いていますが、リモートでも監査活動を再開できることは、日常感の回復につながるでしょう。
 
【課題】
・直接の観察に代えられないものがある
・監査対象者との信頼関係の構築が難しい
・ネット環境の整備
・高セキュリティの場所には適用しづらい 等

 リモート監査の最大の課題は、監査の有効性でしょう。
 特にリモート監査の導入で障壁になるのは、現場に直接赴くことでしか観察できないことをいかにリモートで再現するかではないでしょうか。百聞は一見に如かずと言いますが、現地の雰囲気、拠点周辺の環境、地域性など、現地に行くことでしか分からないことが多々あります。
 また、セキュリティが厳重な場所は、ネットでつなぐことが難しいでしょう。何かの拍子に情報漏洩しては、元も子もありません。更に、ネット回線の整備が不十分であるなど、物理的な課題もあるようです。

(2)リモート監査の将来性

 リモート監査については、まだ取組みが始まったばかりで、これから課題がたくさん出てくると思います。しかし、コロナ禍のようなリスクに備え、外出が制限されても有効に機能するよう、またそれ以前からの課題である業務効率化のため、他の業務におけるリモートワークの推進と同様に、監査もリモートで実施する必要性が増すでしょう。
 従来の現地調査を、リモートに置き換えることができるかどうかは、代替性がポイントだと思います。現地でしか観察できないことを、リモートでも観察できるようにするために、以下のような代替手段が考えられるのではないでしょうか。

リモート監査

 仮に、上記のような代替手段を用いるのであれば、現場の協力が不可欠です。しかも、これまでと違い、現地に赴かなくなれば、現場と監査部門との間に心理的な距離が生まれます。ですから、これまで以上に、現場とコミュニケーションを密にすることを意識しなければなりません
 監査の有効性を担保するための課題は多々あるでしょうが、リモート監査が成功すれば、監査資源の有効活用ができるようになります。今でも、少ない監査資源で何とかやり繰りし、頭を悩ませている監査部門長がいらっしゃると思いますが、リモート監査が回るようになれば、より高リスクの分野への監査へ資源を割くことができるでしょう。

(3)まとめ

 リモート監査の課題は、従来の監査に代替できるのか否か(有効性)や、ネット回線などの物理的な制約にあります。これらの課題を克服し、リモート監査を導入すれば、監査の効率化や非常事態でもワークするメリットがあります。現時点で、リモート監査を導入している企業は限られますが、コロナ禍をきっかけに、働き方を根本から見直す動きがありますので、これを機に、リモート監査導入を本格的に検討する企業が増えるでしょう。
 様々なリスクが高まる中、求められる監査の高度化のためにも、監査資源を有効活用できる効果的な手段として、リモート監査の導入を前向きに検討すべきだと思います。
 
※『月刊監査研究』(2020年5月号)「新型コロナウイルス感染症以降のリモート監査」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?