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初めて「WSオーディション」をやってみたのでメモ

今年初投稿になってしまった…。

1月は年始からなんか鬼のように仕事が忙しい2週間で、それと平行して今年の演劇活動の諸々をやっていたらまたたく間に過ぎて行きました。
今日からgekidanUで管理してるアトリエを他団体にお貸しする公演の舞監で入ってて、気付いたら2〜4月で参加するものが5企画入っており、引き続きあくせくしております。

そんな中、先々週の土日に初めて「WSオーディション」と銘打ったものをやったので、せっかくだから諸々残しておこうと思います。

以前より毎年に一回は「出演者募集」という形で、面談→本読みという感じで小一時間サクッとお会いして…みたいなことはしていたのですが、今回は初めて「WSオーディション」という形で1組2時間ほどとって行いました。

これについては、このご時世でなかなか演劇をやる機会がない人も多いだろうからできたらリハビリできるような時間を作ってあげたいな、というのと、僕がここ2年で演出も何本かやっていて「うちはこういうことを気にしてこんな変な環境でも演劇を作っています」というのがある程度言語化出来て初対面の役者にも説明しつつ動いてもらったりできそうだな試してみよう、という気になり挑戦してみた次第です。なのでトライアルとして参加費は無料でした。

やったこと

そんなこんなで募集をした今回、募集段階で30名、当日体調不良などを除くと25名の方とお会いすることが出来ました。3年前の夏は6人しか来なくて全員出してたことを考えると意味がわからないです本当にありがとうございます恐縮です…。
ただ毎回そうなのですが、男女比が来た人でいうと3:22で女性が圧倒的に多く、主要メンバーは基本アラサーのサラリーマンだと言うのに、一体我々はどう見られているのだろうかと改めて不安に思った次第です…。
という感じだったので、基本は3〜4人一組で時間を分けて行いました。

当日の流れとやったことは下記です。
それぞれなんとなくどういうものだったかお話します。
◯南千住駅前に集合・お出迎え
◯自己紹介/企画書を投影しつつ、劇団のこと紹介
◯ワークに入る前に簡単に「我々が演劇作りの時に考えていること」の講義
◯身体と呼吸のワーク
◯ステータスエチュード
◯助詞だけでシーンを作る
◯本読み

◯南千住駅前に集合・お出迎え

別に住所は公開してるし、現地集合でいいのですが、毎回南千住駅前ロータリーの松尾芭蕉の銅像前に集合してもらって僕が迎えに行く形をとっています。
そのほうが体験として面白いかな、というのと、南千住駅という「大多数の人が普通に生きてると降りない駅」から、合格したら実際の劇場となるアトリエまでの道のりをそれなりの道案内をしながら向かうことにけっこう意味があるなと思ってるからです。
僕がオーディション中99%を回しているのでヨーイドンよりこうしたほうが双方に緊張感が薄れる、というのもあります。

◯自己紹介/企画書を投影しつつ、劇団のこと紹介

自己紹介からですが、ここでは基本的に参加者の方というより、こちらからの団体の説明にめっちゃ比重を置きます。
だってこう、先述の通り普通に生きてたら来ない駅の謎の銅像の前に集められ、中肉中背の男に引き連れられたら怪しい3階建ての民家の2階の謎におしゃれぶったリビングに通され「はいオーディションです」って、怖すぎると思うんですよね。
僕だったら怖いので、兎に角「我々はこういう団体なんですよかったら興味持ってもらえると嬉しいです」という話をしっかりします。
普通に小劇場に出るのとは色々と違いがあり、ある程度能動的に楽しんでいただかないと双方辛くなっちゃうので、そのためにしっかり説明を…というのはとても意識しています。直近の企画の企画書を投影しながら喋ると体制とか歴史とか財政事情とか色んなことが伝わるのでいいです。

ここまでで25分くらいかかります。

◯ワークに入る前に簡単に「我々が演劇作りの時に考えていること」の講義

今回のワークは「普段僕が演出の時の稽古期間序盤に芝居づくりの基礎として役者にやってもらってることをかいつまんでやる」って感じだったので、そのベースになる考え方を共有しといたほうがいいと思い、下記のような簡単な資料を出して説明してからはじめました。

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書いてあるとおりの上に大したことは書いてないんですけど、一応この民家を改装したアトリエという名の民家or住宅街の中の野外という謎の環境でやっていく上で考えているのはこれです、という感じです。
「日常」を意識させるためにどういう状態で「嘘」をつくか、それなりに方法論とかあるよね、というお話です。これをなんとなくやってみて理解するために残りの時間でワークしてみましょうね。という流れでした。

◯身体と呼吸のワーク

此処から先は僕が前いた劇団や客演先、参加したWSで得たものをアレンジして自分のものっぽくして普段の稽古でやってるものを一緒にやっていきました。

「身体と呼吸のワーク」めっちゃっぽいなと思いましたが、他にいいものが思いつかなかったんでこう書きます。

ものすごい具象空間である民家の中、もしくは余計な騒音などが満載の野外空間で演劇をやる上で、前述の通り大事にしている「情報量を整理する」べく、ノイズを減らして簡潔に情報を伝える媒体として役者が存在するために、身体と言葉を一致させてシンプルにコミュニケーションできるといいですね、という話で、如何に楽に身体が呼吸(=発語)を行い、コントロールできるかが大事だなと思っています。

そのためにはまず「ちゃんと息を吐ききる」ことが大事です、とお伝えしています。
まずは腹式呼吸で正しく息を吐ききれると正しく脱力でき、正しく勝手に息が入ってくるので無駄な力みがなくなるよ、というところから、
→その息を吐くタイミングを体が一番力が入る時にしたら楽に強く吐けるし自然だよね
=一番力が入るのがわかりやすい「歩いていて踏み出した足が土踏まずまで接地して、へそ下の丹田に力が入った瞬間」に強く吐いてみよう
→それで息だけじゃなくて言葉にしてみよう
→歩き回らずに前に踏み出すだけで目の前の人にシャープに当ててみよう
→言葉を長くしてみよう
→踏み出さずに吐く長さを調整して圧と大きさを変えてみよう
みたい流れで身体と呼吸を意識する、というのをやりました。
ここまで自在にできると、「このくらいの距離感の人にこういう感情をこういう状態で言う」というのが自然にできるようになるなぁと思っています。

言葉にするとよくわからないですね。これも過去のいろいろな教えの受け売りですが、自分なりに解釈しています。

◯ステータスエチュード

「台本がない時にやってなんか面白くなることを期待して行うエチュード」ほど滅びてほしいものはないのですが(突然)、我々もけっこう稽古序盤にエチュードをやります。

ただそれには明確なルールがあって、
・1から人数分の数字が書かれた紙を引き、自分の番号を確認する(他の人の番号はわからない)
・1が最も弱く、数が大きいほどその場での「ステータス」が強い
・全員分のステータス=それぞれが持ってる数字を、エチュードを通して観てる人に理解させるのが唯一の目的、オチも面白い展開も必要ない。

という基本ルールの下、「職員室」「町内会」「部室」「駅」などのシチュエーション設定だけを与えてエチュードしてもらいます。制限時間は1分です。

たとえば5人で1〜5の紙を引いて「町内会」をやるとすると、
4の人が副会長で会を仕切り始め、
5の人が町内会長で真ん中でどーんと座っていて、
3の人が書紀をやり、1と2の人がお茶を配り…みたいな…
これを1分のうちに行って観ている方に全ての数字の順序を当てさせる、という。

言葉にすると簡単ですが、上手く行かない時はホントに上手く行きません。ちなみに面白い作品を創れる座組ほどどんどんこれが上手くなっていきます。観ててすごい楽しいです。

これの効果としては、色々あるのですが
・自分の数字が「◯番だ!」と自分の状態を説明するのでなく、自分が持ってる情報を使って周りの人の情報を引き出し、その場の情報量を増やす
観てる人はこんなにミスリードするんだ、っていうのを簡単に体感できる

ことかなぁと思います。
ちなみに慣れてくると「5人なのに1〜8まで引かせて、空白の番号を作って、その空白含め全て当てさせる」という形で難易度を上げます。
「いない人の話をする」という要素が入ることで一気に面白く&難しくなります。

◯助詞だけでシーンを作る

これは今回数組としかやらなかったのですが、いつもよくやるやつです。

まず、これはこのあとの本読みも共通なのですが、「4つの椅子を各辺をつなぐと長方形になるように配置し、その辺の周りの枠しか歩けない舞台」という設定で役者のアクティングエリアを規定します。
その上で2人で会話をしてもらうのですが、「関係性の可視化」をイメージしてできるだけ動いてみてください、というオーダーをします。
いわゆる「会話のかけひき」の中で、言葉によって詰め寄る、避ける、じわじわ寄る、など実際は動いてないけど心理的な動きがあると思いますが、それを具現化するイメージで、この4辺を使って動き回りながら話してみてもらいます。
これは普段実際に公演をするアトリエで稽古を重ねるため、どうしても「ガワ」に引っ張られて会話が詰まっていかない、という課題を解消するために場面設定を引っこ抜いて会話を煮詰めていくために良くやっていることです。

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んで、それを「助詞だけで」というのはどういうことかと言うと
この4辺の舞台と

・でも
・だから
・それで
・あのね

という言葉のみで2人で会話してシーンを作ってください。という指示をだします。
その上で最後の言葉だけ、例えば
「実家に帰らせていただきます」とか
「明日からもう肉は食べない…」とか
「iPhone11に変えたんだ!」とかを指定して、
できるだけ二人が同時に「このタイミングだな」と思ったところでどちらかが言えたら良い、というものです。
これを実際にやってみると、言葉が足りない分、観てる方は勝手に状況を想像して楽しいんですよね。
終わったあとに役者さんの意図と観客の感じ方があっているか答え合わせしたりすると、とてもおもしろかったりします。
これに関しては凄くシンプルな要素だけを使ってどのくらい情報を伝えられるか、っていうワークになるかなと思います。

◯本読み

本読みも基本的に上記と同じ場の設定で行い、こちらから事前にお送りしたテキストからいくつか指定して読んでもらいます。
「ベランダとその下の駐車場」
「リビングで寝ころんだままの女と周りを歩き回る男」

など、特殊な環境でのシーンを抜いてきてるので、その場面設定を一回抜いて4辺の中でいかに関係性の変化だけでシーンを創れるか、セリフをどんなふうに使うか、どんなアプローチをするかを見させていただきました。ここまでの流れがあるので、ほとんどの方が見たいものを見せていただき、とっても楽しかったです。

基本的に会話とモノローグをそれぞれ見させてもらいました。会話は上記みたいなこと、モノローグについてはいかに自分の語るセリフに意味付けをして、それを受けて次のセリフを語る自分にきちんと影響を与えていかに語れるか、や、いかに脱力して喋れるかを重視してやりました。とっても楽しかったです。

えらそうにすみません楽しかったです

ここまで4500字ほど、えらそうに書いてしまった…。
初対面の人と25人×2時間向き合ったので、終わってから2日ほど疲れがとれなくて面食らいましたが、久々にいろんな人の活力と演技に触れて、ほんとに楽しかったです本当にありがとうございました。
既にオファーは終えており、今年行う3企画では全員お声がけしきれず心から申し訳なく残念な気持ちでございますが、今後とも皆さん何卒よろしくお願い致します。

gekidanUとしては今年は新メンバー森下の個人企画含め最低5本、そこに他団体のProduceや劇場貸しなどもあり慌ただしくさせていただきますが、頑張ってまいります。

今年もよろしくお願い致します。

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