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【小説】蝶はちいさきかぜをうむ その4


若い翼馬が数頭、跳ねたり鼻を押し付けあったり、どごろんと転がったりしながら遊んでいます。


雲羊の群れは、はむはむはむはむと
無心に草を食んでいます。


ぴーるるるーといいながらその上を一羽の空舞鴨が楽しそうに飛んでいきました。



ふいに一頭の雲羊がびくっと耳を立て、
空を見上げました。
雲羊の群れは一斉にびくっびくっと空を見上げたかと思うと号令でもかかったかのように、
どだだだだだだと走り始めました。





ぎゅぅわっ びゅっ ざざーーーーー


大きな風の塊が草原を打ちつけ、草たちの頭を撫でながら草原を滑り抜けていきました。




草原の丘の上、お機械さまの足元に
ひとりの少年が立っています。


少年は得体の知れない化け物を見るような目で
恐る恐るお機械さまに近づいていきました。


お機械さまの周りをそろりそろりと歩きます。




遠くから見たときは石でできているかと思ったけど、違うみたいだな…なんだ、これ。




見上げるとてっぺんが見えないほど大きな塔は何かの金属でできているようでした。
古びて変色しているのか鈍く煤けているようにも見えます。



ぎぎ…ぎーっ  ぎ、ぎぃーっ ぎぎぎ



軋むような音が聞こえます。
塔の中から聞こえるようです。


冷たく感じる背中一面が心臓になったかと思うくらい、大きく聞こえる鼓動の隙間から
軋むような音を必死に手繰り寄せながら少年は塔に沿って歩きました。




ドア、なのか?これ。




ちょうど少年がいた場所からぐるりと周った反対側の壁面には塔の壁と同じような金属でできたドアがありました。


ぎぎぎっ ぎぃーっ ぎっぎっ


先ほどの軋むような音はこのドアの中から聞こえています。


少年は唇をぎゅっと噛み、大きく鼻息を鳴らしてドアを開けました。



きぃーーーーっ 



金属製のドアが動く音が耳を締めつけるようです。




「……部屋?」


ドアを開けた場所は、部屋のようになっていました。



どっしりとした脚のついた木製の古い大きなテーブル。

同じく古い木製の椅子には背もたれのところに
赤地に金色の糸でつる草のような刺繍がしてある古ぼけた布が何重にも巻いてあります。

少しだけ右側に傾いている木製の棚にはブリキの茶筒のようなものがズラリと並んでおり、
色とりどりのラベルは日に焼けたのか淡くくすんでいました。

部屋の中央には金属製の大きな柱があり、
ドアと反対側の壁には草原と街が見渡せる大きな窓があります。
窓ガラスが薄汚れて曇っているので、外から見た時には窓だと気づかなかったようです。




ぎぎっ ぎ…





大きな柱の奥から聞こえていた音が急に止みました。
















「おやおや。これはお客さんだね。うん。お客さんだ。これはこれは珍しいね。おやおや。お客さんだ。うれしいね。」





柱の陰から、老人がひょっこりと顔を出しました。












作  なんてね
     ちょっぴりあんこぼーろ

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