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「Mr.ノーバディ」の感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。まあまあ混んでた、一席開けた状態ではあるけど、ロビーで待っている人の多さとかはコロナ前と変わらない位になってきた印象。

画面酔い映画ハードコアの監督

監督のイリヤ・ナイシュラーの前作「ハードコア」は鑑賞していて、一人称視点のアイデアだけじゃなくちゃんとそれに見合ったアクションシーンの組み立てがめちゃくちゃ上手くてとても良く出来た映画という印象だったけど、個人的にはゲームの一人称視点でも画面酔いして長時間出来ない人間なので大画面でずっとグラグラ揺れる一人称視点はめちゃくちゃハードルが高く映画を評価する以前に途中から気持ち悪くなってそれどころじゃなかった。

今回はそういうトリッキーな設定で撮影してないし、お話し的にも「なめてた相手が殺人マシン」系統の定番映画なのだけど、アクションシーンの見せ方や主人公の魅力の出し方など、とても映画として上手くて改めてちゃんと面白い映画撮れる人なんだぁ、と勝手に感動した。

病的で楽しい主人公像

主人公の歪んだキャラクターもこれまでにいないタイプに感じた。

ランボーの様に殺人を犯してしまう自分を後悔してないし、かといってイコライザーのロバート・マッコール程人間離れした不気味さもない。

人間的な普通の家庭を持つことに憧れてはいるけど、家に強盗が入ったことがきっかけで非日常的な暴力のスイッチが入ってしまい、本来持つ暴力性の抑えが利かなくなってしまう。

そこから明らかに暴力を振るいたくてしょうがなくなっていき、僕は見ながらはっきり(自分の中で)正当な理由があったら人をぶちのめせるのに!ときっかけを探している様に感じた。
その最後の一押しが娘の「ねこちゃんのブレスレットがない」というめちゃくちゃ小さな理由なのもブラックコメディ的に笑えた。

そして強盗に入った夫婦を見つけるのだけど、猫ちゃんのブレスレットは見つからず自分と同じように子供を大事に思っているからこそ貧しさ故に強盗を行っている事を知り、彼の中で「悪人」として認定できなくなってしまい悔しさで執拗に壁を殴り続けるシーンはハッキリ病的だと感じた。

その帰りのバスで最早自分の家に強盗が入ったのとは全く関係ない件でチンピラをボコボコにしてしまう。
ここら辺のアクションは十数年ぶりのブランクもありイコライザー的なスマートなアクションではなく、とても泥臭い殴り合いになっている。
ただ銃の弾を落とす所をアピールしている点とかもそうだけど、そういうハンデを楽しんでいる感じにも見える。
ここで絡まれた娘さんの存在はどうでも良い扱いになっているのもイコライザーとかとも違ってあくまで主人公の個人の暴力性を解放するかどうかに緊張感がある感じ。
イコライザーならもっと良いことした!みたいな恩着せがましい演出になっていると思う(失礼)。

そしてその夜から明らかに生き生きしていき、家族との関係も良くなっていくのがなんとも皮肉だ。

しかしバスで半殺しにしたというかその後死んだのがヤバいロシアンマフィアの弟だと発覚し、どんどんバイオレンスな事態に突入していくんだけど家族に危害が及んだ時点で自分の軽率な暴力行為を後悔するとかではなく「いやー、もう、ここまでやられたらとことんやり返すしかないね」と完全に開き直り、敵を根絶やしにする方向になるのが最近のこういう映画にない軽い味わいで観ていて気持ち良くなってきた。

敵の資金を全部燃やした後「もうこういう商売やめて隠居しろよ」と終戦の提案を出すのだけど、敵が断って反撃した瞬間に笑顔になってるし元より暴れる気満々でここも笑う。

アクション描写

アクション描写もとても見やすくかなりクオリティが高いと思う。この辺はさすが。主人公の格闘アクションは的確に敵の急所を狙ってはいくのだけど、イコライザーみたいな流れる様な感じではなくジョン・ウィックみたいにボロボロになりながらも敵を倒していくスタイル。それに対して武器を持った状態ではかなり強くて敵の金庫燃やす為に真正面から突入していく所は笑っちゃうくらい無敵。

ラストの罠だらけの会社内に誘い込む展開はランボーとかもそうだけど楽しい。もうこの展開がきた時点で敵は敗けが確定しているので安心して観れる。工場のプレス機を使った手榴弾攻撃が好き。

個人的にはスナイパーの弟が近距離の敵に対応する所のアクションが最高で決め技の三人同時撃ちは思わず声が出た。

しかしあの戦場で猫ちゃんよく無事だったなぁ。2回目以降観たら「猫ちゃーん!死なないで!」って応援しちゃうと思う。

ちょっと気になった所は家族との関係の修復が奥さんとしか上手くいってない感じで息子とは宙ぶらりんで終わった印象がしたかな。自分の父親の正体とか結局彼は分からないまま死体の山を見せられた感じだったし、あの後彼と主人公の関係性の変化を見せる描写が欲しかった気もする。

まあでも基本的に軽いトーンの映画だし、上映時間的にも今回のバランスが一番良いのかなという気もする。

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