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「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」の感想(ネタバレあり)

劇場版にする意義

僕のヒーローアカデミア劇場版第3作。
ヒロアカは単行本全巻持っているし、毎週少年ジャンプで最新話を追いかける位好き。

今週は日曜からネトフリで配信が始まった劇場版第二弾「ヒーローズ:ライジング」を観たらやっぱり面白いし、月曜発売のジャンプ本誌の最新エピソードも超素晴らしいし、水曜発売の単行本31巻もいよいよここまできたか、、、と最終章に向け改め胸が高鳴るし、金曜ロードショーでやってた劇場版第一弾「2人の英雄」の最早はるか昔に感じる師匠と弟子の共闘シーンが今観ると切なくも高揚した。

そんな感じで1週間東京オリンピックもそっちのけでヒロアカの事ばかり考えていたので、土曜に観る今回の映画への期待値もまんまと最高潮になっていた。

まず劇場版の前二作について振り返ると原作へのリスペクトが出来ている上に、それでいてしっかりオリジナルのエピソードを新たに作り出し、アニメーションとして演出も毎度ラストバトルシーンがめちゃくちゃカッコ良くて、少年漫画の映画化としてある意味理想系ではないかと思う。

劇場版1作目の「2人の英雄」は、原作でもあまり語られていないオールマイトの過去に焦点を当て、ラストは本編でも遂に出る事はなかったデクとの師弟による協力バトルを描き単品のエピソードとしても、とても見応えがあった。

そして僕が特に好きなのは2作目の「ヒーローズライジング」で、原作の核にもなっている第1話の対になる様なありえたかもしれない最終回をしっかり描ききっていて本当に驚いた。
デク君の影で実は踠き苦しんでいた爆豪君にスポットを当て、第一話で敵を前に何も出来なかった2人が痛みを分け合う事で勝利する様なエモーション爆発のラストバトルに泣いた。本当素晴らしい仮最終回。

原作者の堀越先生はヒーローのネーミングセンスからも分かるのだけど、とても映画にリスペクトがある人だと思うので、原作の大切な要素を生かしつつも劇場版にする上で相応しいテーマを分かっている感じがする。

ロディ

しかし正直前作ヒーローズライジングで最終回を既にやってしまったし、これ以上やる意味あるのか?という心配もあったけど、今回はこれまでの原作のキャラクターにスポットを当てるのではなく、彼らヒーローの活躍を観て僕らは何を受け取るのか?という、彼らを外側で客観的に見ている僕らの目線に近いロディという映画オリジナルキャラクターをほとんど主役に据える事で、前作の最終回から「更に向こうへ」しっかりと踏み込んでいると思った。

中盤デク君と打ち解けるきっかけになる、「かっこいい人になりたいんだ」というデク君の台詞で彼の表情が明らかに変わる所がよかった。

これは原作でデク君が叫ぶ自分がヒーローをやっている理由なのだけど、デク君はオールマイトに僕らと同じくフィクションのヒーローに対する目線で憧れていて、他の少年漫画に多い宿命があったり、血縁によって運命が縛られているとかそういう重い理由でヒーローを目指しているわけではない。
ただ「かっこいい人になりたい」という物語の外から登場人物に送る僕らの目線とも近い、ある意味メタ的な目線でオールマイトに憧れている。
彼の活躍を見てきた視聴者や読者は、フィクションのヒーローに勇気を貰う自分と同じ様に彼の物語に感情移入してきた。

だからこそデク君から勇気を貰った読者や視聴者と同じ目線でロディが「デクの様になりたい」と言う所は更にもう一段階深いメタ的な感動があって思わず泣いてしまった。
演じた吉沢亮自身がヒロアカのファンでこの映画に参加している構造自体がそうだし意図的だと思う。

そしてエンドロールで彼が真っ当に働き、家族との日常を過ごし、なりたいものになれるように頑張る姿を写して映画は終わっていく。ヒロアカから勇気を貰って、実人生を頑張る僕たちそのものの姿みたいでまた感動してしまった。

それに対する今回のヴィランである鏡の様な能力を使うフレクト・ターンというキャラクターの配置も良かった。

自分の事を好きになれない人として描かれていて、自分を誇れず人生を前向きに生きれないロディとも写し鏡的でもある気がする。
持っている個性と折り合いをつけられず諦め逃げ続けた結果、他者や世界が悪いと思う様になりよく分からない宗教の教えに染まってテロリスト化していった。これまでの悪役と違いテロの目的が最早自分の為ですらないのが新鮮だった。

鏡をめぐって、自分で自分の運命を呪う事を選んだフレクトと、常に自分の弱さと向き合い心の強さで乗り越えてきたデク君が対比されたバトルがアニメーションとしても最高潮を迎えるラストシーンはそりゃ泣くよ。
「クリードチャンプを継ぐ男」のシャドーボクシングの所でロッキーが「鏡の中で睨んでる男がいる。最強の敵だ。試合でも人生でも。」と言ってたけど、あれがスタローンから映画を観ているこちらに対してのメッセージだった様に今作もアニメーションで「常に自分を超えていくんだよ!」とめちゃくちゃ熱いものを送ってくれてるみたいだ。

デク君

原作ではエンデヴァー事務所にインターンで行ってた時期のエピソード。
前二作の見習いヒーローの様な雰囲気ではなく、1人のヒーローとして自ら考え自分の責任でロディを守ろうとしてしているのを見るだけで「こんなに立派になって、、、」という親戚のおじさんみたいな感慨が溢れてちょっと泣きそうになった。

黒鞭が使えるようになっている時期なので、堀越先生も大好きなスパイダーマン的な移動アクションシーンがとても見応えがあった。特に前半の逃走シークエンスの建物の間を抜け電車の上に逃げていく感じはまんまスパイダーマン。

暗号の送り方が地味すぎてギャグなのかなんなのかよく分からなかった。もうそのまま送れば良かったじゃん。うっかり冷蔵庫のイチゴ探そうとしてた轟君含め無駄に微笑ましいシーン。

爆豪君&轟君

爆豪君は前作でほとんど主役扱いだったので今回はあくまで戦闘要員という感じ。いつも怒ってる。

轟君に関しては前二作はサポート役が多かったけど、今回はかなりメイン。
頭脳明晰で能力も一番万能だし、デクが困った状況で真っ先に動くのも彼で、何気に爆豪君の転がし方が上手い。
改めて「なんて使い勝手が良いキャラなんだ!」とちょっと笑ってしまう。

2人が助けにくる中盤のヘリでの戦闘シーンはアニメーションなのにワンカットみたいにグルグルカメラアングルが変わっていく演出になっていて思わず見入ってしまった。

あとアジカンの主題歌も良かった。
エンドロールのちょっと前から食い気味に流れ始めて歌詞とラストのロディの心情とがリンクする様な余韻で映画が終わっていくのが素晴らしかった。

本編はいよいよ最終章に突入してしまったし、映画は今回が最後かも知れないのであともう一回位観に行って、味わい尽くしたい作品。あ、そういえばハリウッド版実写映画って今どうなってるのかな?

前作ヒーローズライジングの感想↓


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