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ゴーストランドの惨劇の感想(ネタバレあり)

T-JOY京都で鑑賞。連休中とはいえこの規模の映画にしてはレイトショーなのにめちゃくちゃ埋まってた。 

二回目も同じくT-JOY京都で朝の回、こちらも結構埋まってたけど「ライオンキング」「ワンピース スタンピード」「アラジン」などを観に来たお客さんでチケット売り場が大混雑(駐車場まで列が続いてた)、30分くらい前に来てたので急遽ネット予約に変更して事前予約専用の券売機でチケット確保(それでも15分位並んだけど)。

あそこまで長い列は初めて見たし、そのせいで映画始まって20分位してから入ってくるお客さんも多くて気の毒だった。

そういえば普段からT-JOY京都は売店とかも長蛇の列になりがちだし、気が付いたら「あれ?もう上映始まる!?」ってドタバタする事が多いので改めて今後は早めに来なければと胸に刻んだ。


こういうどんでん返しモノのホラー映画の中でもトップクラスの出来の映画だと思う。
トリッキーな構造自体が生身の登場人物の痛みから生まれているのが切なくとても好きだ。

映画ばっかり観てる僕の様な人間には、どうしようもなく受け入れられない現実を前にして物語の中に逃げ場を見つけるしかない主人公の切実さがどんな残酷描写よりも観ていて辛かった。ましてや14歳なのでしょうがないのだけど。
だからこそ、そこから大切な誰かの為に抜け出し、勝ち目のない闘いに挑む彼女の勇気にかなり泣いてしまった。 

二回観ると冒頭の「へー、ラヴクラフトってこんな顔なのか」から始まり伏線張られまくりなのがよく分かる。

まず主人公ベスが自作のホラー小説を母親に聞かせている所から、親子の関係性や双子の姉妹の考え方の違いが説明台詞なしで分かるようになっている。この現実主義的な姉と、知的な好奇心旺盛な妹が力を合わせてこそ勝機に繋がっていくのが、後から振り返ると熱い。

キャンディトラック登場の不穏さも見事。ヴェラが何気なくやった中指立てる仕草がこの後あいつから返されるシーンで「うわぁ、、、しっかり見えていたのか、、、」と分かるのがゾクッとする。

そしていよいよ家に着いて引っ越し準備中に、不意を突くように現れた大男のタックルから惨劇がスタート。そこまで直接的ではないのだけど、女性に対して大の男2人が力いっぱい暴力を振るっている感じが本当胸糞悪い。

そして血みどろの惨劇シーンが終わりベスが大人になったパートに飛ぶ。

二回目に観ると、ここの違和感の入れ方が絶妙で、流れるラジオのDJがしゃべる内容が異常にステレオタイプだったり執筆シーンのあまりにもサラーっとした感じとかが、少女の考える大人のいい女像にしか見えないのだけど、一回目だとここのステレオ感がよくあるホラー映画のヒロインのステレオ感に感じるので、観ていてそんなに気にならない様になっているのが上手い。

あと何といっても大人になったベスを演じたクリスタル・リードの美しさのバッチリ感。現実ベスちゃんの「自分で考えた自分を美化していった上限の美人」を見事に表現していた。あとそれに対して大人ヴェラの女優さんのチョイス!ちょっと意地悪過ぎるぞ!ベスちゃん!

大人になった彼女が再び家に戻ってきたシークエンスのいかにもホラー映画にありそうな「嫌な」心霊描写の数々が、そのまま現実世界から姉であるヴェラが送っているサインになっているのも本当に巧み。

この「嫌な」というのが彼女が受け入れられない現実に起っている惨劇のメタファーだし、それでいて彼女がホラー作家ならではの方法で無意識的に覚悟を決めて現実を受け入れようと必死に藻掻いている様にも見えてきて二回目は思わずチビチビ泣いてしまった。

そこから目覚めたパートで変態二人のおぞましい性癖が明らかになっていく。多くは語られないけど、大男の方は現実を生きられず人形遊び(人形壊し)という完結した狂った遊びに囚われているわけで、物語の中に閉じ籠ってしまう主人公の鏡でもあるのが彼女が大人になる為に乗り越えるべき通過儀礼の役割を担っていて面白い。

そして厄介なのはこの魔女おじさんの方。この大男を尽くす事を生きがいにしていている狂った母性の持ち主。とにかくしつこいし何気に武闘派。

この二人がどうしてこうなったのかの経緯とか想像してみるとちょっと切なくもなるのだけど、姉妹から見ると本当に不気味で訳が分からなくて、ただただ怖い存在としてだけ描いているのが湿っぽくなくスマートで良い。ホラーだし敵に対してあんまり踏み込まないバランス。

そして終盤ついに悪魔の家からの脱出に成功する。

ここでの外に走り出す時に流れる音楽や、必死に森の中を走っていく二人のカットが凄く美しいシーンになっていて観ているだけで素晴らしいし、またその美しさこそが「ここで終わりかな?」というミスリードにもなっているのがまたまた上手い。

逃げた先でラッキーな事に警察が通りかかり気がついてくれる!あぁ良かった!これで終わり、、からの、うそだろ!おい!!!という更に絶望的な状況になっていくのがめちゃくちゃハード。
ファニーゲーム以来の胸糞悪い連れ戻しシーン。

当然ベスは「もう終わった、、、」と物語の世界に閉じ籠ろうとしてしまうのだけど、今回は前回と意味合いが全然違う。自分を奮い立たせる為にこそ物語を使う。

彼女にとってヒーローであるラヴクラフトが現れ「この物語は芸術だ、一字一句変えては駄目だ」と話して去っていく。生きて物語を形にしなくては、と彼女の背中を押すのが胸が熱くなる。「インサイドヘッド」とかも、そうだけど自分の中の無意識的な存在が応援してくれるシークエンス大好き。

あと現実で嫌な事にぶつかった時とか、映画好きなら「こういう時あいつならこうやって乗り越えるだろうなぁ」とか好きな物語のキャラクターが背中を押してくれる様な瞬間ってあるじゃないですか(知らないけど俺はある)

こんな「悪魔のいけにえ」みたいな映画でそういう展開があるとは思わなかっただけに不意を突かれて結構泣いてしまった。

そして現実に戻って完全に戦闘モードになるのが熱い。母親が目の前で殺された時、怖くて動けなかった彼女が姉を守る為になりふり構わず噛みつくシーンのやったれ!感とかめちゃくちゃ興奮した。

そこに警官が現れ変態二人を射殺するのも、彼女たちの決死の脱出劇も決して無駄ではなかったと分かるとてもいい着地。

ラスト窓から幽霊なのか彼女の創造なのか分からない母親がタイプライターを指さすシーンも切なく胸を打つ。親離れをして大人になるという小さい物語として終わっていくのも上品で好きだ。

自分は物を書くのが好き、とつぶやくラストシーンの切れ味も現実から逃げる為でなく、現実を生きる為に物語を語ると表明してる様でとても感動的。完璧だと思う。 

その他これくらいの年齢の女の子が主役の映画にしては暴力描写が凄まじい。
暴力自体はビンタや首を絞めるなどの他の映画でもよく観る描写なのだけど、本当しつこくて生々しいし、大の男2人が14歳くらいの女の子に対しての執拗に攻撃してる様子が絵面としてとてもショッキング。
また彼女達のダメージが顔面に集中していて、ここまでやるか、、、という位パンパンに膨らんでいるのが見ていてキツい。特殊メイクとはいえ元々めちゃくちゃ可愛いかっただけにビックリした。

あと子役も含め、出ている俳優さんみんな印象に残る良い顔つきの人ばかりで監督さんの演出が上手いんだろうなというのが伝わってくる。

パスカル・ロジェ監督の作品初めてだったけど今後も追いかけなければ。

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