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2022年8月1日、かがやきクリニックはおかげさまで10周年を迎えることができました。
これまでお世話になってきた連携先の皆さま、困った時に相談させていただいたり、応援をいただいてきた大勢の先輩の皆さまや友人たち、当クリニックの活動にご理解とご協力をいただいてきた訪問先の皆さま、その他多くの方々の支えによって、この日を迎えられました。
心より感謝申し上げます。

10年前の開業当初を振り返り、今のクリニックの状況や、在宅医療を取り巻く当地の環境と比べると、本当に隔世の感がわいてきます。

たった2名で開業した当初、
いのちのかがやきに寄り添う在宅医療】

【ちょっとだけがんばればできる小児在宅医療】
の2つの合い言葉を、クリニックの目標として設定しました。

10周年の節目にあたり、2つの合い言葉について振り返り、さらには今後の10年に向けて考えていることを書いてみたいと思います。

開業直前のクリニック内の様子

【いのちのかがやきに寄り添う在宅医療】

2012年頃にはまだ、堺市内には在宅専門の医療機関は数少なく、外来中心の開業医の先生が合間の時間で在宅医療を行うというスタイルが中心でした。
このスタイルは、特に関西圏では古くから定着していたもので、私の父が和歌山で開業医をしていた頃にやっていた形でもありました。
「通院が困難になっても、かかりつけだった医師がそのまま訪問診療をしてくれる」
という安心感は大きく、これはこれでとても良いシステムで、今も広く行われていますし、続いていっていただきたいと思っています。

しかし、緩和医療を要する方が自宅で最期を迎えたい、在宅人工呼吸管理などの高度な医療を必要とする方が自宅で過ごしたい、などのニーズに数多く対応するには、在宅医療のために確保する時間と人員が必要となります。
在宅医療専門の医療機関は、こういったニーズに対応するための時間と人員の両面において、有利であることは間違いないのです。

もちろん、医師1名では長年継続できませんので、開業当初から複数医師体制への移行は考えていました。
訪問看護ステーションをはじめ連携先の皆さま、何人もの非常勤の先生方、そして看護師や事務のスタッフに支えてもらいながら、2015年に法人化、さらに2019年には常勤医の入職が実現し、念願の複数医師体制も確立させることができました。
それ以前には、マンパワー(というか私の時間と体力)の限界で、訪問診療のご依頼をお断りすることも多かったのですが、今はそういうことは減り、年齢や疾患によらず訪問診療をおこなうことで、地域のニーズにお応えできる幅が広がってきたと自負しております。

2014年2月、大雪で訪問診療を中止したことも

【ちょっとだけがんばればできる小児在宅医療】

もう一つの大きな目標がこちらです。
小児科医、それも新生児科医として病院のキャリアのほとんどを過ごした私は、NICUから自宅へ退院していった子どもの生活サポートをやっていきたいと考え、開業しました。
それと同時に、どうすれば小児在宅医療の受け皿を増やしていくことができるのかを考え、そのためにいろんな取り組みをしてきました。

根底にあるのは、特定の人が無理をしてがんばることで維持していくのではなく、多くの人が「ちょっとだけがんばる」ことで参画者を増やしていくことを目指していく、というスタンスです。
当クリニックでは、誰にもできないようなことを自宅でやるのではなく、他の方でもちょっとだけがんばればできることをやってきました。
そして、「ちょっとだけがんばってみよう」という方が現れたら、その方をサポートして連携していくことで、「これくらいならできそう」と小児在宅医療に関わってくださる方を増やしていきたいと考えてきました。
(この点については【地域を変えたいなら「突き抜けるな!」】にも詳しく書かせていただいています)

NICUで主治医、今は在宅医として関わるあゆちゃん

この地域での小児在宅医療も、10年でとんでもなく変化が起こりました。
今や当クリニックは、小児在宅医療を行う4機関の連携による機能強化型在支診となりました。
さらに、小児在宅医療を積極的に行うことを表明された2軒の医療機関が、機能強化型在支診のカンファレンスにオブザーバー参加をしていただいています。

周りを見わたすと、小児に対応してくださる訪問看護ステーションは飛躍的に増え、放課後等デイサービスなどの10年前にはなかった形のサービスも充実し、医療的ケア児に関わる相談支援専門員さんも増えてくるなど、小児在宅医療の見える景色は大きく変わってきたと感じるこの頃です。

大阪以外の地域でも、小児在宅医療に関わる方が増えてきています。
直接存じている方はもちろんですが、知らないところでも様々な職種の方がそれぞれに活動されていることを、最近ではいろんなSNSで拝見することができます。

もちろん、まだ課題の多い分野ではあるのですが、こういった今の小児在宅医療の世界を見ていると、「ちょっとだけがんばる」形を発信してきたことは間違ってなかったかな・・という風にも振り返っています。

友人の「手紙家くま」からいただいた書

【これからの10年は・・】

上の写真で紹介した書にはこうあります。
「自分ができる方法があるなら 自信持ってやってみる」
まさにこれですよね。

10年前と今とでは、世の中も大きく変わりました。
特にこの数年はコロナ禍によって、今まで当たり前だったことが当たり前でなくなり、新しい常識として生まれてきた考え方もたくさんあります。
在宅医療の世界でも、こういう変化はどんどん進んできましたし、これからも加速していくことでしょう。

地域のニーズに応えられるように、課題を見つけながら、これからも変化をし続けることをいとわずに、かつ、できることを着実にやっていこうと考えています。

しかし、一つの医療機関でできることは限られています。
小児に限らず、仕事全般に「ちょっとだけがんばる」スタンスはこれからも持ち続けて、多くの方々との連携のもとに、できることを増やしていければ、それが継続に繋がっていくのではないかと・・。

これからも、多くの方々に助けていただくことになると思います。
足らないこと、思い至らないことなどもたくさんあると思います。
どうか温かい目で連携いただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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