世界でもっとも刺激的なビジネススクールKAOSPILOTで体感した「共創」プロセス
2019年11月、デンマーク第2の都市オーフスにあるデザイン・ビジネススクール『KAOSPILOT(カオスパイロット)』の2DAYコースに参加してきました。
テーマはCo-Creation Design(共創デザイン)。より良いサービスを育てるためにユーザーや市民、または会社の同僚やパートナー組織をどう巻き込むか。共創のプロセスを学んでいこう、というのが本コースの趣旨でした。
KAOSPILOTはプロジェクトベースの学びを通じて、不確実な時代をナビゲートするリーダーたちを多数輩出しています。社会課題の解決とビジネスが交わる点を模索する起業家(卒業生)が多いのも特徴だそう。アメリカの雑誌『Ode Magazine』にて、「世界一刺激的なビジネススクール」と評されたことのある学校です。
日本人初のKAOSPILOT卒業生である大本綾さんが設立した会社、株式会社レアにて2年前に受講したファシリテーション講座が衝撃的におもしろかったこともあり、ずっと注目していました。
デンマークに来たら必ず訪問しようと決めていましたが、当初はこのようなコースへの参加は想定していませんでした。でも、せっかくデンマークにいるのでね…。興味のあるテーマだったので、英語レベルに不安を感じつつチャレンジしました。
時間が空いてしまいましたが、忘れないよう学びのエッセンスを記しておきます。有料コースのため多くは語れませんが、本noteでは「学びを増幅する共創の場づくり」に焦点をあてて書いていきます。
どんな人が参加した?
さまざまな業種やセクターで働く方々が集まっていました。国際的なインテリアショップのコミュニティマネージャー、経営コンサルタント、広告代理店のクリエイター、ミュージシャンなど。自社のサービスで市民やユーザー、クライアントをどのように巻き込むか日々試行錯誤しているプロフェッショナルが多かったです。少数ですが大学院生、若手の方もいました。
平日開催だったこともあり、デンマークを筆頭に周辺ヨーロッパ圏からの参加がほとんど。アジア・アメリカ圏からの参加者はいませんでした。(若干心細かった)
2DAYコースの流れ
DAY1ではテーマであるCo-Creation(以下、共創)のプロセスを体験するプロジェクトのテーマ決めから始め、DAY2ではグループ間でプロジェクトの設計図を組み立てます。
上記は、コース内で学んだ共創のサイクルです。2回に分けて、こちらのプロセスに沿ってコースは進んでいきます。
▼ DAY1
・Intention ;プロジェクトを進めるWHY
・Community:プロジェクトのステークホルダーを見極める
・On boarding:オンボーディング戦略
▼ DAY2
・Ideation ;アイデアを探索する
・Project :アイデアを見極め、プロジェクトをつくる
・Evaluation:はじめのアイデアを評価し、次へつなげる
※ スライドは講義ノートから自分で作り直したもの
ここからはコースの中で特に印象に残った出来ごとから、学びを抽出していきます。
一人の強い想いからはじまる
共創のプロセスを学ぶため、仮想のプロジェクトをつくりました。プロジェクトのテーマは事前に用意されるのではなく、コース参加者がその場で決めます。
こういうテーマ決めでよくあるパターンは、グループに別れて各々アイデアを出し、多数決や優先順位で決めていく形。短い時間で決めなければいけない場合は有効かもしれませんが、声が大きい人の意見が通りやすかったり、全員賛成で決めたつもりが蓋を開ければ納得してない人がいたりと、根本がぐらついた状態でプロジェクトが進んでしまうケースがあります。
本コースでは、参加者一人ひとりが取り組みたいプロジェクトを言葉にし、周りを巻き込んでいくプロセスを取りました。具体的には、個人でプレゼン→ テーマを選んでグループワークという流れ。何のプロジェクトをしているのか(または今後やってみたいのか)、どんなチャレンジ(課題)を抱えているのか、どう貢献できるのかを一人1分で伝えます。
参加者全員のプレゼンが終了したあとは、使った紙を床に散りばめます。発表を聞いて今回取り組んでみたいと思ったプロジェクトを選び、その紙がある場所でグループを形成。ファシリテーターが人数調整をおこなう場面もありましたが、基本的には自分の情熱が重なる、または自分が応援したいと思うプロジェクトに取り組むことができるようになっていました。
一人の情熱からはじまるプロジェクトに、仲間が集まっていく。実際のプロジェクトをはじめるときも、このような始まり方が本来理想なのではないでしょうか。結果、どのチームも最後まで熱を保ったまま進めることができていたと思います。
関係者みんなの視点を借りる
二日間のうち、参加者がもっとも盛り上がりを見せていたのは、アイデアを広げる段階「Ideation」のワークに取り組んだ時でした。
使用したメソッドは「ワールド・カフェ」。人々がオープンに話せる環境を用意し、アイデアの発散、洞察を得ることを目的としたワークショップの手法です。
各テーブルにグループ代表のホストが一人残り、それ以外のメンバーはすべてのテーブルを自由に巡回。メンバーはホストから聞いたプロジェクトの概要を踏まえ、思い浮かんだアイデアや経験をシェアし、置き土産にメモを残していきます。テーブルに集まるメンバーが変わるので、毎回フレッシュなアイデアが出て、ホストも居合わせたメンバーも常にアハ!体験をしている様子でした。
固定のメンバーでアイデアを練っていこうとすると、途中で行き詰まって同じ場所をぐるぐるしたり、最初に出たアイデアに引っ張られてしまうことはよくあります。ところが突然加わった誰かの一言で一気に道が拓けたりするもの。その状況を意図的に作り上げる手法として、ワールドカフェは有効だと思いました。
ファシリテーターによると、実際のプロジェクトでは、社内メンバーだけでなくユーザーや市民、パートナー企業を巻き込んでワールドカフェに取り組むのもいい策だといいます。ただし、彼らを最終意思決定者に入れるかは、実施する前に自分たちの中でコンセンサスを取っておきなさいとのこと。
Action → Reflection → Learningで学びを定着
コース全体を包括した話になります。KAOSPILOTのほとんどの講義は「Action → Reflection → Learning」の順で進めるそうです。実際にやってみて(手を動かして)、内省し、理論を知ると学びが定着するよ、という意です。
短いプレゼン、グループワークなどで手を動かしてあわあわした後に、「実はこういう狙いでね…こんな効果があってね…」と種明かし。理論やノウハウのほとんどは終盤に説明されました。
自分たちのやっていることが何に繋がるのか分からず悶々とする場面もありましたが、モヤモヤや失敗した恥ずかしさ、悔しさがあってこそ記憶に残り、理論がすんなり入ってきたように思います。
これまでの人生で受けてきた教育では、理論を教えてもらって → 実際にやってみて → 振り返りする(Learning → Action → Reflection)という順番が多かったので、新鮮でした。
おまけ1:参加者起案のインスピレーションボード
共創をテーマにしているだけあって、コース中参加者起点のおもしろい動きが生まれました。特にいいなと思ったのは、「インスピレーションボード」。2日目のランチにて、参加者の一人が「Co-Creationに関することで、私たちが持っている情報をシェアしましょう!」と提案してくれました。
教室にあったホワイトボードに、参考になりそうな本・Webサイト・TED talksのURLを記載。主催者からだけでなく、参加者自身が持っている情報をシェアできるのはとてもありがたかったです。誰もが貢献できる機会をつくるのは、いい場づくりに必要ですね。経験もアイデアもある人々が集まっていたので、非常に有益な情報をいただけました。(実際、この中のTED talksが刺さって何度も視聴)
これから自分でイベントや勉強会は、相互的なインプットの場を用意したいです。
おまけ2:個人的な反省
以下、とても個人的な反省です。主に英語でプレゼン・グループワークをする時に気をつけたいことを書きます。
・ はじめに発言する
英語に自信がなけれなないほど、最初に発言したい。後になればなるほどハードルがあがって辛くなる。バカだと思われるかな、くだらない発言かなと思っても、発言しなければ何も始まらない。他メンバーの潤滑油くらいにはなれるでしょう。BE FOOL!!
・人を巻き込むミッションはプラスの言い方で
「なぜそのプロジェクトをやるのか」を共有する場面で、「こういう課題を失くしたい!」と言ったのですが、他メンバーから「ミッションを掲げる時は、マイナスの解決ではなくプラスの言い回しにしたほうがいい」とフィードバックをもらいました。ミッションの裏にある背景として課題を共有するのはいいけど、大義を伝えるフックとしては「こういう明るい未来をつくりたい!」と、前向きな言葉を使った方が、聞いた人が応援したくなるとのこと。
英語で読みたい方は…
以上、KAOSPILOTの2DAYコースを受けて得た個人的な学びを書きました。上記以外にも多くのワーク、インプットがありましたので気になる方はぜひ直接お話できたら嬉しいです。
同コースを受けた参加者の方(from オランダ)が英語で感想・学びを書かれていたので、他参加者の視点で見てみたい方はどうぞご覧ください!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?