長い、長い、休日 第17話
タナカと二人、俺はリビングでくつろいでいた。タナカが何か言いたそうな目で見てくるので、仕方なく相手することにする。
タナカには悪いことをしてしまった。ああもしないと問題は解決できなかったのもあるが、そもそもが俺がやらかしてしまった事にある。だから、奴隷にしたけど、比較的今までと変わらないように生活して貰うつもりだった。
「何かな?タナカくん」
「…………いいんですか、本当に」
暗にカネチカのことを言っている。あのあと、絶望したままカネチカは戻っていった。しばらく落ち込むかもしれないが、本部の決定は俺としてはだいぶ甘い決断と思う。
大罪を犯した者の罪滅ぼしが、救助活動だった。もちろん救助そのものは危険を伴うものだが、俺の扱うものは桁が違う。通常なら救助困難な案件もこなさなければならない。それが罰だから。それで死んでも仕方がない。そんな扱いだった。
だから、こんな風に地球でガワが朽ちるまで放っておいてくれるのは、意外な決断だと思った。俺は今までとは変わってしまったし、能力は劣ってしまったが、ヒトよりは能力は高いし、奴隷もいる。使おうと思えばいくらでも使える状態だ。それなのに、放置するなんて甘いな、と感じていた。
時間をかけて殺すという意味では、残酷かもしれないが。
「いいもなにも、俺が決めることじゃない」
「冷たいんですね」
ずいぶんとハッキリ言ってくれる。———まあ、そうだろう。俺は欠けているから。
「今だけだ」
「そうでしょうか?」
俺は鼻で笑った「そうだよ」
俺の態度にタナカは目を細めた。軽蔑した目だ。
「なぜ悪ぶれるんです?似合ってませんよ」
「そういうのって似合うとかあるの?」
「無理をしているってことです。僕にも言うつもりはないんですね」
「———言えない」
タナカは、席を立つと出て行ってしまった。呆れたんだろう、無理もないが。
ひとりになって、俺はため息をついた。
決断したとは言え、結構疲れる。罪は償えると教えられたけど、一生背負うものだ。許すか許さないかは相手が決めることだし、相手が恨む行為を無関心に変えたとしても、許したわけじゃない。
これは、呪いだ。
ずっとずっと続く呪い。
断ち切れるものでもない。
そういう意味では、シリウスの行為は彼なりの優しさなのかもしれない。………ただ、あれだとカネチカは救われないが。
「なんとか、カネチカくんだけでも幸せになれるといいんだけど…」
何時なしに、ぼやくと
「また繰り返す気なの?」
その声と共に、シリウスが現れた。
「俺はずっと彼の幸せを考えてるよ。あの人と会う前から」
「だったら、教えてあげたらいいのに」
嫌な奴。さっきの考えは撤回しよう。
「真実は時に残酷なものだよ」
「彼はそれでも知りたいと思ってるわ」
俺は頭を振った。
「言えない」
シリウスは、馬鹿にしたように笑みを浮かべた。
「そうよね。今までの努力が水の泡だもの」
———そうじゃない。そんなことじゃない。
俺は、シリウスを見つめた。俺がそう言えないのを知っていてわざと煽っている。
シリウスは、心の底からカネチカが嫌いだ。
憎んでもいる。
それを俺にぶつけている。
俺と関わっている奴は、全員不幸だ。
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