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傷跡を覆い隠しながら

人に殺されるということを想像したことがありますか。
誰かからの恨みを買ってしまう、または不運にも無差別殺人に巻き込まれてしまう可能性もあります。自分の行動が他人から殺される原因になってしまうことがあったとしても、誰しも殺人事件の被害者になることは避けたいと思って過ごしているでしょう。

一方で、自殺したいと思いながら過ごしている人は山ほどいます。突然誰かに殺されたいとは思いませんが、常日頃いっそ死んでしまいたいと思っているような。

自殺というのは、「自」らを「殺」すと書き、文字通り自分の命を自分で絶つ行為です。しかし、自殺に至った心の崩壊の原因は、結局は外的要因によることが多いです。ということは、自殺も誰かに殺されたようなものなのかもしれません。

身近な人に酷いことを言われ続けた、職場で毎月何十時間も残業させられた、何もかもうまくいかなくて誰にも助けてもらえなかった、など、人や社会から見放された絶望によって自殺を選択してしまう。これは、犯人は特定できないかもしれませんが、そういう心無い人達の言葉・行為や社会の闇に殺されたということになるのではないでしょうか。

繊細な心の人ほど、見えない相手の刃に敏感になり、そして傷つけられてしまう。鍛えられることもあるかもしれませんが、私はどちらかというと、刃に晒され続け、心がズタズタになり、傷跡がパンパンに膨れ上がり何も感覚が無くなってしまう、でもそれが「心が鍛えられた」と勘違いしてしまっている人の方が多いのではないかと思います。
そしてそのまま自らの傷口を刃に晒し続けて、ある日突然失血死する。なんの前触れもない自殺はそんな感じなのかもしれません。


貴方はたくさん傷ついてきたと思います。傷つけられて、他人に癒され、時に自分で癒し、傷を塞いできたのではないでしょうか。
傷は適切な処置をしなければいつまでも治りません。しかし、心の傷は顔の傷のように治れば見えなくなるものでもないし、深い傷であれば顔であっても一生残るものです。それは本当に辛いことだと思います。

だが、いつまでも古傷を弄っていてはいけません。
顔の傷がコンプレックスになってしまうように、心の傷を隠そうとして生きている人は沢山います。時には傷跡を覆い隠して生きていかなければいけないこともありますが、隠すことを恥じることはありません。時には傷跡をさらけ出して生きていかなければならないこともありますが、堂々としていればいいと思います。忌々しい傷にあなたの人生が左右されていいはずがないのですから。

今の時代、皆が傷だらけです。それを辛い過去として語るか、勲章として語るか、物語の一部として語るかは、自分次第です。

それでも、この傷の痛みは誰にもわからないと、閉じこもり続けるしかない人もいるかもしれません。
ならば、なるべく死ぬことは保留にして、できるだけ長く閉じこもり続けてほしいと思います。

あなたを助けに来る人はいないかもしれませんが、あなたの生きる糧になる何かが降ってくるはずです。いつか傷が癒えて、いつかの朝日を迎え、花が咲くまでに必要な期間だと信じて。水やりは忘れずに…

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