短評:勧善懲悪としての警察官映画〜「殺人と拳銃」1958年、浅野辰雄 監督

シネマヴェーラ 「殺人と拳銃」1958年、浅野辰雄 監督。これはけっこう面白かった。警視庁協力の犯罪防止啓蒙映画らしい、やや堅めのつくりであり、左撃ちの名手である強盗殺人犯を捜査により追い詰めてゆくという物語である。
主人公の警官は射撃の名手であり、繁華街で男に声をかけられる。彼は憲兵時代に射撃大会で競ったライバルであり、左撃ちであった。そのことがきっかけとなり、やや都合の良い展開ながら、彼が強盗殺人犯であることが判明する。
犯人は射撃の名手であったが、戦犯として処罰されてしまってから、裏街道を歩くことになった。かたや主人公は警官となり、オリンピックの射撃に出場するという対照。復員兵や帰還兵の社会不適合や犯罪というテーマにもつながり、敗戦をはさんだゆえの運命の分岐があるところが興味深い。
同じ警視庁協力の「33号車応答なし」と比べると筋書きはかなり単純だが、競馬の実況中継に沸く群衆を背景に撮影された、当時の新橋駅前ロケなどが見ものである。
この時期の邦画で警察官を主人公に据えた作品「33号車応答なし」「風流交番日記」など記憶にのこる作品が多いので勝手に脳内特集したい。もう少し時代を下ると「事件記者」や刑事ドラマなど、設定もこなれてくるのだが、50年代はまだストレートな勧善懲悪として犯罪抑止などをテーマにした警官ものがあった、という図式だろうか。