かつての渋谷を幻視する 「写真展 渋谷川今昔ー昭和の初めと平成の終わりの風景ー」

「写真展 渋谷川今昔ー昭和の初めと平成の終わりの風景ー」(白根記念渋谷区郷土博物館・文学館)をみた。

渋谷区郷土博物館・文学館 渋谷駅から歩くとやや遠い。元気がないときは、バスのほうが良い。入場料は百円。

すぐそばに國學院大學がある。神道や民俗学の分野で有名だとか。漫画家の近藤ようこ氏はここの出身であった。学食に入って昼飯を頂いたが、安くてきわめてコスパが良い。おそらく学校側などの補助が入っているせいだと思われるが、一般人にも開放されている。

白根記念渋谷区郷土博物館・文学館の内容は次のとおり:

1F 特別展示、データベース、図書コーナー:今回の特別展とPCデータベース、関連図書の閲覧ができるデスクスペース。
2F 常設展:先史時代から現在に到るまでの渋谷の歴史を展示解説したもの。
B2F 渋谷の文学情報、文学散歩コーナー:渋谷に住んでいた著名文学者の紹介。

図書コーナーでは「渋谷区史」や、これまで開催された展示の図録などが閲覧できる。調べものをするときに便利だろう。

さて今回の「渋谷川今昔ー昭和の初めと平成の終わりの風景ー」は渋谷にある川をテーマにした写真展示であった。

渋谷には多数の川があるが、ほとんど暗渠化されてしまっており、現在の渋谷川の上流などは道路になってしまっている。

大塚英志+山崎峰水の漫画「アライアズキ 今宵も小豆を洗う。」を思い出すが、これは渋谷川上流の暗渠の下に妖怪たちが探偵事務所を作って生き延びているという、都市民俗学を標榜した大塚英志らしいアイデアの作品だった。

さて自分のよく歩く円山町一丁目、シネマヴェーラ渋谷(キノハウス)付近をみる。古い写真をみると、百軒店、昔はもっと普通の商店街だった。なんと、東急文化村・東急本店はもともと小学校だったという。その付近にも宇田川の松濤支流があったそうだ。

また、円山町から階段を降り、神泉駅まで歩く途中の小径が実は松濤支流の一つで、暗渠だった。たしかに、円山町と松濤一丁目の二つの山の間、谷になったところ、小径が走っている(参考記事:宇田川 松濤支流(仮))。

このあたり、地図・写真を含むまとまった文献として「「春の小川」はなぜ消えたか」(田原光泰 著、之潮)があるようなので、とりあえず発注し、入手してみる予定。

さて名画座に通って昭和時代の邦画を観ていると、そのなかで、かつてあった渋谷を疑似体験することも多い。

戦後の「恋文横町」などもそうだが、昭和三十年代の渋谷も多い。その時代に、映画が激増したせいもあるだろう。東急文化会館屋上の五島プラネタリウム横で撮影されたシーンなど、何度か観ているうちに行ったことがあるような気分になってくる。

またたとえば「青春前期 青い果実」、梶芽衣子になる前の太田雅子が主演している青春ものであるが、首都高建設前の渋谷駅、南口方面に鮮魚店があるのが映り込んでいたりする。

こういった個人商店の並びは、今ではほぼ考えられない風景なのだが、映像で体験をつんで、よく眼を凝らすとなんとなく想像の中に見えてくるような気もする。山の上に昭和時代の邦画を中心に上映している名画座があり、その映像を観て、かつてあった渋谷の姿を幻視するのである。

もっといけば、開発される前の円山町や松濤の姿を想像できそうだ。大正期には既に都市化が始まっていたそうなので、それ以前の時代になろう。これはいまの地方都市の風景に近いので、繁華街やいまの渋谷などの都市生活しか知らない人には、ちょっと難しいかもしれない。実際にきちんと考証するならば絵図などを調べなければならないだろう。


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