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いや、海じゃなかったよね? 小学生の頃カンニングした話。

小学生の頃、僕はテストが好きだった。

聞こえ的にコイツ勉強大好きいい子ちゃんだったのかと誤解されるかもしれないが、理由は別にある。

テストで100点を取る。その答案をおばあちゃんに見せると、お小遣い100円をもらうことができたのだ!勉強目的ではない、金目的でテストが好きだった。

その使命を受けた僕は、テストで決して100点以外許されなかったのだ。そうでないと小遣いチャンスを逃してしまう。小学生にとっての100円は大人になった今とは違い価値が数倍もあった筈だ。月の小遣い500円……500円⁈そう、月収の20%臨時収入チャンスなのだ!友達と駄菓子を買いに行っても、その100円があるかないかでヒエラルキーが発生してしまう。


ある日の理科のテスト。


分野は天体で、主に月に関する問題が多かった。

国語、算数、理科、社会。これらの中で理科が1番苦手だった。単純に暗記系の教科が僕の弱点だったのだ。とはいっても小学生の問題、そこまで難易度は高くないのである程度スラスラ解くことができた。

しかし、その好調も長くは続かない。ある問題が僕の前に立ちはだかった。


[問]
石や岩が月の表面にぶつかってできたと考えられているくぼみをなんという?


…なんかやった気するなあ。

先生がなんか説明してた気がするなぁ。

月のでこぼこの名称?なんやったっけなぁ………あかん、全然分からん。

完全に詰んだ。全く覚えがない。思い出そうにも、そもそも授業中聞き流してインプットしてなかった可能性がある。それなら出てくるわけがない。もう100円諦めるしかないのか。

どうしよう?考えた末に僕がとった行動は…


そう、"カンニング"だ‼︎


もう仕方がない。こうするしかない。僕が今100点を取るにはカンニングする他残されていないのだ。どうしても100円が欲しいから!ただ、おばあちゃんには申し訳ない、こんな不正で得た100点答案で100円を払わせることになる。いーや、もうそんなことは関係ない!今の僕は、頭の中「カンニングで100点を取る」こと以外無いのだ。

隣の席の子には悪いけど、ちょっと答案を見させてもらおう。

そして僕はほんの数秒間、回答を盗むことに成功した。

おお!ちゃんと解答欄が埋めてある!よしよし助かった!さて、答えはなんだったっけな?カンニングさせてもらいまーーす!





"うみ"





……うみ?

…海?

いや、あの、うん。

確かにあの月のでこぼこは"海"と説明してたよね。うん、それは僕もなんとなく覚えてんのよ……たださあ、海じゃなかったよな?その名称があったよね?確かカタカナやったと思うねん。

あと、海くらい漢字で書けるやろ。…ほんで心なしか、君の"うみ"の文字からなんか自信ない感じ出てるわ。そんな弱々しい"うみ"初めて見たわ。せめて自信持って埋めろよ。クソお!せっかくカンニングしたのに君何してんのよ。

どう考えても隣の席の子は悪くない。そもそも勉強を怠っていた自分に全て責任があるはずだろ。せっかくのカンニングはリスクを叩いた割にノー収穫のまま帰ってくる羽目になった。

もう残り時間が少ない。

もう片方の隣席カンニングをするにはあまりにもリスクが大きすぎる。

だけど考えても全然出てこない。もう分からへん。全く覚えがない、どうしよう?このままじゃまずい、何か解答欄を埋めないと。


散々考えた挙句、最後僕が解答欄に書いた答え。




海。

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