「サッカーて前半後半何分ですか?」サッカー観戦初心者がスタジアムに行った話
先日7月30日、人生で初めてJリーグの試合を見てきた。ヨドコウ桜スタジアムにて、セレッソ大阪VSアビスパ福岡戦。普段全くJリーグなんて見ないのに何故わざわざスタジアムに足を運んだのか、というのも僕には別の目的があった。
なんと、先代の歌のお姉さん、"あつこお姉さん"がイベントで来場するというではないか⁈ Twitterでたまたま情報を嗅ぎつけテンションが上がっていた。しかも、ヨドコウ桜スタジアムなので大阪に来てくれる‼︎こんな機会中々ないのでどうしても行きたい‼︎
何を隠そう、僕はNHKおかあさんといっしょの大ファンである。あつこお姉さんの卒業もどれほど惜しんだものか。もう番組で会えないのかと寂しさを感じていたが、なんと大阪に来てくれるのか‼︎しかも子供たちとピッチ内で一緒に歌って踊るのだとか⁉︎
早速イベントの詳細を調べてみたところ、ある事実が発覚する。
そう、このイベントはもちろんのこと親子向けのイベントなのだ。当たり前といえば当たり前、だってあつこお姉さんは子供向け教育番組のお姉さん。あくまでターゲットは子供なのである。それなのにこっちが勝手に追いかけているようなものであって、大人が一人で参加できるチャンスはあるわけない。
うわー子供達あつこお姉さんと近くで一緒に踊れるんやぁーめっちゃ楽しそうやなー羨ましい。せめてその様子を見てるだけでもいいのに、その時間帯にスタジアムの客席に入れるのかどうかも、サッカー観戦経験が無いので分からなかった。
仕方ない、諦めるか…と思っていたらそのイベント詳細欄にこのような書き込みもあった!
"イベント終了後、スタジアム外特撮ステージにてトークショー"
ええーーー‼︎嘘おお⁉︎……ってことはイベントに参加しなくてもいられるってことやん‼︎思わずテンションが上がった。もうこの時点で試合を見に行くことは確定した。だが、肝心なのがいっしょに行く仲間探しである。
僕のバイト先に、サッカー部の高校生の子がいる。サッカー部ならサッカー観戦に興味がないわけがない。そう思って声をかけてみることにした。
「○○くん、Jリーグどこファン⁇」
「セレッソです!」
ビンゴー‼︎こんなに求めてた答え来ることあるうー⁇よしよし‼︎
「今度この試合一緒に見に行こうや‼︎」
「はい!行きましょう‼︎」
よっしゃあああーー‼︎これであつこお姉さんに会えるううーー‼︎そして、友達はサッカー観戦楽しみにしてくれるからお互いWINWINや‼︎
「決まりやな‼︎じゃあ念のため先にチケット取っとくわ‼︎」
「ありがとうございます‼︎」
早速僕はケータイでチケットを予約して、コンビニで支払いを終えてチケットを発行した。いやーすごく楽しみ‼︎もちろんあつこお姉さんのトークショーがめっちゃ楽しみやけど、初めてのサッカー観戦も楽しそう‼︎絶対スタジアムでビール飲もう‼︎
こうして僕は試合当日を、溢れでるワクワクを抑え切られ無いほどに楽しみに待っていた。
しかし‼︎ そんな中、試合前日にまさかの事態が起きてしまった。
その日僕は一日中バイトに入っていた。夕方からは明日一緒に見に行く高校生の友達もシフトに入っている。すると、店長が休憩室から戻ってきてこう言った。「今日〇〇くん(高校生の友達の名前)休むって。」
…え?…うそ?
まさかと思ったが、このご時世である。
「熱39度出てるらしいわ。」
ええーーー⁇マジかー⁇
その数分後、僕のケータイの通知が鳴った。
「すみません。明日行けません。」
そらそうやろな。熱39度だもんなあ?
…でももうチケット取ってもうてるよ。どうしよう?もう明日やもんな。
僕は店長に事情を説明して、バイト中にもかかわらず急いでラインで思いつく限り、付き合いがある友達に明日のサッカー観戦の誘いを送った。
おそらく10人以上に送ったのだが、やはり急な連絡のため中々難しく皆NGの返答ばかりだった。
しかしそんな中、1人の救世主が現れた‼︎
それは、またまた同じバイト先の大学生の友達。彼は僕のライブに何度も来てくれていて、わざわざ予定を合わせてくれるほどのめちゃくちゃ良いやつなのだ‼︎
だが、少し変わってるところがある。この歳でおかあさんといっしょが大好きな僕が言うことでは無いのかもしれないが、彼もまた別の角度で変わったやつなのだ。自分自身で"普通が分からないです。"と言っていて、一般常識が欠けている部分がバイト中にも見られた。また、家が俗に言う"いいところの子"なので、服装なども夏なのに長袖のシャツを着るなど真面目な格好が多かった。ただ、相手が見つかったことがとても嬉しくて一緒についてきてもらうことにした。
彼はその日16時まで別のバイトなのだが、大体18時半頃に来れますとのことだった。
キックオフは19時、じゃあ間に合うか‼︎あつこお姉さんは1人で見てこよう!
「オッケー!一緒に行こう!」
「でも、僕サッカー観戦初めてで知識全く無いですよ?」
「大丈夫、俺も初めて。」
こうして我々は、サッカー観戦初、なおかつ僕はどちらかというとあつこお姉さんのトークショーが楽しみ、大学生友達の彼は普段日本代表戦も見ないほどサッカーに疎くどちらかというと野球の方が見ます、という異色な二人組でスタジアムに向かうこととなった。
そして迎えた試合当日。
スタジアムへ向かう電車の路線に乗るのも初めてだったため、目的駅に停まることのない快速電車に乗ってしまい、4.5駅過ぎた後普通電車で戻るというミスをしてしまった。だが、普段もしものことがあったときのために早く家を出るという僕の日頃の行いが功を奏して、なんとかトークショーが始まる17時前にスタジアムに着くことができた。
周囲はほとんどセレッソ大阪のユニフォームを着用している。普通の黒シャツで来た僕は少しアウェイを感じていた。
もちろん、会場内の地図が何も分からないためすぐさま入り口のインフォメーションで場所を聞いた。「特設ステージどこですか⁇」「えーっとこちらですね。(地図を指差す)」「ありがとうございます‼︎」急げ急げ‼︎始まる前に着くぞ‼︎
そしてようやく僕は特設ステージにたどり着くことができた。思ってたよりもステージと距離が近い‼︎本当にこの距離であのあつこお姉さんに会えるの⁉︎にわかには信じられなかった。これは凄いことだぞ。
時刻は17時、いよいよトークショーが始まった‼︎
もうそれは僕にとっては夢のような時間だった‼︎あの大好きなうたのおねえさんがもうすぐそこにいらっしゃるのだから。めちゃくちゃ楽しい‼︎
しかし、そんな時間にも終わりはやってくる。MCさんの締めの一言でトークショーが終わった。
あーあ、楽しみにしてた時間が終わっちゃったなー。
本来、メインイベントはここからのはずなのだが、僕にとってあつこお姉さんのトークショーは楽しみのかなりの比率を占めていたためなんとも言えない虚無感に襲われた。あとまだ試合まで1時間近くある。めっちゃ暇や。とりあえず友達早く来てくれ!
既にスタジアムの客席は開放されていたが、初めてなので1人で入ることを躊躇していた。気長に待つ中、友達からLINEが来た。
「すみません、電車が遅れて18時55分に着きます。」
18時55分⁉︎ もうほぼキックオフやないか。こうなったらもう1人で入ろうか……しかし、彼の分のチケットを持ってるのも僕だし、再入場のこともよくわからない。やはり先に入ることは出来ない。
「オッケー!駅着いたらダッシュして‼︎」
そう言って僕は彼が来るのをただただ待っていた。
…そういやアイツどんな格好で来るねやろ?まさかいつも通りあの長袖シャツで来るのかな⁇ 俺でさえ、この格好で少しアウェイ感あんのに。
そして待つこと数分、ようやく彼が現れた‼︎
「おーい!こっちこっちー!」
「あ、お疲れ様です!」
そして僕は会うと真っ先に彼の服装を確認した。すると、僕は一安心した。良かった、半袖シャツにズボンはジャージで結構ラフな格好してる。このような服装を見るのは初めてだったので僕は彼に
「そんな服装もするねんな‼︎」
と声をかけた。
しかし安心したのも束の間、僕は彼の着ているシャツのデザインに目がいってしまった。
正面に思いっきりバスケットボールのイラストが描かれている…
「なんでやねん‼︎」
思わず声が漏れた。
なんなんこいつマジで?今からサッカー見る言うてんねん!なんでバスケットボールのシャツ着てるやつと横で一緒に見なあかんねん‼︎ただでさえアウェイ感じてんのにより一層アウェイ際立たすなよ‼︎
しかし、彼の失態はこれだけでは終わらない‼︎
「今日暑いと思ったので、僕が昔使ってた阪神タイガースのタオルも持ってきました。」
だからなんでなん?なんでここで阪神タイガースのタオル持ってくるねん。全部間違ってるやん。マジで阪神タイガース以外ならどんなタオルでも良かった。阪神のタオル首にかけてJリーグ見るやつおらんて!普通に考えたら分かるやろ……あ、コイツ普通が分からんねやった。
彼のまさかの行動の数々に驚かされながらも、時計を見たら既にキックオフの時刻になっていたので急いでスタジアムへ入った。
入り口にてチケットを渡すと、スタッフの方からパンフレットが入ったビニール袋を一つずつもらった。そのビニール袋の中を確認すると、なんとセレッソ大阪のデザインが施されたマフラータオルが入っていた。僕はすぐさま彼の分のタオルを取り出させて、「お前もうこれずっと巻いとけ‼︎」と言って、少しでもTシャツのバスケットボールのイラストを隠させた。
観客席に入ると、もちろん既に試合は始まっていた。開始5分ほどだっただろうか?セレッソ大阪が先制点を決めた‼︎
「うわーゴールの瞬間に間に合って良かった‼︎」
初めて生で見るサッカーにやはり興奮してきた。Jリーグは普段見ないのでチームのことは分からないが、観客席がセレッソ側だったのでとりあえず気持ちはセレッソ大阪を応援していた。
気づけば僕は試合に夢中になっていた。
しかしそんな中、僕の横で彼は無知丸出し発言を連発していた。
「すみません、サッカーて前半後半何分ですか?」
嘘やろ⁉︎そのレベルなんコイツ⁉︎
「45.45の90分やろ‼︎」
「あ、そうなんですねー」
無知こわっ!
まだまだ質問は続く。
「PKてどういった時に行われるんですか?」
「延長でも決着つかんかった時とかやろ。」
「サッカーの電光掲示板のタイムって、あれなんでカウントアップなんですか?普通カウントダウンしていきません?」
「あれちゃう?アディショナルタイムあるからちゃう?」
「アディショナルタイムってどうやって何分て決まるんですか?」
「俺もサッカー経験者の弟から聞いたけど、ファールとかでプレーが止まった時間とか計算して出すらしいで。」
「セレッソの有力選手って誰なんですか?」
「それは俺も知らん‼︎」
サッカーに対してのハテナがあまりにも多すぎる‼︎ そんな彼をよそに僕は売店で買ったビールを片手に試合を見ていた。観戦中も2人で軽い会話を交わしていた。
僕は目線を試合の方に向けながら話してるのに対して、彼はガッツリこちらを見て話してくる。
お前試合見んでええの?
だから当然貴重なシーンを見逃しそうになる。
「ナンジョウさん、それでね…」
「お前見ろ見ろ見ろ!チャンスチャンス‼︎」
そこでセレッソ2点目のゴールが入った!もう僕は試合に夢中なので思わず声を上げて喜んでいた‼︎
「いやー今のゴール凄かったなー‼︎」
「うわー阪神点取られてるー」
もう帰ってくれ。俺が呼んだけれども帰ってくれ。誰がサッカー観戦中にスマホで野球の試合状況見るねん。せめてハーフタイムに見ろ。
そして90分間の試合はあっという間に時間が過ぎて結果セレッソ大阪が勝利した。試合終了後、我々はスタジアムを出た。
「いやー生で見るサッカー初めてやけどめちゃくちゃ興奮したなー」
「ナンジョウさんはどの駅から帰られます?」
コイツサッカーの感想ゼロか。
ほんまにさっきまでスタジアムおったんか。
普通はもっと興奮冷めやらぬ様子でおるやろ。…あ、コイツ普通じゃないんやった。
初めてのサッカー観戦、色々あったけど結果楽しかった。…アイツはどうか知らんけど。
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