見出し画像

ソマティック・マーカー仮説〜プロダクトマネジメントで使える哲学〜

今回、お話ししようと考えている内容は、プロダクトマネージャーをはじめ、正解のない問いに対する答えを常に問い続けられているビジネスマンにとって「自ら(それを取り巻く組織)が正しい判断をするためにどうすれば良いのか」についてになります。

その中で今回は、アントニオ・ダマシオが提唱したソマティック・マーカー仮説についてお話します。

ソマティック・マーカー仮説とは?

ソマティック・マーカー仮説は、アメリカの神経科学学者であるアントニオ・ダマシオが、彼の数多くの臨床例を元に提唱した仮説になります。

外部からの情報に接触することで得られる
身体的感情(心臓がドキドキするなどの感情)<ソマティック>が、
脳の前頭葉腹内側部を刺激し、
物事の「良い」もしくは「悪い」の判断<マーカー>を助け、
意思決定を効率化する

長い文章ですが、こちらがダマシオが提唱した仮説になります。

この内容をもう少しわかりやすい表現に置き換えて要約して見ると、

物事の意思決定には「論理的」なものだけでなく、
過去の経験から得た「身体感覚や感情」が不可欠

ということになるかと思います。

ではなぜ、ダマシオは「身体的感情」が物事の意思決定を効率化すると述べているのか。彼が実施したいくつかの臨床例を元に紐解いてみます。

意思決定をするときの「理性」と「感情」の仕組み

あらゆる場面において「理性」と「感情」の双方の優位性については議論されてきております。そして、学者によって「理性は感情に勝てない」であったり「ロジカルシンキングが大事」であったりと、総じて対立的な言葉として捉えられることがほとんどです。

2014年に米国で出版された『30-Second Brain』の中で、古代ギリシャの哲学者プラトンや心理学者のフロイトは、理性と感情を対立的なものととして捉えておりますが、アントニオ・ダマシオの臨床を元に論理的な意思決定をするプロセスの中で感情は不可欠であると謳われております。

古代ギリシャの哲学者プラトンは、人間の感情と理性の関係を「馬と御者」に喩えた。近代の心理学者フロイトは、「本能的な欲求(イド)が自我(エゴ)によって抑制される」という概念を打ち立てた。つまり、ずっと以前から、理性と感情は対立するものと考えられてきた。

こうした見方を神経科学的に解釈すると、的確な判断とは、合理的な前頭葉が、生物進化の早い段階に出現した、感情をつかさどる脳の部位(脳の奥深くにある大脳辺縁系など)における「動物的本能」をコントロールするものだと思われるかもしれない。

しかし、実際はかなり違う。感情的な情報インプットが生み出す「動機づけ」や「目的」がなければ、効果的な意思決定は不可能なのだ。

脳神経科学者アントニオ・ダマシオの患者「エリオット」を例に取ろう。有能なビジネスマンだったエリオットは、脳腫瘍を切除するための外科手術を受け、脳の「眼窩前頭皮質」を切除された。これは、前頭葉と感情を結びつける部位だった。その結果エリオットは、映画『スタートレック』に登場するミスター・スポックのような、感情が欠落した人間になってしまった。しかし、感情を持たないからといって、一分の隙もない論理的な人間になったわけではなく、むしろ決断を下せなくなってしまったのだ。

こうした症例からダマシオ氏は、「直感的な感情」が人間の決断を支援するプロセスを説明する「ソマティック・マーカー仮説」を唱えるようになった。被験者にカードゲームをさせるギャンブル課題という実験では、プレーヤーが、自分にとって不利なカードを手に取る前に、手に汗をかくことがわかっている。つまり、誤った決断を下したと頭が意識する前に身体が反応しているのだ。

「直感力」をどう磨くか

現代のビジネスの場において、特に会議などで物事の判断をする際には、論理的に繋がっているか、確からしいか、という部分に終始しがちです。

しかしながら、正解のない問いを投げ続けられている中で論理的なプロセスのみで全てを説明できるか、という問いに対しては必ずしもそうではないのではないでしょうか。

そんな場面において、過去の経験から得た「身体感覚や感情」=「直感力」が重要になると思います。

では、「直感力」はどうやって磨くことができるのか。

それは、”「アート」を通じて「デザイン思考」を学ぶこと”だと思います。

アートはその名の通り、絵画や音楽、今時でいうとCGなどのグラフィックデザインなどです。デザイン思考は、そのアウトプットに到るまでの考え方です。

プロダクトマネジメントとしての「理性」と「感情」

プロダクトマネジメントを行う中で、正解のない課題にぶつかる事は日常茶飯事だと思います。問題解決を行うための一つのピースとして、持っておいて損がないものは、上記でも話した通りアートを通じて磨く「直感力」だと思います。

しかしながら、プロダクトマネージャーは、アイデアを出すだけで完了する役割ではないです。それが市場にとってどの程度インパクトがあるものか、どの程度のコストで販売すれば売れるのか、などマーケティングやビジネスの知識も必要になります

まとめになりますが、論理的思考力や直感力をはじめ、マーケティングやビジネス面を踏まえた”問題把握力”がプロダクトマネージャーに求められる能力だと感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?