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雨という魔物

子どもは雨が好きだ。
雨が悪い天気だとは言いたくないけど、大人はやはり雨なだけで一段気持ちが沈みがちである。
子どもは雨の日に喜ぶことが多い。

まず、長靴が好き。
長靴を履くだけで特別感が生まれるのだろうか。
天気予報を見て「今日は雨降りそうだねぇ」と一言云おうもんなら、「じゃあ長靴だね!」と夏の暑い日だろうと、快晴だろうと、いそいそと長靴を履く。
斯くいう私も、長靴を履いて水たまりに入るのが子どもの頃からずっと好きなので、気持ちは分からなくもない。
さすがに大人なので「ヒャッホー!!」と水たまりに入る訳にはいかないが、長靴を履いて、水たまりがあるところは静かにジャブジャブしながら歩いている。
しかし、暑い日に長靴を履こう!というテンションにまではならない。

それから傘。
こちらとしては持ち運びやすいレインコートを着せて済ませたい場面でも、傘を所望する。
気持ちは分かる。
しかし、“子ども+長靴+傘=歩く時間の長さ2.5倍“だ。
通常業務だけでいっぱいいっぱいの朝に、2.5倍の時間を生み出さないといけないとなると、事前の準備が必要になる。

***

今日のドイツは、珍しく一日中雨が降っていた。
当たり前にバギーに乗せて出発するつもりが、「歩きたい!!」と言われた。
バギーの時間で計算していたあれこれが、全て水の泡だ。
色々理由を付けてやめさせようとしてみたが無駄だったので、「早く歩いてね!」とだけ言って、仕方なく出発した。
こちらの焦る気持ちとは裏腹に、何だか嬉しそうな顔で自分の傘に見惚れていたり、笑っていたりもする。
もちろん可愛いのは可愛いのだが、そんな感情に浸っている余裕なんてない。
人々にちょっと引かれているだろうことは百も承知で、私はひたすら叫びながら追い立てるように子どもを送り届けた。

帰り道も、まだ雨が降っていた。
相変わらずの傘の希望を叶えて、ボチボチと帰り道を歩く。
そして、一日降っていた雨のおかげで大きな水たまりがあちこちにあり、見つけてはバシャバシャと長靴で入っていく。
とっても楽しそうだ。
帰り道は時間の制限がないからか、しばらく入っていようと静かに見守ることができる。

雨はやはり悪い天気ではない。
魔物のようだけど、魔物のおかげで見られる笑顔もある。

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雨の日をたのしく

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