朝ごはんの野望
朝ごはんを充実させたい。
これが私の長年の野望である。
小さい頃から、私の朝ごはんは質素だった。
普段は食パン半分をトーストしてマーガリンを塗ったもの、だけ。
家には常に4枚切りの食パンしかなかったため、分厚いフカフカの食パンが出てきていた。
母は無類のパン好きだった。
トーストにコーヒーが母のご馳走で、トーストを主食におかずを食べる、のは邪道だという考えだった。
たまに私には菓子パンを買ってくれたりしたが、母の朝ごはんはずっとトーストだった。
それに加えて、私はとにかく食べるのが遅かった。
食パン半分を一時間くらいかけて食べるので、毎朝怒られていた。
これでは確かに、朝ごはんの量を増やしてもらえないのも分かる。
食パン半分という私の朝ごはんは、中学生あたりまで続いた。
普段は、と書いたのは、夏休みの部活の朝練の時は朝ごはんはトマト1個だったから。
ちなみに、その時は母は起きたりしなかった。
自分で用意して食べるからトースト食べるよりはトマトの方が簡単だったのだろうけど、朝練前ならもっと食べた方がいいぞ。
その後、ようやく食パン1枚になったものの、実家を出るまで朝ごはんは食パンだけだった。
大きくなるにつれて、ドラマなどで朝ごはんのシーンを目にする機会が出てくる。
トースト、はまぁ同じだからいいとして、おかずがついている。
目玉焼きとサラダ、ウインナーとかスープとか。
飲み物だって、お母さん役の人は紅茶でいい?とか聞いたりする。
洋食でも和食でも、朝から立派な定食を食べている人がとにかく羨ましかった。
結婚した夫も、朝ごはんずっと質素人間だった。
私は張り切って朝ごはんを用意しようと思っていたが、朝からそんなに食べられないと言われた。
しかし、少しだけ理想に近づいたのは、パンの日に加えごはんの日も作ったこと。
ごはんと前日のお味噌汁のみだったが、嬉しかった。
休日にはフレンチトーストを作ったり、少しだけバリエーションが増やすことができた。
と思ったのも束の間、子どもが生まれると状況は一変した。
上の子は、昔の私と同じように朝ごはんに一時間かかる。
下の子は超保守的で、メニューを変えると嫌がることが多々ある。
休日の朝にフレンチトーストを作っても、子どもが食べずに終わることが多かった。
朝ごはんの量もメニューも探り探りがずっと続き、とりあえず今はホットサンドに落ち着いている。
しかし、私はまだ立派な朝ごはんにするという野望を捨ててはいない。
いつになったら食べてくれるのか、今は闇の中である。
でももしできたら、きっとおいしい朝ごはんを作ってあげよう。
いつか、死ぬまでに一度くらい、理想の朝ごはんを提供したいと願ってやまない。
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